芝浦工業大学附属中学高等学校豊洲校地のSL403号機が一般公開されているので見に行ってみた

■鉄道黎明期を支えた名機

一般公開が始まった403号機

東京都江東区の豊洲六丁目第二公園に隣接した芝浦工業大学附属中学高等学校新豊洲校地で保存されている、元鉄道院400形403号蒸機機関車が、11月12日(土)から一般公開されています。

403号機は1886年にイギリス・ナスミス・ウィルソン社で製造され、当時の内閣鉄道局が輸入したNo.73です。1872年に鉄道開業して以来、年々輸送量が増加。開業時に導入したSLでは牽引力が不足するようになり、より大型のSLとして発注されました。

No.73は日本鉄道(現・東北本線・常磐線・高崎線・山手線)への貸出、譲渡の後、逓信省鉄道局(鉄道作業局)に返却。さらに房総鉄道(現・外房線)に譲渡後、国有化で鉄道院に復帰。1909年に400形403号に改番されました。

403号は1914年に廃車となり、川越鉄道に譲渡されて5形5号機となりました。後に4形4号機に改番。1961年に上武鉄道に貸し出され、1965年4月に返却後、同年10月で廃車となっています。

横瀬車両基地で保管されていた当時の西武鉄道4号機

廃車された4号機はユネスコ村で保存されましたが、同村の閉鎖により、西武鉄道横瀬車両基地に移設して保管されていました。

復元した403号機のナンバープレート
製造銘板も復元しました

西武鉄道は芝浦工業大学附属中学高等学校の創立100周年の一環として、同校に4号機を寄贈しました。芝浦工業大学附属中学高等学校は鉄道院403号機に復元整備。失われていた製造銘板とナンバープレートも復元されました。

403号機が設置された場所は、芝浦工業大学附属中学高等学校の敷地内ですが、隣接している豊洲六丁目第二公園との間に柵などは設置されていなくて、事実上、公園の一部のようになっています。そのため、誰もが気軽に403号機を見ることができ、特に子どもやファミリー層の人気が高いようです。

保存されている403号機の向こう側には豊洲六丁目第二公園があります

月〜土曜日の9〜17時は運転室も開放していて、中に入ることができます。ただし学校が休みの日を除きます。

運転室の内部に入ることができます
汽笛の音源となった9号機関車

毎日12時と17時には汽笛音を流しています。これは博物館明治村で動態保存している9号機関車の汽笛および走行音を録音、加工したものです。

●高輪築堤の石をオブジェに利用

高輪築堤の石を使用した土台

403号機を設置している土台の石垣は、1872年の鉄道開業時に現在の田町〜品川間に築かれた高輪築堤の石で、港区教育委員会とJR東日本から寄贈されました。

高輪築堤は田町〜品川間2.7kmの海上にありましたが、後に埋め立てられました
403号機と高輪築堤由来の石垣が、鉄道黎明期の歴史を今後も伝えていきます

鉄道黎明期のSLと築堤に由来する土台を同時に見ることができるこの場所は、今後、鉄道の歴史を伝える貴重な場所となるでしょう。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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