第6戦SUGOのGT300、muta Racing GR86 GTが雨の作戦勝ちで初優勝【SUPER GT2022】

■オープニングラップからセイフティーカー(SC)導入で魔物が口を開けたSUGO

9月17日(土)、18日(日)に宮城県のスポーツランドSUGOで開催された、2022 AUTOBACS SUPER GT第6戦『SUGO GT 300km RACE』。9月18日(日)には決勝レースが行われました。

GT300スタートの様子
GT300スタートの様子

午前中の晴れ間が嘘のように、スターティンググリッドにマシンが並び始める13時過ぎあたりから、コース上に小雨がぱらついてきます。しかし雨はすぐに止み、14時には交通安全啓蒙のために宮城県警の白バイ、パトカー、そして覆面パトカーまでも参加するパレードラップが始まり、翌周のフォーメーションラップからのスタートとなります。

10号車 TANAX GAINER GT-R
10号車 TANAX GAINER GT-R

激しいトップ争いが繰り広げられたGT500クラスとは打って変わって、61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT、60号車 Syntium LMcorsa GR Supra GT、87号車 Bamboo Airways Lamborghini、88号車 weibo Primez Lamborghini GT3と続く、GT300のトップ集団には変化が見られませんでした。

しかし、中段では9号車 PACIFIC hololive NAC Ferrariが第3コーナーでスピンを喫し、そのままタイヤバリアへ激突。車両回収のために0周目、つまりオープニングラップからSCが導入されることとなります。

幸い、クラッシュした場所が車両回収とコース外退避がスムーズに行われたこと、GT300クラスとGT500クラスが混在する前であったことなどにより、GT500マシンの送り出しなどは行われず、SCは2周で解除となりました。

11号車 GAINER TANAX GT-R
11号車 GAINER TANAX GT-RとLEON PYRAMID AMG

このSC以後に変化が訪れたのはSyntium LMcorsa GR Supraで、4周目の第3コーナーでBamboo Airways Lamborghiniとweibo Primez Lamborghini GT3に相次いで抜かれてしまい、後から追いかけてきた65号車 LEON PYRAMID AMGなどと5位争いをするポジションとなってしまいます。

Studie BMW M4
Studie BMW M4

GT300のトップが12周目となるころ、止んでいた雨が再び強くなり、コースはあっという間にウエットへと変貌を遂げていきます。多くのチームがピットインしてウエットタイヤに交換していきます。

しかし天候回復をするともくろんだのweibo Primez Lamborghini GT3と7号車 Studie BMW M4、そして10号車と11号車の 2台のTANAX GAINER GT-Rは、スリックタイヤで走り続けることを選択します。ここでStudie BMW M4がトップへと浮上します。

●翻弄する雨の魔物。頻繁に交換されるタイヤ

スリックタイヤ勢は、ドライバー交代が可能になるレース周回の3分の1近くまで引っ張ってピットに向かいます。ここではウエットタイヤを選択しますが39周あたりから雨が弱まり、路面はドライへと移り変わります。

この天候を如何に見極めるかが勝敗のカギとなることは明らかで、ランキング首位の56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rや、10号車と11号車の2台のTANAX GAINER GT-Rなどが、今度はスリックタイヤに交換していきます。

11号車 GAINER TANAX GT-R
11号車 GAINER TANAX GT-R

天候の変化で慌ただしく動くチームに対して、予選13位だった2号車 muta Racing GR86 GTは、14周目にウエットタイヤに替えたまま加藤寛規選手でルーティンのピットインをギリギリまで遅らせる作戦をとります。

他のチームはスリックからレインタイヤに、またレインからスリックに変更するためのピットインもしていたということもあり、muta Racing GR86 GTは36周目には2番手以降を大きく引き離してトップになっていました。

muta Racing GR86 GT
muta Racing GR86 GT

そしてmuta Racing GR86 GTは49周目にピットインすると、堤優威選手に交代し4輪ともスリックタイヤを装着してコースイン。トップのままコースに戻ったmuta Racing GR86 GTは独走状態でゴールを目指しました。

その後方では、2番手は11号車と10号車の2台のTANAX GAINER GT-Rが超接近戦で争い、4番手にStudie BMW M4、5番手に56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rという順番で周回がなされます。

Studie BMW M4とリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R
Studie BMW M4とリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

作戦が全て上手くいき大きなリードを築いた2号車 muta Racing GR86 GTが、逃げ切って今季初優勝を決めました。今季デビューのTOYOTA GR86にとっても初勝利となります。

