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■バッテリーEV化のネガを抱かせないパッケージング
メルセデス・ベンツEQC、EQAに続く第3弾として、日本市場に導入されたEQBは、GLBをベースとしたバッテリーEV仕様。メルセデスでは、EQS、EQEというバッテリーEV専用プラットフォームを使うバッテリーEVが、すでに欧州に投入されています。
ただし、EQC、EQA、EQBも電動化を見据えて開発された車体を使っているため、強引に電動化されたわけではありません。
パッケージングの面では、フロアが少し高くなっているようですが、直接、乗り比べてみないと分からないレベルに収まっていて、「上げ底感」があるわけではないのが朗報です。
サードシートには、安全面の理由から『身長165cmまで』という但し書きが貼られています。撮影時に身長171cmの筆者が座ってみたところ、短時間、非常用であれば足元、頭上空間ともに座れる広さが残されていました。
開口部足元と頭上まわりの狭さによる乗降性も考慮すると、指定どおりの身長までが現実的かもしれません。エマージェンシー用として子どもなどが座るのであれば、必要十分といえるでしょう。
普段使いでは、サードシートを格納することで、2列目背もたれの高さまでのラゲッジスペースは、VDA(ドイツ自動車工業会:Verband der Automobilindustrie)方式では465L、ルーフまでは670Lという容量を確保できます。
さらに、セカンドシートを前倒しすれば、2列目バックレストの高さまでで995L、ルーフまでなら1620Lという大容量が広がります。内燃機関仕様のGLBは、最大1680Lまで拡大するため、若干狭くなるものの、実用面での懸念はほとんどないといえるでしょう。
●EQBは、最もしなやかで、静粛性の高さも印象的
メルセデス・ベンツEQBは、日本では3番目の上陸になるためか、最も洗練された乗り味を備えています。
第1弾のEQCは、電動車両らしく床下に重量物(駆動用バッテリー)を積む影響は明らかで、少し荒れたような程度の路面でも左右、上下に揺すぶられるような乗り心地という印象でした。EQAもこうした傾向といえる乗り心地になっています。
今回、試乗したEQBは、FFも4WDもこうした電動化によるネガがだいぶ抑えられていて、むしろ、しなやかさも抱かせるシーンもありました。低速域や荒れた路面では、細かな上下動や左右に振られるような動きもあります。
とはいえ、現在、日本に導入されているバッテリーEVの3モデルの中ではベストといえる足まわりで、重さが効いていて、状況によってはガソリンエンジン仕様のGLBよりも快適に感じるほどでした。
さらに、ロードノイズの低さも好印象で、不快なこもり音などもよく抑えられています。今回、試乗したのは、FWDの「EQB 250」、AWD(4WD)の「EQB 350 4MATIC」。
FWDの「EQB 250」は、最高出力140kW(190PS)・最大トルク385Nm。0-100km/h加速は9.2秒。航続距離は520kmとなっています。AWD(4WD)の「EQB 350 4MATIC」、最高出力215kW(292PS)・最大トルク520Nm。0-100km/h加速は6.2秒です。
AWDの航続距離は468kmで、パワフルな分、FWDよりも50kmほど短くなっています。
なお、バッテリー容量は両モデルともに66.5kWh、充電は普通が200Vまで、急速充電は100kWまでのCHAdeMO(チャデモ)に対応。
高速道路での追い越し時など、加速の鋭さでは、当然ながらAWDモデルの方が上回るものの、ストップ&ゴーの多い街中では、FWDでも十二分。なお、車両重量は、FWDが2100kg、AWDが2160kgと、大人1人分程度の差しかありません。
今回の試乗は、短時間・短距離でしたので真価のほどは分かりませんが、街乗り中心ならFWDでもパワー不足を感じることはないでしょう。AWDモデルは、市街地だとリヤモーターのみで駆動し、アクセルを踏む込むとフロントモーターも加勢しますが、モニターで確認しないとまったく分からないほどスムーズです。
●回生ブレーキは4段階から選択可能
また、EVらしく回生ブレーキの強さをパドルシフトで容易に設定できます。左側がダウン、右側がアップ。左側を引けば、「D-」になり回生ブレーキを強くすることが可能で、下り坂や高速道路や山道などでの減速時に重宝します。一方、右側を引けば、「D+」になり、コースティング(滑走)状態になり、スゥーと前に出るような走りになります。
回生ブレーキのレベルは4段階用意されていて、「D+」、軽度の回生ブレーキになる「D」「D-」、前走車との車間距離や登坂、降版などの道路状況などを判断し、最適な回生ブレーキが得られる「D Auto」からなります。
また、バッテリーEVらしく、立ち上がりから重量級ボディを軽々と加速させるのはもちろん、速度域を問わず静かな車内環境が得られるのも魅力です。
車両価格は「EQB 250」が788万円、「EQB 350 4MATIC」が870万円。CVE補助金は、両仕様ともに65万円で、東京都など地方自治体独自に補助金を設定している場合であれば、さらに補助されます。なお、東京都の場合、個人購入で45万円か60万円になります。
さらに、「Mercedes EQ 購入サポート」の10万円もあり、都内在住であれば最大で175万円ほど、都内以外でも99万円超の補助が受けられる可能性があります。なお、補助金には年度ごとに上限がありますので、補助金も目当てという場合は要注意です。
逆に、補助金が受けられればEQC、EQA、EQBの3モデルの中で、最もEQBの完成度が高くなっていますから、GLBを横目に見ながらEQBを指名する手も十分にアリといえます。
(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠)