軽自動車が電気で走るメリットは?日産サクラに乗って分かった5つの魅力

■日産サクラに試乗して気が付いた、5つのポイントとは?

話題の軽自動車、日産SAKURA(サクラ)。サクラが普通の軽自動車とちょっと……いや大きく違うのはパワートレインで、エンジンは積んでいません。代わりにバッテリーとモーターを組み込んだEV(電気自動車)となっているのです。

桜色がよく似合う、日産サクラ

電気自動車といえば「環境にいい」というイメージが先行していますが、果たしてメリットはそれだけなの? 実際に運転してチェックしてみましたよ。

すると、選びたくなる5つのポイントが見えてきました。

●加速が滑らかで気持ちいい

まずの驚いたのは加速の滑らかさ。普通の軽自動車から乗り換えると、蒸気機関車と新幹線くらい(ちょっとだけ誇張あり)乗り味が違います。もちろん、EVは新幹線側ですよ。

滑らかな加速感は、まるで空飛ぶじゅうたん!?

加速は、滑らか過ぎてまるで滑るように速度が増していく感覚。モーターってエンジンと違って音や振動がないから「頑張っている感」が全然感じられなくて、だから滑るようにスムーズなのです。もしかして「アラジン」に出てくる魔法のじゅうたんに乗ったらこんな感じなのでしょう(乗ったことないけど)。

●加速の力強さが頼もしい

サクラの加速は本当に驚きです。滑らかなだけじゃなくて、力強いのですから。

たとえば、バイパスや高速道路への合流。普通の軽自動車なら「アクセルをいっぱい踏み込んで頑張って加速しないと」になる状況でも、サクラなら涼しい顔でグググッと力強く加速するから運転が楽です。

高速道路やバイパスへの合流はもちろん、上り坂でも感じる力強さ。軽自動車の常識を大幅に超えています

その秘密は、エンジン車とは比べ物にならないモーターから発揮されるエネルギー。最高出力こそ64psとターボエンジン搭載の軽自動車と同じですが、エンジンの粘り強さの目安となる最大トルクは195Nmもあって、これは軽自動車ターボエンジンの約2倍。“2倍”って打ち間違いみたいな数字ですが、間違いではありません。だから、加速が力強いんです。

軽自動車に乗ったことがある人の多くは、きっと「坂道発進や坂道での加速が厳しい!」と感じたことがあるに違いありません。でも、サクラで走ってみると別次元すぎて思わず笑みが。サクラは坂道を走る機会が多い人にもオススメです。

●曲がるのが気持ちいいから運転が楽しい

サクラの爽快な走りは加速だけかと思っていたのですが、そうではありませんでした。コーナリングもよかったので驚きですよ。

具体的にいえば、ハンドルを切って曲がり始めるときの反応が素直で、“ドライバーの意図をくみ取っていうことを聞いてくれるような感じ”が気持ちいい。交差点を曲がるだけで、「普通の軽自動車とはなんか違うな」って感じます。本当に。

曲がるのも気持ちよくて、思わず遠回りして帰りたくなるほど

もうひとつは、曲がっているときの安定感が高いこと。旋回中のふらつきが少なくて、曲がる姿勢に落ち着きが感じられるんです。

実は、そこにもEVならではの理由がありました。サクラは重いバッテリーを床下に積んでいますが、おかげで重心が下がり、さらにはクルマの運動性能を大きく左右する前後重量配分も「フロント55対リヤ45」程度と改善しています。さらに、バッテリーを搭載するために車体下部を補強していることも、気持ちのいいコーナリングの理由になっているようです。こんなに爽快なコーナリングは予想外でした。

●ガソリンスタンドに行かなくていい

「EVは充電が面倒」と思われがちですが、家で充電するのを基本とすればとっても便利な乗り物。だって、ガソリンスタンドに行かなくてもいいんですよ。

よく考えてみてください。ガソリンスタンドに行くのって、意外と面倒じゃないですか。今どきはセルフスタンドが多いから、クルマから降りて作業するのもちょっと手間。行かなくて済むならば行きたくないですよね。

でも、サクラならガソリンスタンドへ行かなくてもいいんです。一度知ると、クルマを使う概念が変わりますよ。

自宅でエネルギーチャージできるサクラなら、何かと面倒なガソリンスタンドでの給油が不要

自宅での充電を基本とする場合は、たしかに自宅で充電する必要はあります。でもその作業は、充電ガンをクルマに挿すだけなので、思っている以上にイージーですよ。お風呂から上がった後、ドライヤーを使うためコンセントにプラグを挿すくらいの感覚です。

●インテリアが凝ってる!

もしかすると、サクラはガソリン軽自動車の「デイズ」をベースとした構造になっていることをご存じの人もいるかもしれません。でも、それを意識することはないでしょう。なぜなら、スタイルもインテリアも、デイズとはデザインが全く違うから。

スタイリングはシンプルかつ先進性があって、サクラのことを知らなくてもきっと「新しいクルマだなー」って思いますよね。

まるで液晶テレビのようなメーターによるモダンな雰囲気が魅力

そして注目したいのは、インテリア。ダッシュボードはまるで液晶テレビのようにフラットで薄いメーターとナビ画面が並んでいて、今までのクルマとは全く違う感覚。さらに助手席の前には布が張ってあったりと、とってもモダンです。

この雰囲気は、ほかの軽自動車ではちょっと味わえませんよ。正直なところ、このインテリアの仕立てだけでサクラが欲しくなってくるほどです。

サクラのエクステリアは専用デザイン
リヤのデザインも個性的なサクラ

●サクラはどんな人にジャストフィット?

ただ、そんなサクラですが「どんな人にもオススメ」というわけではありません。その理由は、使い勝手でガソリン車とは違う部分があるからです。

たとえば航続距離。ガソリンを補給すれば走り続けられる普通の軽自動車と違い、サクラで走り続けるには途中で充電が必要。充電なしで走れる距離はWLTCモードというカタログ記載値で180kmですが、実際に安心して走れるのは130kmほど。それ以上走りたいなら、外出先で充電しないといけません。言うまでもなく、充電は給油よりも時間がかかります。

また、サクラを所有するなら自宅に充電できる環境が欲しいところ。一戸建てで自宅に車庫があれば多くの場合は10万円もかからず充電器を設置できますが、集合住宅に住んでいるとちょっと厳しいかもしれません。

「急速充電があるから大丈夫」という考え方もありますが、実はあまりオススメできません。サクラは急速充電時の電力受け入れ量の最大値がほかの電気自動車よりも低めなので、同じ時間充電器に繋いで充電しても、充電できる量がやや少なめになります。急速充電の利用料はガソリン代のように入れた量で計算(従量課金制)ではなく、充電していた時間でカウントする課金制。なので、急速充電料金が他のEVに比べると割高になってしまうという点からも、急速充電の利用はお得ではないのです。

日産サクラは軽自動車だけど、従来の軽自動車の感覚とは大きく違う

整理すると、サクラとのマッチングがいい人は自宅に充電環境があり、一回の移動範囲は100km程度で済む人。それは言い換えれば、一戸建てに住んでいて、一家にクルマを複数所有で、軽自動車を近場の足として使う人にジャストフィット、となりそうですね。

(文:工藤 貴宏/写真:高橋 学)

この記事の著者

工藤貴宏 近影

工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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