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■GR86とSUBARU BRZがカーボンニュートラル燃料で参戦
2022シーズンから新たにENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by HankookのST-Qクラスに、カーボンニュートラル燃料(CNF)を使用して参戦するGR86とSUBARU BRZ。6月3日(金)~5日(日)に富士スピードウェイで開催された第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レースにも参戦していました。
CNFと言われるものは何種類か存在しますが、スーパー耐久で戦うこの2台で使用するCNFは、空気中の二酸化炭素を回収して電気由来の水素と結合させ炭化水素を生成するe-Fuelと呼ばれる種類のもので、CNFを燃焼させても今以上に二酸化炭素が増えるということが無い、というもの。
また分子単位でみれば水素も二酸化炭素も無尽蔵にありますから、回収する手段を確立できれば永久に作り続けることが出来る燃料でもあります。
スーパー耐久で使われるCNFは、WRC世界ラリー選手権やWEC世界耐久選手権で使用されるものと同種のもので、これらのCNFを使ってレースの場で車両開発をしていくというコンセプトのもと、GR86とBRZがスーパー耐久に参戦しているのです。
そのCNFはいったいガソリンとどれほどの違いがあるのでしょうか?
●CNFを入れた市販のGR86に乗ってみた
6月3日(金)~5日(日)に富士スピードウェイで開催された第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レースのなかで、CNFとバイオディーゼル燃料のメディア向け試乗会が行われました。
用意されたGR86はガソリンとCNFで、まずガソリン車に試乗します。何度か乗ったことのあるGR86なので加速が気持ちいい、という感想です。
次のCNFのGR86。スタートダッシュからアクセルを全開で試してみるものの、ガソリンのGR86となんら変わらない印象。パイロンで作ったコースで、Uターン気味のコーナリングののちに、立ち上がり加速でベタ踏みしてみるも、さっきのガソリン車と何ら変わることなく立ち上がっていきます。
イメージだけで言えば、トルク感が薄いのではないか?と思っていたCNFですが、ガソリンと何にも変わらない。「これはガソリンです」「これはCNFです!」と言われても全く印象が変わらないのですから、ブラインドテストをしたら違いが分かる人なんていないのではないでしょうか?
と、トヨタの担当者の方に聞いてみると、全日本ラリー選手権の2021チャンピオン・勝田範彦選手は、良い悪いではなく、フィーリングの違いということで言い当てたとのこと。さすが1/1000秒の世界で生きているドライバーの方は違います。
それだけほぼ違いの無いCNFは、ガソリンの代替えとして十分な素質を持ち合わせていると言えます。課題は水素の製造方法と、燃料としてのコストを如何に下げていくか…ということに集中していくのではないでしょうか。
●バイオディーゼル燃料のCX-5にも試乗
CNF燃料とともに注目されているのがバイオディーゼル燃料です。3月19~20日のスーパー耐久 開幕戦・鈴鹿で行われた記者会見で、マツダの丸本社長が述べた「うちの技術者は、マツダのエンジンなら何でも燃やせると言っています」という言葉。
それを証明するかのように、富士24時間レースでMAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio concepは、食用油の廃油とミドリムシ由来の炭化水素から生成されたバイオディーゼル燃料、株式会社ユーグレナの「サスティオ」で参戦。エンジンやインジェクションにはトラブルを抱えることなく、むしろ豊富過ぎるトルクでミッショントラブルを起こすというアクシデントに見舞われるほどのパワフルさを見せていました。
そのサスティオを20%混合としたディーゼル燃料のCX-5にも試乗しました。何故20%混合なのかというと、サスティオの成分的にエンジンの電子制御の数値を変更しなくてはいけない部分があるとのことで、それらを変更することなく一般車に入れることが出来る割合が20%混合とのこと。
なお、レースマシンMAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio concepはサスティオ100%使用に合わせて制御を変更しています。
先に100%軽油のCX-5に乗り、その後にサスティオ20%混合のCX-5に乗ります。
普通の軽油とまったく変わらない加速感。ディーゼル特有の音も全く同じ。振動すらも同じです。
20%混合ということもあるでしょうが、こちらも軽油の代替えとしては何ら問題のない印象です。ただし、こちらも課題は燃料コスト。
現在のサスティオは実験プラントによる製造のため、1リッター当たり1万円という価格となります。計画中の量産プラントが完成し、製造が軌道に乗れば1リッター当たり税抜き250円まで価格を下げることが出来るとのこと。
大資本の石油会社ほどのプラントを作ることが出来れば、もっと単価を下げることは可能となるそうです。
CFNもバイオディーゼル燃料も、課題は量産と価格というところは同じです。これらが市販される場合、ガソリン税や軽油税は環境配慮ということで免税にしてほしいな、と個人的には思ってしまいます。
(写真・文:松永 和浩)
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