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■40代以上が最も多く買っているミドルサイズSUVに
2000年10月、「4人が快適で楽しい、200万円の使える4駆」というキャッチコピーで誕生した初代エクストレイル。「X-treme(=extreme) sports」といわれるスノーボードやスケートボードなどをはじめ、アウトドアスポーツやアクティビティを楽しむ若いユーザーをメインターゲットに据えていました。
コンセプトは「TOUGH GEAR(タフギア)」で、FFベースで軽量に仕立てられる4WDの「ALL MODE 4×4」を備え、雪上からオフロードまで高い悪路走破性を謳っています。最小回転半径は5.3mで、スクエアなフォルムもあって取り回しのしやすさも印象的でした。
その後、「TOUGH GEAR」というコンセプトは、2007年登場の2代目、2013年リリースの3代目(先代)、2022年に発売された新型である4代目まで貫かれています。
先代からは、「タフギア」に加えて、先進性、先進技術を意味する「Advanced TECH」が加わり、新型にはさらに上質さ、洗練されたなどを意味する「Refined」も与えられています。
コンセプトとしては欲張っているように見えますが、エクステリアは確かにタフさを抱かせるもので、インテリアは先進性にあふれています。
高級化を図った新型エクストレイルは、SUVで現在最も大きなボリューム増となっている350万円以上の高価格市場のニーズに応えたいそうです。なお、新型の価格帯は319万8800円〜449万9000円となっています。
●4WDの最低地上高は、フォレスターよりも35mmも低い
100%電動駆動のシリーズハイブリッドである「e-POWER」専用車になった新型エクストレイルは、高い技術力が窺える先進的な走りを享受できます。新型エクストレイルの「TOUGH GEAR」を具現化した装備として、アウトドアや災害時に重宝する100V AC電源(1500W)、ハンズフリー機能付リモコンバックドア、防水シートが用意されています。
なお、悪路走破性を左右するひとつの要素になりえる最低地上高は、4WDが185mm、2WDが200mm。ライバルのSUBARUフォレスターは、AWDのみの設定で220mmあります。フォレスターのAWDよりも新型エクストレイルのそれは、35mmも低くなっています。
ただし、トヨタRAV4はグレードにより異なり195mm〜200mm。マツダCX-5は、210mm。都市型SUVのトヨタ・ハリアーは、190〜195mm。
新型エクストレイルの最低地上高は、とくに低いとはいえず、雪上なども含めた日常使いであれば不足はないはず。なお、エクストレイルの最低地上高の計測位置は、マフラー部分だそう。
一方で、豪雪地帯など深雪が日常茶飯事の場合、最低地上高はとても重要という意見もあるようです。少なくとも単なる最低地上高の数値では、ライバルと比べてとくに高いとはいえない数値になっています。
●圧倒的な静粛性を街乗りから高速道路まで享受できる
次のコンセプトである上質さを意味する「Refined」は、見た目、触感から分かりやすく、インパネの質感の高さや、人工皮革である「TailorFIT(テーラーフィット)」やナッパレザーシートなどに表れています。
インパネは自慢の木目調パネルやソフトパッドが配されていて、ワイド感のあるセンターコンソールも高級感を放っています。走りもすこぶる上質で、静粛性の高さは群を抜いています。可変圧縮比を実現したVCターボの1.5L直列3気筒エンジンは、発電に徹するわけですが、始動時の音や振動はほとんど感じさせないほど静か。
同じ第2世代e-POWERを積むノートは、単体で乗ると比較的静かに感じたものの、同じBセグメントハッチバック(ルノー ルーテシアやプジョー208、トヨタ・ヤリス)などと同時に乗り比べると、意外にロードノイズやエンジン始動時の音、振動が高いことに気がつきます。
一方の新型エクストレイルは、モーター走行時に静かなのはもちろん、VCターボを積む3気筒エンジンが始動してもほとんど察知するのは不可能なほど、静粛性に包まれています。
車内での遮音性もノートよりもかなり高く、ロードノイズや風切り音、40〜50km/h走行時のこもり音、そしてフロアやリヤハウス辺りからの振動もよく抑え込まれています。高速道路にシーンを移しても不快な音はよく抑え込まれていて、前後席で会話する際も大声を張り上げる必要を感じさせませんでした。
さらに、洗練された走りを印象づけているのが、150kW/330Nmというフロントモーターによるトルク感のある走り。4WDにはさらに、100kW/195Nmのリヤモーターも加わります。なお、リヤモーターは三菱アウトランダーPHEVと同じ。
通常走行時は、フロントモーターが主体になり、山道や高速道路の合流時などではリヤモーターが加勢し、山岳路でも力強い加速が容易に引き出せます。こうした高負荷域でも車内は比較的静かなままで、最近のSUVの中でも秀逸といえるレベルにあります。
最近筆者は、改めてフォレスターやハリアー、マツダの新型CX-60、BMW X3、ボルボXC60、XC40など多くのSUVに乗る機会があり、静かさという意味では、このエクストレイルとハリアーが頭ひとつ抜けている印象を受けました。なお、これらのSUVで最も乗り心地が良く感じられたのはトヨタ・ハリアーでした。
●電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」がもたらす安定感
さらに、エクストレイルの4WDには、「e-4ORCE」と呼ぶ電動駆動4輪制御技術が搭載されています。前後モーター、左右のブレーキを統合制御することで、雪道や山道の走破性を高めるだけでなく、市街地走行でもスムーズな走りをもたらす技術です。アクセルオフ時に回生ブレーキが掛かるのはもちろんですが、フロントが前に沈み込むノーズダイブという姿勢が抑えられているだけでなく、コーナリング時に車体が外側に膨らむことも抑制されているのが分かります。
こうしたボディコントロールだけでなく、ノーズダイブやピッチングを抑えることで、乗り心地の面にも効いているのが分かります。
一方で、後席に座っていると、一般的なガソリンエンジン車よりも、電動車らしく回生ブレーキ時の減速Gが急に立ち上がる感覚が残っていて、旋回時や減速時などはシーンによっては酔いやすく感じるかもしれません。
乗り味は適度に引き締まっています。前席ではフラットライド感を十分に抱かせるものの、後席は左右に少し揺すぶられるような感覚と、上下動も伝わってくることがあります。しかし、最近ではマツダCX-60の乗り心地(とくにリヤからの大きな上下動とボディの揺れ)の悪さに驚きましたが、そういった明確な課題とまでは感じられませんでした。
ほかにも、新型エクストレイルの美点は全幅を1840mmに抑え、日本市場での取り回しにも配慮したこと。2列目の160mmスライドや、荷室容量を先代の430L(ハイブリッド)、565L(2列ガソリンエンジン車)から、575L(2列シート車)に拡大するなど、居住性や積載性でも進化しているのが分かります。
ほかにも、「Advanced TECH」を具現化した装備として、コネクティッドサービスが強化された「Nissan Connectナビ」や「ナビリンク機能付プロパイロット」「プロパイロット パーキング」などの先進装備も充実していて、発売後わずか2週間で1万2000台を受注したという人気ぶりもよく分かる仕上がりになっています。
●車両価格
4WD(e-4ORCE) 2列シート S e-4ORCE:347万9300円
4WD(e-4ORCE) 2列シート X e-4ORCE:379万9400円
4WD(e-4ORCE) 2列シート G e-4ORCE:449万9000円
4WD(e-4ORCE) 3列シート X e-4ORCE:393万0300円
2WD 2列シート S:319万8800円
2WD 2列シート X:349万9100円
2WD 2列シート G:429万8800円