道路版モデルルーム!道路のタイプが学べる「モデル道路」ってなに?

■道路にはこんなスポットもある「モデル整備地区」

●建設予定のバイパスの構造を事前にアピール

忽然と姿を現す和光富士見バイパスモデル整備地区
忽然と姿を現す和光富士見バイパスモデル整備地区

住宅やマンションの居住性を体感できるモデルルームは、全国各地にあります。そんなモデルルームの道路版が、埼玉県志木市宗岡にあります。

それが、和光富士見バイパスのモデル整備地区です。

モデル整備地区和光市側
モデル整備地区和光市側

見た目は中央分離帯付き4車線道路や副道・歩道・自転車レーンが整備された立派な道路ですが、その長さは120mしかありません。

しかも、両端には仮設ガードレールを設置していて、クルマの走行はできません。

モデル整備地区富士見市側
モデル整備地区富士見市側

なぜこのようなモデル整備地区が設置されたのでしょう。

和光富士見バイパスは、その名の通り埼玉県和光市新倉と富士見市下南畑を結ぶバイパスで、途中、志木市と朝霞市を通過しています。起点の和光市新倉には外環道和光北ICがあり、終点の富士見市下南畑には浦和所沢線と富士見川越バイパスの交差点があります。

現在は第1期整備区間の和光市新倉〜朝霞市上内間木までが開通していて、朝霞市上内間木〜富士見市下南畑の第2期整備区間の工事が順次始まっています。

和光富士見バイパスの第2期工区は当初、平面(地上部)4車線と高架部4車線の合計8車線で計画されていました。しかし、立ち退きを強いられることになる志木市宗岡で反対運動が起きたことや、その後の社会情勢の変化により、4車線に変更されています。

モデル整備地区の説明板

志木市の区間では平面・地下・高架の3案で検討した結果、アンケート調査などで支持が多く、なおかつ費用面で有利な平面案が採用されています。

モデル整備地区は、平面4車線の道路と環境緩衝帯がどのように整備されるのかを実例として見せたもので、2012年度に設置されました。

環境緩衝帯とは「安全・安心」で緑豊かな「ゆとり」ある道路空間により、沿道環境の保全を行うもの。環境緩衝帯内には歩道・自転車レーンや植樹帯、必要に応じて副道を設置しています。

和光富士見バイパスの志木市区間の基本構造は、16mの車道左右に13mの環境緩衝帯を設置したものとして計画しています。

●モデル整備地区は将来バイパスの一部になる

モデル整備地区では、緑地タイプと副道タイプ2種類の環境緩衝帯を実際に設置して、その違いが分かるようになっています。

環境緩衝帯緑地タイプ

緑地タイプは環境緩衝帯内の歩道と自転車レーンを独立させて、この間にも植栽を施したものです。メリットとしては、歩行者と自転車の錯綜を防ぐことができます。

環境緩衝帯副道タイプ

副道タイプは車道本線と並行する副道を設けることで、沿道から本線への流入箇所を減らして、安全性を高めます。また、歩道と自転車レーンは色分けをしています。

現時点ではもの凄く違和感があるモデル整備地区ですが、和光富士見バイパス第2期工区のルート上にあって、将来はバイパスの一部となるので決して無駄なものではありません。

その第2期工区ですが、2020年3月6日に都市計画が決定しています。また、志木市宗岡の埼玉県道40号線から富士見市南下畑までの区間が先行して着工していて、2022年度以降の先行開通を目指しているそうです。

モデル整備地区はこの先行開通予定区間に近い場所なのですが、こちらの開通予定日は決まっていません。モデル整備地区が出現して10年。もう少しの間はこの光景が見られそうです。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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