日産が「エクストロイドCVT」を実用化。10代目セドリック/11代目グロリアに搭載【今日は何の日?11月8日】

■10代目セドリック発売の5か月後エクストロイドCVTを搭載

1999(平成11)年11月8日、日産自動車は10代目セドリック/11代目グロリアに、エクストロイドCVTを搭載したモデルの発売を始めました。一般的なベルト式CVTとは異なる、一対の入出力の円盤と、それに挟まれたローラーの動きで変速比を変更する機構です。

1999年デビューの10代目セドリック、エクストロイドCVT 搭載
1999年デビューの10代目セドリック、エクストロイドCVT 搭載


●CVT(無段変速機)の歴史

無段変速機の発想自体は古くからありましたが、初めて実用化されたのは1959年にオランダのDAFがDAF600に搭載した“バルオマチック”というCVTでした。入力と出力の2つのプーリーにゴムベルトをかけて駆動力を伝達する機構でしたが、ゴムベルトであっため、大きなトルクの伝達ができず普及には至りませんでした。

1985年デビューしたスバル・ジャスティ
1985年デビューしたスバル・ジャスティ

その後、オランダのファン・ドネル社がCVT用のスチールベルトを開発。日本で初めてこのスチールベルトのCVTを採用したのは、1987年のスバル「ジャスティ」で、“スーパーオートマチックECVT”と称しました。

ただし、加速フィーリングに違和感があり、当時の評判は良くありませんでした。1998年に、スバルは新しくトルコンとスチールベルトを組み合わせた“i-CVT”を開発し、現在のベルト式CVTのベースが出来上がりました。

1990年代半ば頃には、小型車や軽自動車がトランスミッションをATからCVTへ置き換えるようになり、2000年代に入ってからは急速に普及し、特に軽自動車では圧倒的な採用率になりました。

●高出力モデルのために開発されたエクストロイドCVT

スチールベルト式CVTが急速に増える中で、日産はセドリック/グロリアとV35型スカイラインにハーフトロイダル方式のCVTを採用。日産は、これを“エクストロイドCVT”と称しました。

エクストロイドCVTの作動原理
エクストロイドCVTの作動原理

エクストロイドCVTは、入力と出力の2つのディスク(向かい合った富士山のような形)と、2つのディスクを繋ぐパワーローラーで構成。エンジン出力を受けた入力ディスクの回転をパワーローラーに伝え、パワーローラーから出力ディスクに動力を伝えます。パワーローラーの傾きが連続的に変わることで、出入力ディスクのそれぞれの回転速度を変化させ、無段変速を実現させるのです。

ベルト式CVTの作動原理
ベルト式CVTの作動原理

当時、比較的小型の低出力モデルにしか対応できなかったCVTが、高出力モデルのハイパワーにも対応できるようになり、レスポンスの良いパワフルな加速が実現されました。また、燃費についてもAT仕様に対して約10%の向上が得られたとしています。

●エクストロイドCVTが普及しなかった理由

エクストロイドCVTは、レスポンスの良い軽快な走りと低燃費を両立できる画期的なCVTとして高い評価を受けましたが、その後展開されることなく市場から消え去りました。

その理由は、2つあります。ひとつは、ディスクとローラーには、高い加工精度が求められるため、非常に高コストであったこと。もうひとつは、伝達効率は高かったのですが、変速比幅が4.33と狭く、これは4速AT並みでした。燃費向上のために変速段数が増え続けている時代に、変速幅に制限があることは致命的でした。


エクストロイドCVTは、セドリック/グロリアとV35型スカイラインの3つのモデルで約5年間のみの採用でした。コストと変速比幅の2つの課題が、解消できる見込みが立たなかったのでしょう。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

(Mr.ソラン)

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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