新型「DS4」のアヴァンギャルドなデザインは機能より匠の技による美しさ【クルマはデザインだ】

■ライバルより大きなボディを匠の技で装飾する

4月28日に発売された新型「DS4」は、何と「世界で最も美しいクルマ」として登場しました。「DS9」に続き、新世代のアヴァンギャルドデザインを掲げる同車の魅力はどこにあるのか? あらためてエクステリアデザインを検証してみましょう。

DS4・メイン
ライバルより長く広いボディで高い存在感を演出する

同じCセグメントのハッチバックであるVW「ゴルフ」に対し、120mm長く、40mm広く、20mm高いボディは、まずそれだけで存在感に違いがあります。さらに、ノーズまでスッと伸びた厚いボディと薄いキャビンの組み合わせが、シンプルに「カッコよさ」のベースになっています。

DS4・フロント
太く直線的な表現に一新されたデイタイムランニングランプ

「DSウイング」を用いたフロントは、DS9ほどの立体感はないものの、グリル内で輝くひし形のドット文様が上質感を堅持。そして、DS9ではパールのネックレスをイメージしていた優雅なデイタイムランニングランプが一新、太くシャープなL字形となりました。これは後述する「彫刻的」表現に通じるものです。

●キャラクターラインで彫刻的な造形を演出する

ボディサイドを見ると、ライバルとなるプジョー「308」同様、張りのある豊かなショルダーラインが確認できます。とくにリアフェンダーのボリューム感はかなりのもので、ここは写真では分かりにくい部分かもしれません。

DS4・サイド
シャープに駆け上がるサイドラインが彫刻的ボディを生み出している

そして、その張りのある前後フェンダーに深く刻まれたキャラクターラインがDS4の大きな特徴です。とくにリアはランプ部までグルリと回り込んでいて、深い奥行感があります。さらに、ドア下部からリアへ向けた立体感のあるラインは強力で、ボディ全体に伸びやかな勢いを与え、今回のテーマである「彫刻的」な表現を完成させています。

DS4・ピラー
リアピラーは凹面に深く削がれ、アクセントと同時に彫刻的ボディも演出

ルーフラインとベルトラインが接合したリアピラー部では、DS9に準じてパネルが凹面に削がれており、強いアクセントとともに彫刻的なボディを盛り上げます。

一方、リアはやはりDS9に準じ、ひし形のパーツが輝く横長の美しいランプと、大きなボリュームのバンパーの組み合わせが強い安定感を。もちろん、フロントに準じてメッキモールによる装飾も忘れていません。

●従来の実用的価値観を解体した新しい美学

新型DS4は「このクラスにおいて、従来のトラディショナルなコンパクトハッチバックに求められる価値基準を見直す」と謳っています。これは、ゴルフを筆頭とする合理的な実用車へのアンチテーゼであり、あえて「機能よりも美しさ」を掲げていると言えます。

DS4・リア
DS9に準じた薄いリアランプとボリューム感のあるバンパーで安定感を生む

これが、DS9に次いで提唱する「SAVOIR-FAIRE(サヴォア・フェール)」、すなわち「匠による研ぎ澄まされた美学と、卓越したクリエイションに裏打ちされたクラフツマンシップ」であり、「第37回国際自動車フェスティバル」での「Most Beautiful Car of the Year」受賞の理由でもあるのでしょう。

大柄なボディを深いラインで削って「彫刻的」なイメージを演出したボディに、合理的な理由や機能を見出すのは「野暮」ということになります。職人が生み出す美しさに理屈は不要なのです。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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