ドゥカティの2023年型「パニガーレV4R」は、MotoGPマシンに最も近い市販バイク。専用マフラーとオイルで240.5psを発揮

■最新の排気ガス規制に適合させつつ戦闘力をアップ

イタリアのバイクブランド「ドゥカティ」は、2022年10月14日、2023年ニューモデルを公開する「ドゥカティ・ワールド・プレミア」において、新型の「パニガーレV4R」を発表しました。

ドゥカティ新型パニガーレV4Rの2023年モデル発表
サーキット専用マフラーとオイルで240.5psを発揮するパニガーレV4R

市販車ベースのマシンで争う世界最高峰レース「WSBK(スーパーバイク世界選手権)」に参戦するために開発されたパニガーレV4Rは、ドゥカティのスーパースポーツ「パニガーレV4シリーズ」のなかでも、最もレーシングマシンに近いといえる存在です。

新型では、エンジンを最新の欧州排気ガス規制「ユーロ5」に対応させながらも、各部に最新の技術を活かしたアップデートを敢行。

また、空力パーツや電子制御などにも2輪最高峰レースの「MotoGP」やWSBKで培った最新テクノロジーを採用することで、より戦闘力をアップしています。

しかもこのマシン、サーキット専用のマフラーとオイルを使えば、最高出力240.5psを発揮するといいますから、驚き。まさに最もMotoGPマシンに近い市販車と呼べるスペックです。

●エンジンは最新テクノロジーが満載

パニガーレV4Rは、スーパースポーツのパニガーレV4シリーズをベースに、WSBK参戦用マシンとして開発された、ハイポテンシャルなスーパースポーツです。

ドゥカティがデスモセディチ・ストラダーレRエンジンと呼ぶパワートレインは、元々の排気量1103ccをWSBKのレギュレーションに合わせて998ccへ変更。一方、最高出力はベース車が215.5psなのに対し、先代モデルでは221psにアップさせ、より戦闘力をアップさせています。

また、ドゥカティのMotoGPマシンなどからフィードバックされた空力パーツや電子制御などを採用。まさに、公道を走れるレーシングマシンとも呼べる仕様です。

新型では、まず、エンジンを最新の欧州排気ガス規制「ユーロ5」へ適合させています。そのため、最高出力は218psと若干ダウンしていますが、前述の通り、サーキット用のチタン製レーシングエキゾーストと、シェルと共同開発したエンジンオイルを使うことで、最高出力を240.5psにアップさせることが可能。

レブリミットは1万6500rpm(6速ギア)に設定され、同排気量のスーパースポーツのなかでも、高回転域を多用するサーキット走行において卓越した走りを実現します。

ドゥカティ新型パニガーレV4Rの2023年モデル発表
パニガーレV4Rのチタニウム製コネクティングロッド

加えて、高精度な「ガンドリル」加工が施されたチタニウム製コネクティングロッドも装備。ロッドに沿って縦方向に穴(直径1.6mm)が開けられた仕様とすることで、ヘッドからクランクケース底部に至るオイル経路が拡張され、サーキットの限界走行時における潤滑性と信頼性が向上しています。

さらに、ピストンには、MotoGPやフォーミュラ1で使用されているDLC(ダイヤモンドライク・カーボン)コーティングも量産エンジンとして初採用し、ピストンとライナー間の摩擦を削減。また、5g(重量の2%に相当)の軽量化も実現することで、慣性の減少や信頼性の向上にも貢献します。

ほかにもWSBK参戦マシンと同じギア比の採用や、新開発の乾式クラッチを装備するなど、細部に渡るアップデートが満載です。

●電子制御やサスペンションも改良

電子制御では、2022年および2023年モデルのパニガーレV4にすでに導入されている最新バージョンのエレクトロニクスを採用。

ドゥカティ新型パニガーレV4Rの2023年モデル発表
最新の電子制御でサーキット走行のパフォーマンスも向上

新しい「トラックEVO」メーターパネル・ディスプレイを搭載し、各ギア専用のキャリブレーションを備えたエンジン・マッピング、ドゥカティ・トラクション・コントロールおよびライド・バイ・ワイヤ・システムの改良、そしてエンジン・ブレーキ・コントロールEVO2ストラテジーの装備など、電装系を細かくアップデートしています。

また、「フル」「ハイ」「ミディアム」「ロー」の4つのモードから選べるパワーモードは、パニガーレV4R用エンジン向けに専用のキャリブレーションを実施。サーキットにおけるパフォーマンスがさらに向上しています。

足まわりでは、フロントにオーリンズ製NPX25/30加圧式フォークを装備。先代モデルと比べ、ストローク量を5mm増加させています。

リヤには、中心間距離が312mmから316mmに増加したオーリンズ製TTX36ショックアブソーバーをセット。スイングアームの標準ピボット位置を1mm引き上げるなどで、リヤの高さを20mm増加させ、重心をより高く設定し、コーナー進入時や切り返し時の俊敏性も向上させています。

●空力ウイングはコンパクトで薄い形状へ変更

そして、空力パーツのアップデート。フロントカウルに装着された新形状の2エレメント・ウィング(メイン+フラップ)は、従来と同様のダウンフォース性能を発揮しながらも、よりコンパクトで薄くすることで、空気抵抗の低減を実現させています。

ドゥカティ新型パニガーレV4Rの2023年モデル発表
ビレット・アルミニウム製ステアリング・ステムには、シリアルナンバーとモデル名を刻印

エンジン冷却性を改善するフェアリング下部のエクストラクターは、WSBKのレギュレーションに準拠したものに変更されています。

ちなみに、新型パニガーレV4Rには、チタン製レーシングエキゾーストとカーボンファイバー製オープンクラッチカバーを標準装備する「レーシング・コンフィギュレーション」と、ミラーとライセンスプレート脱着キットを標準装備する「スタンダード・コンフィギュレーション」といった2つのバージョンが設定されています。

価格や国内の導入時期などはまだ未発表ですが、スーパースポーツ好きはもちろん、サーキット走行や市販車ベースのレースに参戦するライダーには、かなり注目のモデルであることは間違いなしです。実物のフォルムや走りを、早く見てみたいですね。

(文:平塚 直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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