千葉の手掘りトンネルを見に行こう【柿木台第一・第二トンネル/永昌寺トンネル】

■手掘りトンネル探索初心者にオススメ

千葉県は知る人ぞ知る手掘りトンネル王国で、房総半島の内陸部を中心にたくさんの手掘りトンネルがあります。今回は初心者でも手軽にアプローチすることができる柿木台第一トンネル、柿木台第二トンネル、永昌寺トンネルを紹介したいと思います。

柿木台第一トンネル
柿木台第一トンネル

この3本のトンネルは千葉県市原市柿木台から月崎にかけての約1.4kmにかけて点在していて、市道7055号線で繋がっています。

3本のトンネルが掘られたのは1898年(明治31年)から1890年(明治33)年頃で、実に122年以上前。現在はこの道の東側に県道81号が並行しているので、地元のクルマが行き来する程度となっていますが、かつてはこの地域の重要なルートだったのでしょう。

Google Mapより

なお、2019年秋に発生した大雨で市道7055号線の一部が崩落したため、永昌寺トンネルは2021年夏頃まで自動車の通行ができませんでしたが、現在は通行止めを解除しています。

●日本古来の観音掘りトンネル

トンネル群へのアプローチは、県道172号線に面している永昌寺トンネルからの方が楽です。永昌寺トンネル南側の入口は、小湊鐵道月崎駅から県道172号線を東へ300m程行ったところにあって、丘の斜面にぽっかり口を開けています。

将棋の駒のような断面が特徴の永昌寺トンネル
将棋の駒のような断面が特徴の永昌寺トンネル

永昌寺トンネルの断面は、将棋の駒のような5角形をしています。これは観音堀りという日本古来の土木技術によるもので、地山の支持力だけでトンネルの形状を保つ手法なのだそうです。トンネルの断面形状が観音様の手を合わせた形に似ていることが、観音掘りの由来とのこと。

トンネル入口の脇にある説明板によると、永昌寺トンネルが掘られたのは1898年(明治31年)です。長さは142mと3本の中では一番長く、幅員は3mとなっています。

永昌寺トンネルの説明板

トンネルは直線なので入口から出口まで見えますが、出口(北側の入口)の断面が観音掘りではなく、一般的な馬蹄形をしているように見えます。

実は永昌寺トンネルの一部は後年補修を行ったらしく、途中で断面形状が馬蹄形に変わっているのです。そのため北側の入口はコンクリート製の馬蹄形になっていて、手掘り感はありません。

北側の入口は馬蹄形でコンクリート製です
北側の入口は馬蹄形でコンクリート製です
途中で断面形状が馬蹄形に変わります
途中で断面形状が馬蹄形に変わります

●馬蹄形の柿木台第二トンネル

柿木台第二トンネルは永昌寺トンネルから北に約500m進んだところにあります。このトンネルは1900年(明治33年)に掘られたもので、3本の中では一番新しいトンネルです。といっても122年前のトンネルですが。そのためかこのトンネルは観音掘りではなく、馬蹄形になっています。

柿木台第二トンネル南側の入口
柿木台第二トンネル南側の入口

南側の入口は、トンネルの手前から掘割となっています。掘割はトンネルの入口に向かってまるでファンネルみたいに窄まっているのが特徴です。

柿木台第二トンネル北側の入口
柿木台第二トンネル北側の入口

トンネルの長さは47.8mと短いので、トンネルができる前は丘を越える道があったのだと思います。

トンネル北側の入口もファンネル形状。西側に壁が作られています。

●柿木台第一トンネル

柿木台第一トンネルの南側入口
柿木台第一トンネルの南側入口

3本のトンネルの内、一番北側にあるのが柿木台第一トンネルです。全長78m、幅員3.5mの観音掘りトンネルで、永昌寺トンネルと違って最初から最後まで断面は5角形となっています。説明板によると完成は推定で1899年(明治32年)とのことです。

柿木台第一トンネルの説明板
柿木台第一トンネルの説明板

北側の入口は秘境感溢れる雰囲気になっています。

柿木台第一トンネルの北側入口
柿木台第一トンネルの北側入口

このトンネル群の特徴はやはり柿木台第一トンネルと永昌寺トンネルの観音掘りを見ることができる点にあります。

この3本のトンネルの近くには、ほかにも魅力的な手掘りトンネルがたくさんありますので、特徴的でアプローチしやすいトンネルを中心に紹介していきたいと思います。

(文・写真:ぬまっち

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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