スバル・レックスの名前が小型SUVとして復活。半世紀前は軽自動車の王様だった?

■昭和遺産としてのレックスを振り返る

2022年11月にデビューした新型スバル レックス。フロントビュー
2022年11月にデビューした新型コンパクトSUV 、スバル レックス

SUBARUは2022年11月に、同社初の小型SUV「レックス(REX)」を発表しました。

ダイハツ工業からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける同車は、ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズという売れ筋モデルの兄弟車となります。

ところで、このレックスという響きに懐かしさを覚える方も少なくないのではないでしょうか(とくに40代以上の皆さま)。そう、かつて20年にわたって長く愛されてきた軽自動車の名前が、2022年のいま、流行のSUVとして帰ってきたのです。

●スバル360、R-2の系譜を継承したRR軽自動車

初代スバル レックスのフロントビュー
初代スバル レックス

初代レックスは、スバル360、そしてR-2からのバトンを受け継ぐカタチで1972年にデビューしました。ときまさしく「国産コンパクトカー花盛り」ともいえるタイミングで、初代のトヨタ・カローラやマツダ・ファミリア、日産・チェリー、ホンダ・シビックなど、昭和の名車が活き活きと走り回っていた時代でありました。

超個性派な祖先からRRレイアウトを踏襲しつつ、モダンなウェッジシェイプをまとって登場したレックス。

カタログには「NOWなフィーリングと、伝統的なスバルの機能性追求理念との高度な調和。いいかえれば、ミニセダンに求められている諸要素を若い感覚で大胆に造形したもの、といってよいでしょう(原文ママ)」と謳われています。

ナウなフィーリング。昭和ですね。

カタログに躍る「感じ合えるゾ」のキャッチコピーや、若い・若さ・若々しいの多用、「ちょっぴり大人」、あるいは「汗っかきと寒がり屋さんが乗り合わせても大丈夫」といった文言の使い回しから、若者世代をターゲットに据えていたことが分かります。

なお、当時のカタログ資料はSUBARUのオンラインミュージアム内技術資料車コレクションで閲覧可能。センス抜群の手書きイラストや、マニアック過ぎる技術解説など、読み物としてももの凄く面白いので、お時間のある方は是非一度ご覧になってみてください。

ソレックスツインバレルキャブ装着の37馬力エンジン+スタビライザー付きハードサスを備えたスポーツモデルGSRや、軽自動車初の「昭和51年度排出ガス規制適合車」となったSEEC-Tなど、世間の耳目を集める話題を振りまきながら、初代レックスは1981年まで生産されました。

●業界初の通販モデルも!

2代目スバル レックスのフロントビュー
2代目スバル レックス。写真は商用モデル登録できた1985年の「コンビ」

当時、読売ジャイアンツきってのホープだった原辰徳をCMに起用した2代目レックスは、ついにRRレイアウトと決別。クラス最長のホイールベースをもつFF軽自動車として、広く快適なキャビンを実現しました。

その特徴は「ザ・ビッグ・ミニ」というキャッチコピーにもよく表されていました。デビューの翌年、1982年には業界初の通信販売車として「ディノスレックス」も発売しています。

3代目スバル・レックスのトップビュー
3代目スバル・レックスには電動キャンバストップのスーパーチャージャーモデルも

軽自動車時代のレックスは1986年に登場した3代目で役割を終えました。

初代、2代目に比べると比較的没個性的なデザインとなったものの、スーパーチャージャーエンジン+電動キャンバストップを備えた「VXオープントップ」といった尖ったモデルもラインナップ。7年間のモデルサイクルを経て1992年に生産を終了。その後、スバルの軽セダンの系譜はヴィヴィオへと継承されていったのです。

ところで「REX」の車名は、初代カタログにも書かれているとおり、ラテン語の「王様」に由来しています。

田中角栄が新首相として就任、上野動物公園のパンダ、カンカンとランランが熱狂を呼び、札幌冬季五輪でジャンプ表彰台を日の丸勢が独占し、横田庄一さんが帰ってきた年に生まれたレックス。

それからちょうど半世紀。軽自動車の“王様”は、小型SUVに姿を変えて私たちのもとへと帰ってきたのです。

三代やよい

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三代やよい

自動車メーカー勤務後、編集・ライティング業に転身。メカ好きが高じて、クルマ、オートバイ、ロボット、船、航空機、鉄道などのライティングを生業に。乗り継いできた愛車は9割MT。ホットハッチとライトウェイトオープンスポーツに惹かれる体質。
生来の歴女ゆえ、名車のヒストリーを掘り起こすのが個人的趣味。
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