新型「シルビア」登場までのストーリーを新型「フェアレディZ」に乗りながら工藤貴宏が妄想してみた

■パワフルで速い。もしかすると日産で最後のピュアハイパワーエンジン搭載車?そんなフェアレディZに乗りながら思ったこと

405psのエンジンを積んだ新型フェアレディZ(RZ34型)に乗ってきました。

最新の日産フェアレディZ

クルマはそれはそれは素晴らしい出来で。エンジンはパワフルで速いし、ハンドリングも正確で乗っていて気持ちいい。

でも、それ以上にいいと思ったのは、新型Zには「Zファンのために歴代最高のZを作った」という開発者の愛情たっぷりの言葉や、「もしかして日産で最後となるかもしれないモーターを組み合わせない”ハイパワーエンジン車かも」なんていうクルマ好きの琴線に触れる要素があること。

やっぱりクルマ好きですからね。理詰めで作られたクルマもいいけれど、「新型Zで磨いたのは”カッコよくて!””ハヤくて!””いい音!”」なんていうプレゼンを開発陣からされると、グッとくるわけですよ。どうせ所有するなら、感情を揺さぶられるようなクルマがいいですよね。

ところでワタクシ、感情を揺さぶられる日産車といえば思い出深いのはシルビアです。
はじめて所有した「マイカー」は、中古のS13シルビア。CAターボのMTでした。
はじめて新車で買ったクルマは、S15シルビア。もちろんターボのMTです。

そんなこともあって、日産のテストコースで新型Zのハイパフォーマンスに酔いしれながらこんなことを思ったわけです。

「このZは確かに最高だけど、所有してもパワーは持て余すことになるだろう(それもそれでいいけど)。純エンジン車の最後に、シルビアくらいのクルマも作ってくれないかな……」と。

もちろん、状況が厳しいことはわかっています。でも、新型シルビアも欲しいと思いませんか?

というわけで、ここからは単なる妄想です。

新型シルビアを開発している情報なんてないけれど、「こうやれば新型シルビアができる……といいな」というくらいの戯言。だからシルビアが大好きで首を長く復活を期待している……という人と、お時間のある人のみ読んでくださいね。あくまで妄想です。

●プラットフォームをフェアレディと共用って新型シルビアの原点回帰

新型シルビアを作るにあたって、プラットフォームはどうすればいいか。

新規プラットフォーム……はいろんな面でハードルが高い。最大のハードルは開発コスト。今どきプラットフォームというのは複数の車種で使うものだけど、シルビア用に新規で小型のFRプラットフォームを起こしても、それを活用できる車種は残念ながら見当たらない(発想を転換して「プラットフォームがあるなら」と小型のFRセダンなんて作ったらそれはそれで面白いけれど)。

かといって、S15シルビアのプラットフォームを復活させればいい……というのもいろんな面でハードルが高い。衝突安全性とかどうする? おそらく剛性面でも今どきのスポーツカーと考えると厳しい(涙)。

じゃあどうするか?

新型フェアレディZに使っている「FR-L」をできるだけ小さくするのはどうでしょうかね。フェアレディZはZ34もRZ34もホイールベースは2550mm。これって実は「GR86」のそれ(2575mm)よりも短いので、ホイールベースはそのままでもOKじゃないでしょうか。

S15シルビアは楽しい走りでした。そして、カッコよかった!

いっぽう全幅は、新型フェアレディZで1845mm。さすがにシルビアとして考えた場合にこれではワイドすぎなのでなんとかしたいところですが、プラットフォームの基本設計を同じとするV35型「スカイライン」の全幅が1750mmだったので、そこまでは幅を詰められるのではないかと期待。ホイールベース2550mm(S15型に対してプラス25mm)、全長4445mm(S15と同じでRZ34よりも65mm長い)、全幅1750mm(S15型プラス55mm)くらいのボディサイズなら、今どきのシルビアとして許容範囲ではないでしょうかね。個人的には「ぜんぜんアリ」だと思います。

初代シルビアは、フェアレディと兄弟車だったのです

古いクルマに詳しい人はご存じでしょうが、実は初代シルビア(CSP311型)ってダットサン「フェアレディ」(SP310)とシャシーが共通だったんですよね。だから、もしZとシルビアでプラットフォームを共用しても、それは原点回帰ってことなのです。

Datsun_Fairlady1500
ダットサン フェアレディ1500(1965年)型式SP310型 全長3,910mm 全幅1,495mm 全高1,305mm ホイールベース2,280mm
Silvia(1966)
シルビア(1966年)型式CSP311型 全長 3,985mm 全幅1,510mm 全高1,275mm ホイールベース2,280mm

エンジンはどうするか?

残念ながらS15に積んでいたSR20DETはもう生産していません。かといって、新型フェアレディZに積んでいるVR30DDTTは、いいエンジンだけどシルビアとしてはパワフルすぎる。シルビアって、Zのような持て余すパワーではなく、何とか使いきれるくらいのパワー感がいいんですよね。

どうしたらいいか……と日産のエンジンラインナップを眺めていたら、いいエンジンがあるじゃないですか。「KR20DDTT」です。

KR……???

馴染みがないのも無理はありません。日本では展開していないエンジンなので。

これは排気量2.0Lの4気筒ターボで、最高出力268ps/最大トルク380Nm。……シルビアにちょうどイイ!

何を隠そうKR20DDTTは、日産が世界に誇る可変圧縮エンジンで、北米の「アルティマ」とか「インフィニティQX50」「インフィニティQX55」などに積まれています。これを高回転が気持ちよく回るようにチューンしてもらって、シルビアに積めばよさそう。問題は……現時点では横置き用しかないことでしょうか。

可変圧縮の2.0L 4気筒ターボエンジンは268ps。横置き用しかないが…

もしくはいっそのこと、e-POWERってのもアリかも??(でもそれは”純エンジン車ではなくなる…”という突っ込みはさておき)。

簡単にドリフトができるほど高出力モーターを積んだ、後輪駆動のe-POWERなら受け入れられる気がします。

それを前提にすると、新型エクストレイルのプラットフォームをベースに後輪駆動としてリヤ用の大型モーターを組み込んで成立させる手もあるか……?

ハイブリッドカーのシルビアなら、たぶんサスティナビリティ性もあるし(知らんけど)。

それにしても、新型Zは魅力的。シルビアはもう少し手の届きやすい値段(350万円程度を希望)でなんとか……!

……以上、妄想にブースト圧を最大にかけて書いてみました。

今ならスポーツカーに一定の人気があるから、その勢いに乗せてプロジェクトを進めてくれないかな(笑)。

超余談ですが、新型Zの試乗時に話をした3人の開発エンジニアさんは、2人が元S13オーナーで、1人は元S14オーナーでした。なんだ……みんなシルビアで育ったんじゃないですか。シルビアって、クルマ好きにとって本当に偉大なクルマだと思います。名前の響きもいいしね。

(文:工藤 貴宏

この記事の著者

工藤貴宏 近影

工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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