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■「お、こんなところにこんなものが!」がたくさん隠れた新型ヴォクシーのユーティリティ
ヴォクシー試乗第6回目は、まだ紹介していない車両内外の詳細点について触れていきます。使用性や気づいた点など、第5回までに採り上げた項目と重複する部分はありますが、その点はご容赦を。
では前回に続いて登場のMaiさんと見ていきます。
●運転席から
・インストルメントパネル
全体的には昔からあるT字型インストルメントパネル(以下インパネ)ですが、実際には横一文字に伸びたインパネから、シフト(とその周辺のスイッチ)だけのためにちょいと舌を出しているという造形。いっけん、メーター以外トレイになっている開放的な形状ですが、センターに大きなディスプレイがあるため、トレイ部分は助手席前だけにとどまっています。とはいっても開放感は持ち合わせており、全体が低くなっていて圧迫感が皆無なのはいいところです。
・ステアリングホイール
グリップ部は革巻き、3本スポークタイプで、左右スポークにオーディオ&メーターディスプレイ操作、クルーズコントロール関連のスイッチをレイアウトしています。外側の造形の細部は異なりますが、内側の骨組みはおそらく他のトヨタ車と共通のものでしょう。
いまやパワーステアリングが標準化されているので、ハンドル径はちょい小さくてもすむ365mmとなっています。できれば370~380mmにしてグリップももう少し細めにすると扱いやすいと思うのですが。
・ワイパー&ウォッシャースイッチレバー
OFFを起点に間欠作動のINT、低速LO、高速HI、レバー手前引きでワイパー連動のウォッシャー液噴霧。上方に保持している間はLOで作動するMIST付き。内側のリングは間欠INTの時間間隔調整で、上にまわすと間隔が短く、下にまわすと長くなります。
先端のスイッチはリヤワイパー用で、1段上まわしで間欠、さらにまわして低速LO作動、レバー全体の向こう押しでウォッシャー液噴射。このあたりの操作ロジックは他のトヨタ車、他社の他車と同じです。
・方向指示レバー/ライトスイッチレバー
レバー全体の上下で左右ウインカー、途中保持で車線変更時に使うレーンチェンジャー。手前引きでパッシング、向こう押しハイビーム。オートマチックハイビーム(AHB)ないしアダプティブハイビームシステム(AHS)は中立位置のまま作動します。
先端のライトスイッチはAUTOを定位置とし、エンジンON直後から周囲の明暗によってライト点灯かどうかが決まる最新オートライト規制対応版。車両停止中の点灯時、スイッチ下まわしで、夜間ならスモール落ち、1秒以上の保持で消灯、発進してライト再点灯。昼間の消灯時は往復のたびにスモール点消灯を繰り返します。下まわしからAUTOへは自動戻りであるいっぽう、上まわしはライトの強制点灯。一般的にはAUTO使用がほとんどでしょう。というよりも、普段からAUTO常用に仕向けるための最新オートライト義務化なのであります。
・イグニッションスイッチ
シフトPのブレーキ踏みで押してエンジン始動。始動中の短押しで停止のほか、2秒以上押し続けるか、素早い3回押しで緊急停止もします。ブレーキを踏まないで押すとただのモード切り替えになり、OFFからACC(アクセサリ)-イグニッションON(エンジン始動なし)-OFFを押すたびに繰り返します。
・シフトレバー周辺のスイッチ
上から順に、横ならびの左側は、アドバンストパークメインスイッチ、その右はカメラスイッチ。その下の縦ならび一連は、電動パーキングブレーキとブレーキホールドのスイッチをくくり、さらに下にはエコモード、VSC OFFのスイッチが続きます。エコモードは駆動力とエアコン作動を抑制し、クルマ全体を低燃費指向に振るモードで、アクセル踏み込みに対するレスポンスが鈍感になります。
