今でも現役で走行中。エリザベス女王が47年前の来日時に乗車された電車とは?

■エリザベス女王が来日時に乗車されたお召列車とは?

2022年9月8日にイギリス女王エリザベス2世が亡くなり、9月19日に国葬が執り行われました(享年96歳)。イギリスの君主として歴代最長の70年を務め、日本でも親しまれた陛下に哀悼の意を表します。

エリザベス女王は過去に何回か日本を訪れていて、国内での移動では特別仕立てのお召し列車を東海道新幹線で運行したことがあります。また、近鉄(近畿日本鉄道)でも1975年5月10日〜11日にエリザベス女王が乗車したお召し列車を、京都〜五十鈴川間、鳥羽〜近鉄名古屋間で運転しました。

このお召し列車に使用されたのは、落成した直後の特急車両12200系12256F(FはFormation=編成)4両編成と12214F2両編成を連結した6両のVIP編成でした。

エリザベス女王が乗車したことがある近鉄12200系12256F。見づらいですが4両目が元御料車です

12200系は1969年3月にデビュー。初期の車両にスナックコーナーという供食カウンターが設置されていて「スナックカー」と呼ばれていた車両です。ただし、1969年12月以降に増備された編成はスナックコーナーを省略しています。

12256Fはお召し列車に使用する直前の1970年に落成した4両編成で、このうち近鉄名古屋側の先頭車となるク12356をエリザベス女王が乗車する御料車としました。

御料車として使用した時は、座席を16席分撤去して御座所を設置。荷棚は撤去され、絨毯が敷かれたそうです。また側窓は防弾ガラスに付け替え、外板を強化するなどのセキュリティ強化も実施されたそうです。

お召し列車ではエリザベス女王に食事を提供するために、スナックコーナー付きの初期形編成12214Fを近鉄名古屋側に連結。御料車のク12356とスナックコーナー付きのモ12214が隣り合わせになるように連結されました。

なお、この編成は1975年10月に運転された天皇陛下(昭和天皇)のお召し列車にも使用されています。

●2022年4月から観光電車「あをによし」として活躍

エリザベス女王がお乗りになったVIP編成のうち、スナックコーナー付きだった12214Fは2003年に廃車となりました。

一方、12256Fは46年間活躍して、「スナックカー」最後の編成として2021年2月に定期運用を終了しました。そして、引退後に観光特急「あをによし」用19200系に改造されました。御料車だったク12356は「あをによし」」の近鉄奈良1号車ク19301となっています。

観光特急「あをによし」。先頭の車両がエリザベス女王や天皇陛下が乗車された元御料車です

「あをによし」への改造にあたり、内外装のデザインを一新したため「スナックカー」時代から印象が大きく変わりました。しかし、車体は紛れもなくエリザベス女王が47年前に乗車した車両です。

「あをによし」は観光列車らしく大型テーブルと家具メーカーに特注した大型シートを配置して、高級感を演出。かえって気分が盛り上がるかもしれません。

「あをによし」1号車の車内。内装は大きく変わっています

観光特急「あをによし」は2022年4月29日に運行を開始。木曜日を除く週に6日の運転が基本で、大阪難波〜近鉄奈良〜京都間を1往復、京都〜近鉄奈良間を2往復しています。

奈良観光の際には「あをによし」の1号車に乗ってみるのもいいのではないでしょうか。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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