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■430kW/900Nmの「スペクター」は2023年に出荷スタート
ロールス・ロイスが初めて手掛けるピュアEV、「スペクター(Spectre)」がついにその全貌を明らかにしました。「レイス」よりわずかに大きな4シーターの電動2ドアクーペは、2023年第4四半期のデリバリー開始が予定されています。
「スペクター」は、2023年第2四半期の完成を目指して現在急ピッチで開発が進められています。
航続距離は520km(WLTPモード)を実現するとみられ、最高出力430kW/最大トルク900Nm、0-100km/h加速4.5秒という圧倒的なパフォーマンスを目標数値に掲げています。
新生ロールス・ロイスとして2003年にリリースした、最初のファントムのアーキテクチャーは「ロールス・ロイス 1.0」と呼ばれており、現行のファントム、カリナン、ゴーストのそれは「ロールス・ロイス 2.0」。
そして、スペクターが採用するのは、最新のオールアルミニウムスペースフレームを使ったEV用アーキテクチャー「ロールス・ロイス 3.0」となります。
●ロールス・ロイス史上最高の空力性能
デザイナーはスペクターを、ファントムクーペのスピリットを受け継ぐモデルとして捉えており、独創的な“電動スーパー クーペ”としてデザインしたといいます。
ボディサイズは全長5453×全幅2030×全高1559mm、ホイールベースが3210mm。既存の2ドアクーペ「レイス」の寸法を、それぞれ僅かに上回っています。一方、車重は2975kgと、フラッグシップのファントム エクステンデッドより200kg以上プラスの重量級となっています。
電気自動車の航続距離を伸ばすには、空力性能の向上が不可欠です。スペクターはお馴染みのパンテオングリルの羽根ひとつひとつの造形から徹底的に見直すことで、空気がスムーズに流れるよう設計されました。
830時間もの労力を費やし、モデリングや風洞実験を繰り返し、スピリット オブ エクスタシーまでが「空力仕様」に。結果、Cd値0.25を実現し、ロールス・ロイス史上最も空力に優れたモデルとなりました。
●「約700kg分の防音材」としても機能するバッテリー
大型バッテリーは構造材の一部としての役割を果たすため、スペクターの剛性は既存のロールス・ロイス車と比較して30%アップ。同時に「およそ700kg分の防音材」としても機能するということです。
2mを超える横幅をもつ堂々たる体格に見合うように、足元には23インチのホイールを装着。ちなみに、同社の2ドアクーペが23インチホイールを採用するのは約100年ぶり(!)だとか。
サスペンションには、新型ゴーストにも採用されたプラナーシステムを搭載。10年かけて開発されたというサスペンションシステムは、「プラナー=平面」の名が与えられているとおり、路面スキャンなどを用いた緻密な制御により姿勢を常にフラットに保ちつつ、「魔法の絨毯」と称される乗り心地を提供するのが特徴です。
●ドアに煌めく約5000個の星
ロールス・ロイスのキャビンには、数百の光ファイバーを駆使して天井に「星空」を再現するスターライトヘッドライナーが用意されていますが、スペクターは新たにドアにも「星空」が追加されました。4796個の星々が煌めくドアパネルは、同社初の試み。さらに、ダッシュボードにも繊細なイルミネーションが組み込まれています。
「初めての電気自動車といえども、ロールス・ロイスのバッジにふさわしいクォリティを約束しなければならない」という理由から、スペクターには史上最も厳しいテストプログラムが与えられました。
世界各地で行うテストで想定している総走行距離は約250万km。ロールス・ロイスの平均使用距離に鑑みると、じつに400年以上分の走行距離に相当する道のりです。
世界最高の電気自動車を作り上げるべく、今も日々スペクターのテスト車は走り続けているのです。
(三代 やよい)