・運転席右側のスイッチ群
この試乗車の場合、「群」というほどスイッチはないのですが、3段あるうち、最上段中央はオートマチックハイビーム(AHB)またはアダプティブハイビームシステム(AHS)のスイッチが置かれます。AHBであろうとAHSであろうと見た目は同じ。
中段最右はパワースライドドアオフスイッチ。「オフスイッチ」なので、押した状態は「OFFがON」ということになり、スライドドアは手動で開閉させることになります。逆に突出状態は「OFFがOFF」なのでパワースライドドアは各操作法で電動開閉。このときにはボタンサイドに塗られたオレンジ色で、電動開閉可能状態にあることを知らせます。
この2点以外のダミーエリアは、車種によって有無となるワイパーデアイサー、標準タイプのライトで併設される手動レベライザーなどのスイッチが入るスペースとなっています。
・シフトレバー
ガソリン車のトランスミッションは無段変速機で、カタログ名称は「Direct Shift-CVT(ギヤ機構付自動無段変速機)」。要はマニュアルモード付のCVTで、ヴォクシーの場合はレバーをドライバーサイドに引き寄せて使います。その数10速。普段づかいで全10段を駆使する人は多くないと思われ、実際に筆者も使いませんでしたが、山間道下りだけはエンジンブレーキをセレクティブに使うのに便利です。あるものは意味を考えながら上手に、有効に使いましょう。
・フロントインテリアランプ/パーソナルランプ/ヘルプネット
光源は同じなのに、両方点くとフロントインテリアランプになって、個別に点ければパーソナルランプとなる室内照明。左右パワースライドドアやパワーバックドアの室内側スイッチはここに一体化されています。
「SOS」が併記される受話器の赤いマークスイッチは「ヘルプネット」のスイッチで、交通事故発生or急病を発したなどの緊急事態発生時、自動またはボタン押しでヘルプネットセンターに電話通報してくれるものです。エアバッグが作動しても自動通報する「エアバッグ連動タイプ」であるほか、「ドライバー異常時停車支援システム(LTA連動型)」が働いたときはクルマの自動停止後、これまた自動でヘルプネットセンターに通報、そしてあおり運転によるトラブル時には警察にも通報してくれるのだと。状況をどう見分けてヘルプセンター、警察へ通報するのか、次回取材したいところです。
改良してほしいのはスイッチの形状。ヘルプボタンはいいにしても、特にランプのスイッチ(個別パーソナルランプ、インテリアランプ、DOORボタン)のデザインをあまりに面一にしているため、夜間使うものなのに、手さぐりでも暗がりで目視しても実に使いにくく、何度も押し間違えました。凹凸をつけるか、位置でわかるようにそれぞれを離すかなどの改善を加えてほしいところです。
・サンバイザー
太陽に向かって走るときや横からの直射日光を避けるのに使うサンバイザーは、考えてみたらいまもむかしも同じ形のままですな。裏側にはふたを開けるとランプ点灯する化粧ミラーがついています。
カローラクロスのときにも述べましたが、何の注意書きもない、どうせノッペラボウの平面バイザーなら、ここに全長・全幅・左右ドアミラー間距離・全高、ホイールベース、前後トレッド幅、数値、そしていちばん重いヴォクシーの車両重量を記した車両三面図があるといいと思います。一覧表でもいいヨ。街の時間貸し駐車場には、入庫可能サイズやトレッド、重量を記した看板を掲げていることがありますが、自車のサイズを知らなければ意味がないわけで、ぜひお願いしたいものです。背高であるばかりか、今回車幅が35mm増えたことだし…
●ドア内張り
S-Zのドア内張りは、前後ドアとも触るとやわらかいソフトレザータイプ。ドアを閉める際に握るドアグリップは、パワーウインドウスイッチ直後のほか、アームレスト部にもあるといいと思います。ドア引き部(力点)がドアヒンジ(回転支点)から遠いほうがより軽く閉められるからです。ドア全開時には前側を使えばいいわけで…
