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■国産・輸入車分け隔てなく集まるエンスー垂涎のイベント
古き佳きクルマをこよなく愛するカーヒストリアン・越湖信一さんから、群馬県桐生市で行われたエンスージアスト垂涎のイベントルポが到着しました。そこに集まっていたのは、目くるめく貴重なクラシックカーの数々と、2万人ものギャラリー。これほどまでの人気を集める理由とは…?
●桐生市総出で盛り上げるクラシックカーの祭典
コロナ禍の状況が気になる昨今ではありますが、この秋になって自動車関連イベント開催のニュースがどんどんと入ってきました。ヨーロッパや北米では昨年あたりからかつての状況へ戻っていましたから、日本は一年くらいのタイムラグがある感じです。私自身もオーナーズクラブの代表をやっていますので、このコロナ禍における判断の難しさはよく解っています。
しかし、日本は一旦動き出すと徹底的ですね。現在に至るまで毎週末、毎祭日イベントの嵐です。
そんな中、私は以前に参加したことのある素敵なイベントへ行ってみました。それは3年ぶりに開催された「クラシックカーフェスティバルin 桐生」です。
このイベントの特徴は、群馬大学理工学部キャンパスが会場となり、桐生市総出で盛り上げているところにあります。今回で15回目になるこのイベントですが、とても親しみやすい雰囲気に溢れていました。クルママニアだけでなく、周囲の人たちみんなで楽しもうという暖かい気持ちを感じるのです。
●スペシャルティーカーやスーパーカーが一堂に
イベントは展示部門(160台)とラリー部門(70台)で構成されています。展示部門では、構内をところ狭しとクラシックカーが並びます。国別にカテゴライズされていますが、国産車と輸入車がちょうど半々。きわめてバランスのよいアロケーション(配分)です。
展示車両は相当に粒よりです。ランサーセレステやニューシルビアなんて、実車を目にすること、あります? それも素晴らしいコンディションで!
輸入車に目を向けると、よく手が入ったコンパクトな英車にそそられますし、ベルトーネデザインのシムカ1200Sクーペ、そしてドラージュまであるではないですか。
ランボルギーニ・ミウラやトヨタ2000GTといった、いわゆる“スーパーカー”とならんで、よく知った友人・綿引雄司さんによる力作のレプリカ、タイレルP34も登場です。図面なしに写真から3次元を復元してしまうという特殊な才能を持った彼の最新作には、人だかりの絶えることがありませんでした。
●クラシックカーに優しい環境
私が今回の展示で感じたのは、“素の状態”のリンカーンやサンダーバードなど、ビッグサイズのアメ車が多かったこと。マニアまではいかないクルマ好きの人たちが、クラシックカーを維持できる環境がここにはあるようです。
都心部と比較して余裕あるご自宅の敷地内に、うまく保管されているということが話を聞いて解りました。アメ車に限らず、そういった地元のクルマがたくさん参加するイベントはとても素晴らしい!
さて、こういった展示の中から、70台がラリー部門として参戦します。といっても、極めてのどかなラリーで、実行委員会が定めたルートをコマ地図頼りに走るだけ!
普通はコマ地図に指定タイムがありますが、このコマ地図には何も書いてありません。「急いでも、ゆっくり走っても意味ありませんよ! 皆の平均タイムに一番近いクルマが優勝ですから」とオフィシャル。
だから、とにかく、美しい紅葉を楽しみながら走ればいいのです。“重要伝統的建造物群保存地区”に指定される本町一丁目・二丁目や、山々に囲まれる渓谷沿いなど、桐生地域の素敵な景色を参加者は満喫しました。
今回は、私の属するマセラティクラブオブジャパンのメンバーの、マセラティ・メキシコとマセラティ・インディの2台で参加。こういう肩肘張らない走りはとても楽しかった。
●絞りに絞って230台
ところで、桐生の街並みはとても趣があります。当イベントは、折りしも開催されている「第26回桐生ファッションウィーク」の一環でもあるのです。
そう、ここ桐生は織物の街。その美しい街並みは、前述のように重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。元気な車掌さんが乗るボンネットバスの運行を眺めたり(希望者は乗車できる)、大学の学食でカレーを食べるなど、リラックスした一日でした。
主催者の発表によると今回は2万人のギャラリーを集めたそうです。そもそもこの230台という総参加台数も、相当数断った結果だというから、このクラシックカーフェスティバルin桐生はそれほど大人気なのです。
その開催規模を拡大するかどうかというターニングポイントに、今回のイベントがあることは間違いありません。次回も参加してみたいな、と思わせるとても素晴らしいイベントでした。
(文:越湖 信一/写真提供:「クラシックカーフェスティバルin桐生実行委員会」)