年内に引退する国鉄形電車485系ってどんな電車?

■最後に残ったジョイフルトレイン2編成が引退

国鉄時代の代表的な特急形電車だった485系が、年内に完全引退することが明らかになりました。

現在運行している485系は原型車ではなく、JR東日本がジョイフルトレインに改造した「華」と、「リゾートやまどり」の2編成ですが、「華」は10月30日(日)がラストラン。「リゾートやまどり」は12月11日(日)がラストランとなる模様です。

10月で引退する485系お座敷車「華」

「華」は1997年に改造した6両編成のお座敷車。客席は畳を並べた座敷で、掘り炬燵を基本にフルフラットに転換可能な構造でした。運転室の背後には展望室とソファを設置しています。

485系リゾート車両「リゾートやまどり」も12月に引退します

「リゾートやまどり」は2011年に登場。1999年に改造したお座敷車「やまなみ」の中間車2両と、2001年に改造したお座敷車「せせらぎ」4両編成を再改造して6両編成化しました。

どちらも車体を新造して、485系の床下機器・台車等を流用したもので、原型からかけ離れています。

JR東日本ではこのような改造485系ジョイフルトレインが数多く存在しましたが、2016年から順次引退していました。

●原型の485系はどんな電車だった?

485系は、直流電化区間と交流電化区間の両方を走ることができる交直流特急形電車として、1968年に登場しました。

1964年に登場した交流60Hz対応の481系、および1965年に登場した交流50Hz対応の483系を正常進化させた車両で、交流50/60Hzの両方に対応しているのが最大の特徴。485系は北海道から九州まで幅広い運用を可能としました。

なお、481系・483系・485系の違いは電動車のみで、付随車は共通。そのため、3形式を総称して485系とすることが一般的です。

直流・交流50/60Hzの3電源区間を走破した485系「白鳥」

485系の特徴を最大限に活かした特急が2001年まで大阪〜青森間を運転した「白鳥」。直流電化区間と北陸本線の交流60Hz区間、羽越本線・奥羽本線の交流50Hz区間の3電源区間を走破しました。

碓氷峠の急勾配区間をEF63形電気機関車と協調運転して通過した489系「白山」

この485系をベースとして、1966年に信越本線碓氷峠用に登場したのが489系です。

489系は碓氷峠の66.7‰(千分率)急勾配区間で、補助機関車のEF63形と協調運転する機能を備えるなどの対策を施した車両。それ以外は485系と同じ仕様で、489系と485系は連結することもできました。

485系は1979年まで製造されました。1969年に先頭車が小マイナーチェンジを受けて前照灯をシールドビーム化し、補助電源装置の容量をアップしたクハ481形100番代となりました。489系はこの時期に登場しています。

1969年にボンネット先頭車をマイナーチェンジ

1972年にはビッグマイナーチェンジを慣行。先頭車は分割併合に備えて、貫通扉を装備したクハ481形200番代となり、そのスタイルから『電気釜』と呼ばれました。中間車もクーラーを変更するなど、外観的にも変化しています。

1972年は先頭車のデザインが貫通形にビッグマイナーチェンジ
1974年は先頭車の形状を変えずに非貫通形に小マイナーチェンジ

1974年には先頭車をマイナーチェンジして、貫通扉を廃止したクハ481形300番代としました。489系も1972年・1974年に同様なマイナーチェンジを受けています。

1974年には北海道向けに酷寒地対策を強化した485系1500番代も登場。降雪中の視界を確保するため、屋上のライトが2灯に増強されました。

1976年には、秋田地区向けに耐寒性能と信頼性をアップした485系1000番代が登場。1000番代が485系の決定版となりました。

北海道向けに登場した485系1500番代は屋上ライトが2灯になっています
485系新造車の最終バージョンが1000番代です

485系は北海道・東北・関東・北陸・近畿・山陽・九州を中心に活躍。また、臨時列車としては489系が瀬戸大橋を渡って香川県にも入線しています。

1980年代後半から1990年代にかけて、国鉄時代末期から先頭車化改造やリニューアル改造を実施。JR東日本の485系3000番代のように、前面を大幅に改造した車両も登場しています。

JR東日本のリニューアル車485系3000番代

長年活躍してきた485系も老朽化により、後継車の置き換えが進み、一部は快速列車に転用されました。また、北海道・東北・北陸・九州新幹線の開業で活躍の場も失われました。この結果、原型の485系は2016年で引退しました。

以後はジョイフルトレインのみが残っていましたが、いよいよ終焉の時を迎えます。

●各地で保存されている485系

国鉄の名車だった485系は、埼玉県の鉄道博物館にはクハ481-26とモハ484-61。

新潟県の新津鉄道資料館には、北海道仕様車のクハ481-1508。

福岡県の九州鉄道記念館には、クハ481-603(クロ481の格下げ改造車)とクハ481-246(非貫通化改造車・カットボディ)。

福岡県の小倉総合車両センターに、クハ481-256(非貫通化改造車)の6両が保存されています。

また、489系はクハ489-1が京都府の京都鉄道博物館に。

クハ489-501が石川県小松市の土居原ボンネット広場で保存されています。

国鉄の代表形式だった485系の引退を前に保存車を見て往年の活躍に思いを馳せるのもいいかもしれません。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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