・ドアハンドル
ロックノブがドアハンドル部に併設されている、いま常識のタイプです。すべてのドアがロック中でも、運転席ドアハンドルをひと引きすればアンロック→ドア開までしてくれるのですが、これはトヨタが昔から用いている設計です。
ユーザー任意でON・OFFできることを前提に、車速検知式ロック機能をつけてくれるといいと思います。人待ち中や、赤信号待ちが不運にもスクランブル交差点内になってしまったときなど、いきなり暴漢がドアを開けて襲ってくるということがないとはいい切れないからで、報道されませんが、平和に見える日本も、その裏ではこのような事件が起きているのです。その対策の一環としてぜひ。
・パワーウインドウスイッチ
全席、ひと押し・ひと引きで全開・全閉するワンタッチ式なのはトヨタ車ならでは。プログラム改変だけですむはずだから高くはならないはずなのに、他社に起用例が少ないのなぜだろう? こんなありがたいものはないのに。
その前方にはドアのロック/アンロック、パワーウインドウロック、電動ドアミラー調整のスイッチがあります。カローラクロスのときと違って位置も適正で、押し間違えはいっさいありませんでした!
●室内空間
・1列め席居住性
クルマがクルマだけに、スペースがどうこういうのは無意味でしょう。頭上クリアランスも助手席との距離も豊かなもので、フロントガラスが下方まで伸びていることとも相まって視界がよく、開放的であることは本試乗第1回で述べたとおりです。
予想外だったのは、シートスライドの最後端位置が足りないことで、176cmという身長に対して足がヘンにアンバランスに長い筆者は(決して自慢じゃないことも第1回で述べました。念のため)いちばん後ろの位置でちょうどいいか、わずかにペダルが近く感じたものでした。さらなる脚長族には足りないかも知れませんが、一般的な体型の人にはまったく問題ないと思います。
このスライド最後端位置決定の出発点は、おそらくは車両企画段階で決めた荷室寸法or容量の厳守でしょう。その実現のために、1mmでも前に押しやりたいセカンドシートの最前端位置を先に決め、その成り行きで前席スライド最後端が現状の位置に決まったという流れです。マイナーチェンジで改良されるかな…
・2列め席居住性
3列シート車の中でいちばん快適といわれる2列め。屋根やホイールベースの中央に位置することから、頭上に太陽光を受ける心配がなければ、揺れの影響を受けることも極小で、確かにいちばんの快適性を備えています。おやおや、横を見るとガラスにちょっとした工夫が…(後述)
・3列め席居住性
サイドのクォーターガラス側に格納することを考えると、座面前後、背もたれ寸が他列より小さめになるのは仕方ありません。むしろ折りたたみ&引き上げ収納&強度保持を満たしながらリクライニング機構まで入れ、よくこのかけ心地を作り出したと思うほどです。だからといって着座感がせせこましいということもなく、ボディ形状の恩恵で頭上まで屋根が覆っていて日差しを後頭部に受けることもなし。空間がタイトというわけではありませんが、もしこれで不満ならアルファードを買いましょう。
・1列めシート
S-Zは合成皮革とファブリックがコンビとなり、S-Gは単なるファブリック。前に乗ったカローラクロスとの比較になりますが、あちらに比べるとこちらは全体的に平板で、カローラクロスで得られた、包み込まれるような感触はありません。これは着座感も去ることながら、ウオークスルーもできるヴォクシーという車両キャラクターを反映させ、乗降性や前席左右間の移動のしやすさに配慮したのだと思います。
・2列めシート
標準では左右独立のキャプテンシートが備わります。左右シートとも両腕用のアームレスト(角度調整付)を持ち、ふくらはぎを休ませるオットマン付き。
・3列めシート
