日産「ラシーン」デビュー。パイクカーのようなレトロ調のクロスオーバーSUV【今日は何の日?12月12日】

■RVブームの中、日産が放った個性的なSUV

1994(平成6)年12月12日、日産自動車のSUV「ラシーン」がデビューしました。当時(1990年代初頭)は、本格オフロード4WDの三菱「パジェロ」やトヨタ「ランクル」に代表されるRVブームが起こり、そのような中で日産が投入したのがラシーンでした。

1994年にデビューしたラシーン。ボクシーフォルムとグリルガードが特徴
1994年にデビューしたラシーン。ボクシーフォルムとグリルガードが特徴

●レトロな雰囲気を持つライトクロカンのラシーン

ラシーンは、本格オフロード車ではなく、“都市から自然の中まで生活空間を広げる4WDプライベートビークル”のキャッチフレーズで、今でいうクロスオーバーSUVに近いモデルでした。

コンパクトな直線基調のボクシーなスタイリングに、グリルガード、背面にはスペアタイヤを装備していますが、他のオフローダーよりはソフトな雰囲気が特徴でした。レトロ調で、当時日産が進めていたパイクカーのような雰囲気が注目されました。

パワートレインは、1.5L直4 DOHCエンジン(後に1.8Lが追加設定)と4速ATおよび5速MTの組み合わせ、駆動方式はビスカスカップリング付フルタイム4WDです。

個性的なデザインで注目されたラシーンは大ヒットではありませんが、堅調な販売を続けました。一方で、当時はまだクロスオーバーSUVという概念がなく、RVブームの中では本格派でないと敬遠される向きもありました。

●日産が仕掛けたパイクカーとは

パイクカーとは、レトロ調や先鋭的なスタイリング、あるいは過去の名車を彷彿させるようなデザイン重視のクルマを指します。個性的であるがゆえに、生産台数や販売期間が限定されることが多いスペシャルなクルマでした。

これに対しラシーンは、個性的でレトロな雰囲気を持ったモデルですが、台数を狙った一般的な市販車なのでパイクカーには属しません。

1987年にデビューしたBe-1。ミニクーパーを彷彿させるパイクカー。
1987年にデビューしたBe-1。ミニクーパーを彷彿させるパイクカー

パイクカーが登場したのは、日本がバブル景気に沸いた1980年代~1990年代、特に日産が積極的に取り組みました。展開されたのは「マーチ」をベースにミニクーパーのような「Be-1(1987年)」、レトロなオフロードスタイルの「パオ(1989年)」、懐かしいスポーツカースタイルの「フィガロ(1991年)」です。いずれの3台も限定販売ですが、予約が殺到するほどの人気でした。

●日産リバイバルプランで消滅するも、生産終了後に人気モデルに

ラシーンの後ろ外観。スペアタイヤを装備したオフロードテイスト
ラシーンの後ろ外観。スペアタイヤを装備したオフロードテイスト

ラシーンは、地道にグレード強化を図り、日産を代表的するSUVとして位置づけられましたが、1990年代後半になるとバブル崩壊の影響もあり、日産の経営状況が悪化。1999年には、ルノーと資本提携を結んでルノー傘下となり、“日産リバイバルプラン”と称する再建案が発表されました。

その中で車種の大幅な見直しが計画され、ラシーンの生産中止も決定し、2000年に生産が終了しました。

ところが皮肉なことに、販売中止となってからむしろ、ラシーンの人気が中古車市場で高まっています。ソフトなクロスオーバーSUVが人気のなか、サイズも手頃でキュートなボクシーなデザインが再評価されているのです。


SUVながら、温かみや癒しを与えてくれるレトロな雰囲気を持つラシーン。最近も人気アニメやTVドラマ、映画で見かけることがありますね。爆発的なヒットモデルではありませんが、時代を超えて愛され続ける、ある意味で名車ではないでしょうか。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる