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■軽自動車初の本格的2シータークーペ
1971(昭和46)年9月18日、スズキから軽自動車初の2シータークーペ「フロンテクーペ」がデビューしました。スタイリングは、ジウジアーロのデザインをベースにスズキがアレンジ。“二人だけのクーペ“のキャッチコピーで若者を魅了しました。
●続々と誕生した軽のスペシャリティカー
スペシャリティカーには、明確な定義はありませんが、一般的には走りと実用性、快適性をバランスさせた2ドアクーペやファストバッククーペを指します。かつてのトヨタ「セリカ」やホンダ「プレリュード」、日産自動車「シルビア」が該当しますが、軽自動車も1970年代から1980年代には、スペシャリティカーと呼ばれるスポーティなモデルが数多く登場しました。
代表的なのは、ホンダの2ドアクーペ「ホンダZ(1970年~)」、軽初の2ドアハードトップのダイハツ「フェローMAX(1970年~)」、三菱のミニカ70をベースにファストバックに仕上げた「ミニカスキッパー(1971年~)」、2ドアクーペのマツダ「シャンテ(1972年~)」などがあります。いずれも、スタイリッシュなフォルムで走り好きの若者から人気を集めました。
●ジウジアーロのスタイリッシュなデザインが話題に
フロンテクーペのスタイリングは、イタリア人デザイナーの巨匠ジウジアーロのデザインをベースにスズキがアレンジ。全高が軽自動車の中で最も低いスポーティなフォルムで、2シーターで軽ながらスペシャルティカーと呼ぶに相応しいモデルでした。
パワートレインは、356cc水冷3気筒2ストロークエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はフロンテ同様RRです。軽量なボディに加えて前後重量配分が優れていたため、性能は軽自動車の中でも際立っており、加速性能は2Lクラスに匹敵するレベルでした。
“二人だけのクーペ”というキャッチコピーとともに鮮烈なデビューを飾ったフロンテクーペ。今でも軽の名車として取り上げられますが、2人乗りのクーペであったことが実用性の面でマイナス材料となったためか、販売は期待通りには伸びませんでした。半年後には4シーターが追加され、2年後には2シーターは廃止されてしまいました。
●ジウジアーロが手掛けた名車の数々
イタリアのカーデザインの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロは、多くの名車を手掛けています。基本的には直線基調のデザインが特徴で、初代「VWゴルフ」や初代「フィアット・パンダ」などの大衆車から、ランチア「デルタ」、マセラティ「3200GT」、ロータス「エスプリ」、BMW「M1」とスポーツカーなど、高級車を手掛けています。
日本車では、スバルの「アルシオーネSVX」、スズキの4代目「キャリイ」「フロンテクーペ」、いすゞの「ピアッツァ」「117クーペ」「ジェミニ(JT型)」、日産自動車の初代「マーチ」、マツダ「ルーチェ」と、今見ても新鮮でスタイリッシュなクルマばかりです。
1970年代から1980年代にかけて人気を獲得した軽のスペシャリティカーですが、1993年にスズキのハイトワゴン「ワゴンR」が登場して状況は一変。軽自動車の市場は、実用性の高いハイトワゴンが席巻、運転を楽しむ個性的なスペシャリティカーの出番は少なくなってしまいました。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)