法規上は3人がけとなりますが、実際には2人がけが適当な3列めシートです。全体が薄くてこのかけ心地を実現できるなら、他の席も薄くしてもいいのかも。
写真は中央乗員用のヘッドレストを外した状態ですが、そのヘッドレストはそのへんにほっぽり投げるのではなく、きちんと荷室側に置き場所が用意されているのは細やかな配慮。
・多彩なシートアレンジ
取扱説明書上では4つのシートアレンジを紹介しています。1列めシート背もたれを倒し、下げた2列め座面とつなげる「フロントフラットモード」、2列め3列目をフルに倒してつなげた「リヤフラットソファモード」、3列めを引き起こして2列めを最前端位置にし、荷室容量を最大にする「ラゲージモード」、そして3列め格納&2列めを最後端にした「スーパーリラックスモード」です。ここでは「リヤフラットソファモード」と「スーパーリラックスモード」をご紹介。
みそっかす扱いになりがちな3列目シートもリクライニングしますが、それが申し訳程度ではなく、水平付近にまで倒れるのがなかなかのものです。最大時は写真のようになり、閉めたバックドアにつぶされることもありませんでした。
・後席用サンシェード
「2列め席居住性」の項のつづき。スライドドアのトリム上部には、ガラスからの直射日光を遮るロール式のサンシェードを全機種標準装備。下中央に見えるつまみを上に引き上げると網状のシェードが現れ、上辺2か所のフックを窓枠側の受けにひっかけて遮光。中間位置はありません。
・セラミックドット
ボーッと見ていると気づきませんが、サンシェードで覆いきれないガラスの両端、車体からするとガラス前後には、ガラスそのものにセラミック塗装を施して遮光を補完。筆者は最初、ボーッと見ていたので気づきませんでした。
・1列め乗降性
筆者実測333mmというフロア高は、乗用車に比べて高めだと思いますが、開口部天地があることもあり、身長158cmのMaiさんなら頭を掲げることなく乗り降りすることができます。シート座面が高いこともあり、ひとによっては地面に「すとんっ!」と落ちるように降りることも…いずれにしても乗降のしにくさを抱くことはありません。
Maiさんがフロント席から降りる様子をコマ撮り写真でどうぞ。
・2列め乗降性
「開口部天地が大きい」と前項で書きましたが、それは2列めが顕著です。加えて開口部形状が絵に描いたような長方形であることも乗降性の良さを後押ししています。下側スライドレールを収める都合上、2列め席のフロアは前席より高くなっていますが、身長によってはほとんど立ったまま乗り降りできるのは大きなメリットでしょう。
筆者が残念に思ったのは、パワースライドドア装着車に全車工場オプションとなる、助手席側の「ユニバーサルステップ」がこの試乗車にはなかったことです。他社の同類車では電動で突出&格納するものが多く、値段は10~15万円するわ、重量は20kg近くあるわで、機能を天秤にかけると「もうちょい何とかならんものか」と思うものがほとんどなのですが、このユニバーサルステップはドアのスライドに応じて機械的にドア下から出てくる、高さ200mmの簡便型。値段も3万3000円と安く、重量も電動式に比べればはるかに軽いはずです。筆者もリンク機構で何とかならぬものかと考えたことがありますが、トヨタはやってくれました。いやあ、今回の新型ヴォクシーではToyota Safety SenseよりもToyota Teammateよりも楽しみにしていたのに、どんなものなのか、実物を見たかったなア。
では、Maiさんの2列めシートから降りる様子も次の写真でどうぞ。
・3列め乗降性
取扱説明書上、3列め乗員は2列めシートをフルに前に出し、その脇を経て乗降する方法を記載しています。したがって、その軌跡は次の写真のとおり。いっぽうで、センターウォークスルーを活かして真ん中を通っての乗降も可能。どちらがいいかはそのときどきで決めてください。
