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■トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」、コンパクトミニバンを比較してみた
ラージサイズはアルファード/ヴェルファイア、ミドルサイズはノア/ヴォクシーで、国産ミニバン市場はトヨタが圧倒的なシェアを占めています。しかし、唯一コンパクトサイズは2車種が熾烈な販売競争を繰り広げていて、トヨタの独占にはなっていません。
国産コンパクトミニバンで販売台数を競っているのが、トヨタ・シエンタとホンダ・フリードです。一般社団法人日本自動車販売協会連合会が発表した2022年9月の新車販売台数でも、シエンタが7,785台。そしてフリードは7,763台と接戦となっています。
ここでは、2022年8月にフルモデルチェンジを行い、3代目となる現行型が登場したトヨタ・シエンタとそのライバルであるホンダ・フリードを比較し、販売台数と同様に実力は拮抗しているかを検証してみました。
●シエンタのフルモデルチェンジでパワーバランスはトヨタ「シエンタ」優勢に
2022年8月に登場した現行型シエンタは、クルマの骨格となるプラットフォームにはTNGA(GA-B)プラットフォームをベースにしたものが新設計され、5人乗りの2列シート仕様と7人乗りの3列シート仕様を用意しています。
さらに、主要な骨格を連結させた環状骨格構造を採用することにより、結合部の剛性を向上。軽量でありながらバランスの取れた高剛性ボディを実現し、上質な乗り心地と優れた操縦安定性を両立させているのが特徴です。
また、車両主要骨格に採用されている構造用接着剤、およびルーフパネルに採用されているマスチックシーラーの一部を高減衰タイプとすることで、乗り心地、静粛性を向上させています。
現行型シエンタのボディサイズは、全長4,260mm×全幅1,695mm×全高1,695(ハイブリッド4WD車は1,715mm)。330mmという低いフロア地上高や、段差のないフラットなフロアを実現。そして、パワースライドドアの開口部を1,200mm(従来型比+60mm)に拡大することで得た、後席への優れた乗降性も特徴の一つです。
バックドアの開口部の高さは、従来型より15mm拡大、さらに荷室高も20mm高くしたことで、荷物の出し入れがよりスムーズに行えるようになりました。
荷室空間は2&3列目シートを畳み最大化すると、27インチタイヤの自転車もハンドルを開口部に取られることなく積載することができます。
現行型シエンタに搭載しているパワートレインは、最高出力120ps・最大トルク145Nmを発生する1.5L直列3気筒ダイナミックフォースエンジン+ダイレクトシフトCVT。そして1.5Lエンジン+モーターのハイブリッドシステム搭載車の2種類です。
駆動方式は2WD(FF)を中心に、E-Fourと呼ばれる電気式4WDをハイブリッド車に設定。従来モデルではガソリン車に4WDが設定されていましたが、新型シエンタではハイブリッド車に4WDが設定されているのが特徴です。燃費性能はWLTCモードでガソリン車が18.3~18.4km/L、ハイブリッド車は25.3~28.8km/Lとなっています。
安全装備面では、車両、歩行者、自転車運転車に、自動二輪車(昼)を検知範囲に加えて、事故割合が高い交差点でも支援するプリクラッシュセーフティ。さらに、運転の状況に応じたリスクを先読みして、ドライバーのステアリングやブレーキ操作をサポートするプロアクティブドライビングアシストを採用した、最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車に標準装備しています。
さらに、縦列駐車や車庫入れ時のアクセル、ブレーキ、ハンドル操作、シフトチェンジの全操作を車両が支援する、高度運転支援技術「トヨタチームメイト」の機能「アドバンストパーク」を設定しています。
そのほか、クルマに搭載した通信機によってソフトウェアアップデートや充実したT-Connectサービスなど、“繋がる”機能も充実しており、さすが最新モデルという充実ぶりが目を引きます。
