Acura ZDX「Type S」にも期待。ホンダがプレミアムEVのコンセプトモデルを発表【週刊クルマのミライ】

■北米におけるEV時代のデザインコンセプト

ホンダが、アメリカにおいて今後のAcuraのデザイン方向性を示すデザインコンセプトである「Acura Precision EV Concept(アキュラ・プレシジョン・イーブイ・コンセプト)」を世界初公開しました。ご存知のようにAcura(アキュラ)というのは、ホンダのプレミアムブランドです。

Acura Precision EV Concept
「Acura Precision EV Concept(アキュラ・プレシジョン・イーブイ・コンセプト)」は電気自動車時代のデザインを示すコンセプトモデル

このコンセプトモデルは、電動化時代におけるAcuraデザインの方向性を示したものと発表されています。

カリフォルニアの強い日差しに合わせて最適化されたというマット塗装「ダブル・エイペックス・ブルー」という名称の鮮やかな色ですが、まさしく北米でのトレンドを作ろうという強い意志がボディカラーからも感じられます。

具体的なスタイリングとしては、パワーボートの造形にインスパイアされた流麗で力強いフォルムとなっているのが特徴です。

当然ながら、電動化時代=EVを前提としたデザインコンセプトですから、フロントには大きな開口部は不要となります。しかし、同ブランドのアイデンティティであるダイヤモンド・ペンタゴン・グリルは健在です。

鋭角でシャープな形状のデイタイムランニングライトやグリル部分をLEDで光らせることで電動化時代のアキュラ顔を表現しています。

●ブランド初のEVの名前は「Acura ZDX」

Acura Precision EV Concept
「パーティクル・グリッチ」と呼ぶ独特の抽象的なパターンを前後の造形やホイールに配しているのも、次世代デザインの表現として見逃せません

あわせて、ホンダは2024年中に北米で発売を予定しているAcuraブランド初のEV量販モデルの名称が「Acura ZDX(ズィーディーエックス)」となることも発表しました。

Acura ZDXは、Acura Precision EV Conceptが示した電動化時代におけるスタイリングを採用する最初の量産モデルといえます。そしてコンセプトモデルが示すように、ZDXは100%電動のSUVモデルになることも確実です。

気になるのは、100%電動化になるZDXには、スポーツバージョンである「Type S(タイプエス)」が設定されることが公言されている点です。

電動パワートレインにおいて、アキュラがどのようなタイプSを提案してくるかは、これからのホンダの方向性も示唆することは間違いありません。はたしてホンダは、電動化時代においてどのようなスポーツを表現するのでしょうか。

なお、ホンダは北米市場におけるEV事業についてゼネラルモーターズ(GM)と2018年より、高性能かつローコストな「アルティウム」バッテリーを搭載したEVの共同開発を進めています。

具体的なプロジェクトとして、2024年上旬発売予定のHonda PrologueとAcuraブランドのSUVタイプのEVモデルの二車種の開発が進んでいることも2020年に発表されています。今回、名前が明らかとなったAcura ZDXは、まさにGMとの共同開発によるSUVタイプのEVモデルというわけです。

●ハードウェアはGMと共同開発されるもの

GM’s Ultium platform
ゼネラルモーターズの開発したコスパに優れた「アルティウム」バッテリーと、その使用を前提としたプラットフォーム

「アルティウム」バッテリーを前提としたプラットフォームは、前後にモーターを配置することが可能というフレキシブルなもので、リヤ駆動のスポーツカー、フロント駆動のファミリカー、四輪駆動のSUVなど多様なモデルが生み出されるのも特徴といえますが、おそらくZDXはプレミアムな電動SUVとして四輪駆動を選ぶことでしょう。

気になるのはAcura Precision EV Conceptのプロポーション、とくにフロントドアとフロントタイヤが離れている点がFRプラットフォームを思わせることです。

基本的にAcuraブランドではNSXを除くとFFプラットフォームを基本としてきましたが、ZDXにはリヤ駆動のバリエーションがあって、新たなブランド価値を生み出すことを目指しているのかもしれません。

そうなると前述した「タイプS」におけるスポーツ表現においても過去にないものになる可能性があります。ZDXで示すホンダスポーツの未来が、非常に楽しみになってきます。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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