Maiさんが3列めから降りる様子のコマ送り劇場、ふたとおりでごらんあれ。
・ハンズフリーパワースライドドア
スライドドアの開閉はハンドフリーで行うこともできます。スマートリモコンを携帯し、フロントドア下シル後端部に足を出し入れ…じゃなくて入れ出しを行うと、キックセンサーが反応してスライドドアが電動開閉。子どもや荷物を抱えてドアを開け閉めしたいときのためのものです。
トヨタ車の降車後のスマートドアロックは、フロントドアハンドル前端の溝部分に触れて行いますが、同じような溝ないし何らかの刻印、あるいは地面を照らす照明で足の検知エリアを示してくれるといいと思います。現状は何のマーキングもないため、筆者もMaiさんもうまく反応させることができないことが何度かありました。
なお、カローラクロスと同じようにヴォクシーのバックドアもハンズフリー開閉と思い込み、車両後ろでひとりバンパー下に足を入れて無反応だったというむなしい思いをしたことは、これを読んでいるあなたと私、ふたりだけの秘密です。
●空調/オーディオ
・オートエアコン&ヒーターコントロールパネル
S-Zには左右独立温度コントロールフロントオートエアコン+リヤオートエアコンが標準装備。後席には天井にもコントロールパネルが、ルーフサイドには計4つの吹出口が備わっています。まあ、至れり尽くせりだこと。
ところでイグニッションONの状態で荷物の出し入れをしたとき、荷室右内壁下のスリット奥から音がしたことから、どうやらここにはファンが入っているようでした。試乗本編で述べたラム圧導入量が豊かだったことと何か関係があるのかなあ?
・ディスプレイオーディオ
全機種標準装備。室内空間の大容量ぶりを示すかのように画面サイズは8インチ。オプションで10.5インチ版も選べます。カローラクロスではそれぞれ7インチ、9インチでした。この先、もっと大きくなるのかなあ。
S-Zで10.5インチ版を選択するとスピーカーは標準の6スピーカーが倍の12スピーカーに、S-Gは4スピーカーのまま変わりません。
試乗車にはナビも内蔵。
筆者は最終型ブルーバードを2000年に入手するとき、当時のCDナビゲーションを工場オプションで選びました。このときから「いずれどこかがやるだろう」と思っているのに長らくどこも実現していなかったのは、目的地への「左側優先到着機能」とでもいうべきルート案内ロジック。ナビを使って目的地に着いたはいいけど、その入口が対向車線側にあり、中央分離帯が邪魔して右折できなかったり、そもそも右折進入禁止だったりすることがあるでしょ? 筆者は2018年に、いま使っているクルマ用に初めて市販ナビを購入する際、片っぱしから調べたら、同じことを考えていたのは当時もいまも唯一ケンウッドの製品だけ。過去、パナソニックなどが採り入れていたのと、ディーラーオプション品でも存在していたようですが、肝心な工場オプション製品にはありませんでした。最近ようやく日産車が工場オプションナビに採り入れましたが、ヴォクシーのナビにはまだ入っておらず。目的地近くに来てあわてて迂回するのではなく、出発時から目的地が車両左に来るよう、そうと気づかせず、スマートに案内してくれるロジックをぜひ採り入れてくれれば、このナビの利便性はますます向上することでしょう。
・パノラミックビューモニター/フロントビューモニター
ここではフロントビューモニターにとどめて解説。車両前に実際に人が立ったとき、画面にはこのように映ります。ことにヴォクシーは着座位置もフードが高いため、通常の乗用車では見えるはずの人がヴォクシーでは見えないこともありえます。つまりヴォクシーのようなクルマなら、なおのこと選んでおいたほうが無難といえるわけです。
●室内の収容スペース
・グローブボックス
最近のクルマの常ですが、インパネの奥行きの割にグローブボックスの容量は小さめなクルマが多くなっています。ヴォクシーも容量はほどほどで、車検証や取扱説明書を納めたケースと懐中電灯を入れたらそれでおしまいといった程度のものでした。