優勝のmuta Racing GR86 GT
優勝のmuta Racing GR86 GT

2位は最後まで接近戦でポジションを守り切った11号車 GAINER TANAX GT-R。10号車 TANAX GAINER GT-Rは3位となりまし。

11号車 GAINER TANAX GT-R
2位となった11号車 GAINER TANAX GT-R

56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rは、サクセスウェイト100kg搭載ながら4位に入りドライバーランキング1位をキープ。同ランキング2位は4ポイント差で、10号車 TANAX GAINER GT-Rの富田/大草組、3位は11号車 TANAX GAINER GT-Rの安田/石川組がつけ、GT-R NISMO GT3勢がトップ3を占めています。

リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R
リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

これまでのサクセスウェイトはポイントの3倍の重さ、つまり1ポイント3kgで積載されていましたが、次戦の第7戦オートポリスではサクセスウェイトがハーフウェイトとなり、1ポイント1.5kgでの積載となります。

そのため、上限いっぱいの100kgを積んで2022年のSUPER GTを戦ったのは56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rだけとなりますが、だからといって次戦オートポリスではサクセスウェイトは50kgではなく、第6戦、つまりこのSUGO戦までのポイントに1.5倍した重さを搭載、つまり69kgのウェイトを搭載します。ランキング2位の10号車 TANAX GAINER GT-Rはオートポリスでは63kgのウェイトを積むこととなり、ウェイト差はだいぶ近くなります。

チャンピオンを狙っていくチームもほぼ固まりつつある状況でのオートポリス戦は戦いの激しさを増すことは必至と言えるでしょう。

GT300表彰式
GT300表彰式

その第7戦オートポリスは10月1日(土)、2日(日)に開催です。

(写真:吉見 幸夫/文:松永 和浩

【SUPER GT2022 第6戦 SUGO GT300 決勝結果】

順位 ゼッケン 周回数 車名 ドライバー
優勝 2 79周 muta Racing GR86 GT 加藤寛規 堤 優威
2位 11 78周 GAINER TANAX GT-R 安田裕信 石川京侍
3位 10 78周 TANAX GAINER GT-R 富田竜一郎 大草りき
4位 56 78周 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R 藤波清斗 J.P.デ・オリベイラ
5位 7 78周 Studie BMW M4 荒 聖治 アウグスト・ファルフス
6位 65 78周 LEON PYRAMID AMG 蒲生尚弥 篠原拓朗
7位 55 78周 ARTA NSX GT3 武藤英紀 木村偉織
8位 61 78周 SUBARU BRZ R&D SPORT 井口卓人 山内英輝
9位 96 78周 K-tunes RC F GT3 新田守男 高木真一
10位 25 78周 HOPPY Schatz GR Supra 松井孝允 野中誠太
11位 18 77周 UPGARAGE NSX GT3 小林崇志 太田格之進
12位 360 77周 RUNUP RIVAUX GT-R 青木孝行 柴田優作
13位 88 77周 Weibo Primez ランボルギーニ GT3 小暮卓史 元嶋佑弥
14位 244 77周 HACHI-ICHI GR Supra GT 佐藤公哉 三宅淳詞
15位 60 77周 Syntium LMcorsa GR Supra GT 吉本大樹 河野駿佑
16位 6 76周 Team LeMans Audi R8 LMS 片山義章 R.メルヒ・ムンタン
17位 31 76周 apr GR SPORT PRIUS GT 嵯峨宏紀 中山友貴
18位 52 75周 埼玉トヨペットGB GR Supra GT 吉田広樹 川合孝汰
19位 87 75周 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3 松浦孝亮 坂口夏月
20位 30 75周 apr GR86 GT 永井宏明 織戸 学
21位 5 75周 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 冨林勇佑 平木玲次
22位 20 74周 シェイドレーシング GR86 GT 平中克幸 清水英志郎 山田真之亮
23位 50 74周 Arnage MC86 加納政樹 阪口良平 末廣武士
24位 22 74周 アールキューズ AMG GT3 和田 久 城内政樹
25位 48 70周 植毛ケーズフロンティア GT-R 井田太陽 田中優暉
26位 4 56周 グッドスマイル 初音ミク AMG 谷口信輝 片岡龍也
リタイア 9  0周 PACIFIC hololive NAC Ferrari ケイ・コッツォリーノ 横溝直輝

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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