●クルマの熟成度とクロスターという多彩なグレード構成が魅力のホンダ「フリード」
一方、現行型フリードは2016年9月に登場しました。「7days Wonderful Mobility」をコンセプトに、用途に応じて思い通り使えるコンパクトミニバンとして開発されました。3列シート車のフリードに加えて、5人乗り2列シート仕様のフリード+も用意されています。
フリードのボディサイズは全長4,265(一部4,295mm)×全幅1,695mm×全高1,710(4WDは1,735mm)と、ほぼシエンタと同じサイズ。
ボディの骨格にはハイテン材適用率をあげて、剛性を向上。高剛性リアサスペンションや液封コンプライアンスブッシュの採用により、ボディ剛性を向上させ、乗り心地の良さを実現することで、運転の楽しさや安心感を高めています。
フリードに搭載されているパワートレインは、1.5L直列4気筒ガソリンエンジンとモーターを組み合わせた「スポーツハイブリッドi-DCD」と呼ばれるハイブリッドシステムと、1.5L直列4気筒ガソリンエンジンの2種類です。
WLTCモード燃費はハイブリッド車が19.8~20.9km/L、ガソリン車は15.6~17.0km/L。駆動方式はフリードの場合、ハイブリッド車、ガソリン車ともに2WDと4WDを設定しているのが特徴です。
フリードは「ホンダセンシング」を標準装備。衝突軽減ブレーキをはじめ、先行車との車間距離を一定に保ち追従走行するアダプティブクルーズコントロール、高速道路などで車線のセンターを走行できるようにサポートする車線維持支援システム、アクセルとブレーキを踏み間違えても急発進しない誤発進抑制機能など、9つの機能によってドライバーをサポートしてくれます。
2019年10月にフリードはマイナーチェンジを行い、内外装の変更と同時に、クロスオーバースタイルの新グレード、クロスターを追加。
2022年6月には一部改良を実施し、運転席・助手席シートヒーターをはじめ、コンフォートビューパッケージ、ロールサンシェードなど、人気の高い装備を標準装備化し、商品力を向上させています。
●同じ5ナンバーでも、使用者にとってどちらが親切設計か? 燃費は?
シエンタ、フリードともに取り回ししやすい5ナンバーサイズということで、扱いやすさは互角です。ただ利便性の面では、シエンタが3列目シートを2列目シート下に収納できるのに対して、フリードは左右に跳ね上げ式なので、シエンタの方が、視界も遮られることもないのは魅力です。
そして、燃費性能は最新のパワートレインを搭載しているシエンタに軍配が上がります。ハイブリッド車どうしで比較しても、シエンタはWLTCモードで25.3~28.8km/L、フリードが19.8~20.9km/Lと差が付いています。
フリードは旧型フィットに搭載されていたハイブリッドシステムなので、フレッシュなシエンタと比べると見劣りしてしまいます。
そして、シエンタの旧型モデルでは運転支援システムが弱点となっていましたが、現行シエンタではトヨタセーフティセンスによりカバー。また、車庫入れなどをサポートする高度運転支援技術「トヨタチームメイト」や通信機能のT-Connectなど、フリードを上回る機能が採用されています。
車両本体価格はフリードが227万5900円〜308万4400円、シエンタが195万円〜310万8000円とクロスオーバーしています。商品力はシエンタ優勢ですが、現在のところシエンタはガソリン車、ハイブリッド車ともに最上級グレードのZしか購入することはできませんし、人気のため納期も長期化しています。
一方、フリードにはクロスターと呼ばれる、SUVテイストを盛り込んだグレードが用意されていますし、納車時期がシエンタよりも短いのも魅力です。
そして、シエンタとフリードにおいて、大きく差が付くのが燃費性能です。新車の価格差がそれほどないのに、燃費差が大きいと現在の燃料高騰下では、非常に気になる部分です。
デザインの好みはわかれるかもしれませんが、やはり最新のパワートレイン、安全装備を搭載したシエンタのほうが、モデル末期のフリードと比べるとモデルもフレッシュな分、購入後の満足度も高くなると言えます。
(文・写真:萩原 文博)