ボックス上方にはDVDプレーヤーが設置されていましたので、ヴォクシーを手に入れた方は「DVDが見られない!」と早とちりされませぬ様。
・助手席側のトレイ
ただトレイ状にしただけではなく、深めの底部にはさらに深いくぼみを設け、ものを区分けして使えるように工夫しています。
試乗記第1回でも述べましたが、助手席エアバッグ普及以後はトレイタイプが消えた代わり、そびえ立つ絶壁みたいなインパネが増え、見る目には実におもしろくなかったのですが、ヴォクシーは大変結構な造形で仕上げたと思います。
さらに驚いたのが…(次につづく)
・助手席アッパーボックス
上からのつづき。グローブボックスが予想したほどではないサイズであることを補うかのように、前席には小間物入れが豊富に用意されています。
最初気づかず、触ってみたら「おお、こんなところに!」と驚いたのが、この助手席アッパーボックス。Maiさんも驚いていました。これでクルマを売っているなら、ふたを閉めた状態、開けた状態での助手席エアバッグとの干渉テストだってパスしているはずですが、それにしてもよくエアバッグと両立させたなと感心。結構深さがあるので実用性は高いと見ました。
・センターパネル
シフトレバー左サイドにはトレイが。急斜面だし縦長だしで、何を置けばいいのかよくわかりませんでしたが、切り欠き付きのトレイを外せばUSB電源が潜んでいるので、切り欠きから充電コードを引っ張り出してスマートホンをここで充電してくれということなのでしょう。
急斜面なのですべり止めがあればなおよかった!
・格納式センターボックス
前後2段式。1段引きで小物入れ、さらに引いてカップホルダー。位置は低いですが、それが逆に使いやすくもありました。ただし、運転席から助手席、またはその逆でサイドウォークスルーをするときには閉じることをお忘れなく。足をぶつけます。
・コンソールボックス
横開きのふたの下にはなかなか深い空間が。小間物ではないけど大物でもない、コンパクトカメラぐらいのものを入れるのにちょうどよさそうです。
さらに前側のフロア部にも物入れがあり、ここには…メモ帳あたりがいいかな。貴重品はふたの中に。そうでもないものはオープン部分に。
前後のウォークスルーができなくなることとのトレードオフにはなりますが、あればあったで便利なものでした。
・ドアポケット
ボディの拡幅効果で、奥行きというか厚みというか、とにかく容量は大きめ。最近ドアポケットがおまけみたいなクルマが増えているので、ポケットらしいポケットを久しぶりに見た思いです。
・買い物フック
前席背もたれに設置。後席乗員がビニールの買い物袋をごみ袋に使うときに便利そう。耐荷重は4kg。
・シートバックポケット
地図帳やファイル、雑誌などはこちらに。助手席背もたれだけではなく、運転席背もたれにも装備。
・大型サイドテーブル
2列め右キャプテンシートの通路側にテーブルを設置。引き起こして水平にして使います。リンク機構がしっかりしており、使用中も心もとないところはありませんでした。
・ラゲッジボックス&ラゲージボード
これまたしっかりしたボード下には床下収納が。カーペットが敷かれているので汚れものを放り込むのには躊躇します。
ボード裏にはひも付フックが固定されており、デッキサイドのシートベルト部か3列めシートのヘッドレストポールに引っ掛けて開けたボードを開いた状態にできるのがいかにもトヨタ車らしい親切さ。
・カップホルダー
試乗車についていうと、インパネ両端にカップホルダーがひとつずつ。他には前出のセンターマルチトレイにひとつ、大型サイドテーブル4角にひとつずつの計7つ。7人の着座位置を思うとマルチトレイのぶんだけは場所が「?」ですが、個数だけ見れば人数ぶん揃っています。
・ボトルホルダー
