■実証実験で原付一種の電動スクーター「E-Vino」での通学を開始
ヤマハ発動機の広報グループが発信している「ニュースレター」は、同グループのビジネスだけでなく、世界や日本各地の活動まで、幅広い分野について触れられています。
今回のテーマは、ゼロカーボン通学を目指す離島の実証実験。鹿児島県立沖永良部高校の生徒が、電動バイク「E-Vino」で通学する実証実験について報告されています。
脱炭素先行地域に指定された知名町と和泊町による「EVバイク貸出による町内実証実験」が、2022年10月から開始され、希望する高校生たちが、原付一種の電動スクーター「E-Vino」での通学を開始したそうです。
沖永良部島を構成する2つの町は、環境省から「第1回脱炭素先行地域」の指定を受け、再生可能エネルギーの導入計画策定などの取り組みを推進。
中でも、島内で排出されるCO2の約半分を占めるクルマやオートバイなどへの対策が重要な課題のひとつになっています。
「EVバイク貸出による町内実証実験」では、来年2023年3月までの間、2町合わせて最大10台の電動スクーターが沖永良部高校の生徒に1か月ずつ貸与されます。
島内における電動二輪の普及はもちろん、電力の地産地消や「SDGs」教育の一環としても期待が寄せられているとのこと。
人口約1万2000人の沖永良部島では、島民の足として原付スクーターが大活躍。高校生も8割以上が原付免許を取得しているそうで、多くの高校生がスクーターで通学しています。島の中央部に位置する大山を越えて片道10km以上走ってくる生徒も少なくないそうです。
学校主催の安全講習会開催のため、島を訪れたヤマハ発動機 NV・技術戦略統括部の衣笠 健さんは、「通学だけでなく、部活や友達と遊ぶ時の移動もスクーターが欠かせないとのことで、多くの生徒さんたちは、毎月2000~3000円のガソリン代が悩み。そのため、こうした離島には、電動二輪が普及しやすい要件が整っているはずです。若い世代は、電動スクーターに対してものすごく高価なものというイメージを持っていることも分かりました」と語っています。
同島の高校生たちの使用頻度を基に試算すると、電動とガソリン車の実質購入額とエネルギー価格の合計は、在学中の約2年で逆転するという試算もあり、「実証実験によって電動スクーターの利点を実感していただければ、乗り換えが一気に進む可能性を持っているはずです」と、衣笠さんは期待を寄せています。
こうした試算が出た背景には、離島ならではの事情もあります。たとえば、鹿児島市と比較して20~30円/L高くなるガソリンの販売価格もそのひとつ。安全講習会が開かれた7月末には、1L=約190円という価格だったそうです。
高校生たちは、安全講習時に「ガソリンスタンドに寄らなくてもいいのがうれしい」「未来っぽくていいよね」「静かだから(通学途中であった人に)挨拶できるかも」「発進時のパワーが(ガソリン車と比べて)元気」「大山のキツい坂道も20km/h以上で登る」「ただ、充電切れだけは心配」とさまざまな反応があったそうです。
これから、半年間にわたって実証実験が行われてゆきます。
(塚田勝弘)