ドア天地寸があってアームレスト&パワーウインドウスイッチが上方にあることを活かし、ドアポケットを段違いにしてスピーカー上にもポケットを配置。その手前側をボトルホルダーにしています。これで前席ドア左右ひとつずつ。さらに左右スライドドアにひとつずつ、3列めの左にひとつ、右にふたつ。これまたうまく合計は人数分の7つ。カップホルダーと違って、ちゃんと乗員の位置に即してそれぞれレイアウトされています。
●電源各種
・アクセサリーソケット/USB端子
最近の流行に則って、ヴォクシーも電源が豊富です。車種によって場所や個数が異なりはするのですが、今回の試乗車の場合、従来からのDC12V/10Aのアクセサリーソケットをひとつ、前出センターパネル奥にDC5V/3AのUSB Type-C 2個(充電用・データー転送用)が全機種標準で備わるほか、試乗車の場合は、前出大型サイドテーブルに2個ついていました。電源としては合計4つ。人数分ではないので、充電だけは仲良く助け合って使いましょう。
Maiさんは大型サイドテーブルのUSB端子が気に入っていました。
筆者が気に入らないのは、この種の端子、あるいは通信の規格がしょっちゅう変わること。
「規格」というのは、メーカー間を超えて同じ様に使えるようにというものなのに、その規格がコロコロ変わってどうすんだ…このヴォクシーのUSBも「Type-C」ですが、従来のUSB端子のアクセサリー(充電器など)を持っている人は使えないか、新たに買うか、それすらできない機器を持っているひとは変換コネクターを用意する必要があります。最悪の場合、機器そのものを買い換えるか…USBだけではありません。Bluetooth機器でもペアリングができたりできなかったりというのがあるでしょ? Bluetoothのマークがついてさえいればいいというものでもないのです。すぐにはないでしょうが、もし「USB Type-D」なんていうものが出現しようものなら、ヴォクシーの「Type-C」は一挙過去のものになり、あなたが使っている電子機器は使えなくなってしまいます…もうこれ以上規格を変えんでくれ。
●Maiさん助手席トーク
今回2度めの登場のMaiさんですが、普段はひとが運転するクルマに乗るのみの方です。運転するよりは助手席に乗ることが多いひとの立場で、新型ヴォクシーの感想を聞いてみました。
<「棚」と大画面モニターがお気に入り>
—いかがでしたでしょうか、新型ヴォクシーの感想は?
Mai:フフフ…すごい快適です。広くて。足元も広いし、後ろも広かったし…あと収納がたくさんあるのが
—収納もね、この種のクルマを見るたびに「こんなに要るのかな」と思うんだけど、過去に男4人で取材で北海道に移動するとき、ドリンクホルダーなんかは割と使ったもんでしたよ。
Mai:そうでしょうねえ。実際にこのクルマに触れてみると、「あ、ここにあった」「ここには棚があった」という感じで、すごく使いやすそうに感じました。自分のクルマだったらけっこう使うと思いますね、この棚は。
—「棚」っていうのがいいですねえ。
Mai:そう、棚。
—これくらいの大きさだとみんな何を置くんでしょうねえ?
Mai:お菓子やおにぎりを置いておいたり…あと飲みものも。このトレイも(助手席側の)意外に深いから、ごみ入れに使う袋を何かに引っ掛けるんじゃなくて、袋を押し込んで使うのに便利そう。
—ああ、その使い方はいいですね。メーカーのひとも想定していない使い方だ。
Mai:他には、モニターがきれいで前のクルマ(前回のカローラクロス)よりもさらに大きくて見やすい!
—Maiさんがカローラクロスのときに話題にしたシートの肘掛け、このヴォクシーにはきちんとしたものがついていますよ。
Mai:そうですね。アームレストはいつも奪い合いになるのでそれぞれについているのはいいですね。
—何で2列めシートのように、前席側も好みの角度で止められるようにしなかったんだろう?
Mai:謎ですね…後ろは好きな角度に合わせられるのでよかったのに。
<充電端子がたくさんあるのはありがたい>
Mai:そうそう、後ろででもスマートホンが充電できるのがありがたいですね。
—この前のカローラクロスにもあったんですけどね。
Mai:後ろで充電できないと、後ろのひとが充電したいときはスマートホンを前席のひとに預けることになってしまうでしょう。私もいままでは、預けるか、前かがみになって前から充電コードをギリギリまで延ばしてもらって使っていました。後ろにもあると画面をいじりながら充電できるので楽でしょうね。
—最近のクルマはは後ろのひと用にもつけて人数ぶん揃える傾向にあるようですよ。
Mai:へえ。
—カローラクロスの撮影のときは暑い日で空調の効きを褒めていましたけど、今回はどうでしょう? もっとも今日は暑くも寒くもないですが…気づいたかな、後席の乗員用の吹出口がルーフサイドにあるの。
Mai:見ました、見ました。バスみたいな感じですね。あとWi-Fiがあるのがびっくりしました。タダじゃないですよね。月1000円? 1100円くらいならいいかな?(後述)
—なーんかいまのクルマはそういったところにもお金かかるようになってしまいましたねえ…
<シートの印象>
—シートはどうですか? 大きさや座り心地などは…カローラクロスのときほどの包まれ感はないですよね。あのときは「カポッ!」とはまるような椅子だったけど、
Mai:そうですね。包まれ感はないですけど、かといって座り心地が悪いなとは全然思いませんよ…今日来るときに乗ってきた電車の椅子はお尻が痛くなって、途中席を変えたり通路を歩いたりしたほどなんですけど、その直後だったからこそさっき初めて助手席に座ったときには本当に「かいてきー」って思いました。
—よっぽどひどい電車だったんだねえ。ところでシートだけではなくて、自動車全体の乗り心地はどうですか? 比較すれば、この前のカローラクロスのほうが際立っていたぶん良かったように思いますけど。
Mai:そうですねえ、乗っている間じゅう、ふわっとしていたのは向こう(カローラクロス)かも知れないですね。でもこのヴォクシーだって悪いとは思わないですよ。
今回も帰り道でうかがった、ふだんハンドルを握らない女性ならではのお話をうかがいました。
クルマがクルマということもあるのでしょうが、走り云々というよりも、走りの性能とは直接関係のない、もの入れの数やシート、空調といった、肌や目に触れる部分に目がいっていることがわかります。やはりMaiさん、アームレストが好きで楽ちんしたいひとのようですな。
会話中、MaiさんがWi-Fiの月額を「1000円かな? 1100円かな?」と想像していますが、筆者があとから調べたらドンピシャ! 通信量無制限の月額1100円(税込み)でした。
最後はMaiさんのギャラリー写真を飾っておしまいにします。
というわけで、今回はこれでおしまい。
次回はヴォクシー試乗7回目にして最終回。ヴォクシーの、多大な数のカスタマイズ項目や販売動向、本試乗テストでの燃費についてお伝えします。
(文・写真/山口尚志 モデル:Mai)
【試乗車主要諸元】
■トヨタヴォクシー S-Z (6BA-MZRA90W-BPXRH型・2022(令和4)年型・2WD・ガソリン・自動無段変速機・ホワイトパールクリスタルシャイン)
●全長×全幅×全高:4695×1730×1895mm ●ホイールベース:2850mm ●トレッド 前/後:1500/1515mm ●最低地上高:140mm ●車両重量:1640kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.5m ●タイヤサイズ:205/55R17 ●エンジン:M20A-FKS(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1986cc ●圧縮比:- ●最高出力:170ps/6600rpm ●最大トルク:20.6kgm/4900rpm ●燃料供給装置:D-4S(筒内噴射+ポート燃料噴射) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):15.0/11.4/15.3/16.9km/L ●JC08燃料消費率:- ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:339.0万円(消費税込み・除くメーカー/ディーラーオプション)