スポーティなスタイルに生まれ変わった308。本命のPHVはもう少し待て【プジョー308とは?】

■プジョーとは:自動車黎明期から製造を続ける歴史あるメーカー

1800年代、フランス東部のエリモンクールを拠点とした鉄製品工場を営む一家に生まれたアルマン・プジョーは、1889年に蒸気機関を搭載した三輪車をパリ万国博覧会に出品します。この三輪車は製品化こそされませんでしたが、プジョーの名を冠した最初のクルマとなりました。

アルマン・プジョー
プジョーをクルマ産業へ導いたアルマン・プジョー

プジョーは1891年にタイプ2と呼ばれるモデルを発表、すぐに改良を加えられタイプ3となります。このタイプ2およびタイプ3には、パナール・エ・ルヴァッソール社(パナール社)がダイムラーからライセンスを得て製造したエンジンを搭載していました。

パナール・エ・ルヴァッソール社もクルマを製造していて、1891年にはプジョーが5台、パナール・エ・ルヴァッソールが6台の計11台のクルマがフランスで製造されたという記録があります。

タイプ3
プジョーの行く末を決めたとも言えるタイプ3
403
パトカーにも使われていた403

フランスには前述のパナールやド・ディオンなど数社の自動車メーカーが存在していました。現在、量産を行っているメーカーはこのプジョーブランドを有するステランティスとルノーの2社だけとなります。

プジョーは1976年にシトロエンを取り込んでPSAというグループを形成、2009年にはシトロエンが以前に展開していた車種であるDSというネーミングをブランドとして立ち上げます。これにより、PSAグループはプジョー、シトロエン、DSという3つのブランドを展開していくこととなります。

2019年PSAはFCAと合併し、現在はステランティスという会社となり、プジョーはステランティスのブランドネームとなっています。

●プジョー308の基本概要:ルノーの中核を固めるCセグハッチ&ワゴン

プジョー
プジョーとは?

300シリーズは、1932年に販売が開始された301が最初のモデル。301にはサルーン、リムジン、クーペ、カブリオレ、そしてロードスターも用意されました。1936年にはラジエターグリル内にヘッドライトを収めた特徴的な顔付きを持つ302が導入されます。

302
戦前モデルの302
304
戦後の300番台最初のモデルとなる304

やがて第二次世界大戦が勃発し、シリーズの進化は一度ブレーキがかかります。次なる300シリーズは303ではなく304という名前で、1969年に登場。この304が戦後の300番台の最初のモデルとなります。

200番台のモデルはモデルチェンジのたびに203から順番に204、205と1つずつ数字が増えていきますが、300番台は少し変わっていて、304→305→309→306→307→308という順番となります。

最初の308が登場するのは2007年です。「最初の」と書いたのはその後の300番台モデルは数を足していくのではなく、308の車名のまま続くことになったからです。

304ブレーク
304にもワゴンが用意されていた

2007年に最初の308が登場した時点ではすでに107や207が存在し、プジョーのラインアップは規則性を持った(つまり100番台の数字が大きくなればセグメントが上がる)ものなので、308はボトムから3つめのセグメント。つまりCセグメントのモデルとなります。

初代308
308というネーミングが初めて使われた初代308

現在の300番台にも301というモデルが存在します。末尾の1は新興国などを仕向地に持つリーズナブルなモデルという意味で、301はCセグメントサイズのボディの新興国向けモデルということになります。

2代目308
先代にあたる2代目の308

初代308ではセダン、3ドアハッチバック、5ドアハッチバック、ワゴン、2ドアクーペ&カブリオレと多彩なボディタイプをラインアップした308ですが、2代目モデルからは5ドアハッチバックとワゴンというシンプルなボディ構成となりました。

3代目となる新型も同じく5ドアハッチバックとワゴンが用意されます。パワートレインは1.2リットル3気筒ガソリン、1.5リットル4気筒ディーゼル、1.6リットル4気筒ガソリン+モーターのPHVの3種がラインアップされます。

●プジョー308のデザイン:先代よりも迫力のある力強いデザインに変貌

308デザインスケッチ
308のデザインスケッチ

9年ぶりのフルモデルチェンジということで、先代に比べると劇的な変化がもたらされているのがプジョー308のデザインの特徴です。5ドアハッチバックのデザインを見ていきます。

フロントまわりでは先代も現行も2段構えのグリルを採用していますが、現行モデルは先代モデルにくらべて上段グリルの大きさがより大きくなったため、迫力を増したものとなりました。ヘッドライトは従来同様につり目状の配置ですが、より細く切れ長なタイプとなりました。

シグネチャーランプはヘッドライト外側から下に配置され、爪痕を意識したデザインとなっています。グリル中央にエンブレムを配置し、その内側にADASセンサーが置かれます。

308ヘッドライト
ヘッドライトから下に伸びる力強いシグネチャーランプ

ホイールベースが延長されたこともあり、サイドから見ると伸びやかなイメージが強調されました。サイドウインドウの縦横比はより細長い形状となり、Cピラーに向かって絞り込まれるようにしたことでスポーティさが増しています。

ノーズ部分のスラント角は減らされ、より垂直に近い配置となりました。対してリヤはバンパーをしっかりと張り出させた立体的なフォルムとしています。

308リヤコンビランプ
308のリヤコンビランプ。写真は未点灯状態

そのしっかりした形状のバンパーから下はブラックアウトされ、ハの字にリフレクターとバックアップランプを装着。横長のフィニッシャーが取り付けられたエキゾーストパイプはさらにその下に配置されます。

リヤコンビランプはイグニッションオフ時にはスモーク状になる処理で、イグニッションオンでライオンの爪痕を思わせる3本の赤いラインが点灯します。左右のリヤコンビランプはブラックの樹脂パーツでつながれ、ハッチ上部との境界線を形成し、より複雑な印象のリヤビューを実現しています。

2種の表皮を使い、ステッチも目立つように仕上げたシートがスタイリッシュな印象を与えるインテリアですが、なんといっても特徴的なのは直線基調で複雑な幾何学模様のように仕上げられたインパネです。

小径ステアリングのセンターパッドは相変わらず大型ですが、六角形のメッキリングを装備するとともに、ステアリングスポークも直線デザインとして引き締まり感が向上しました。このステアリングに合わすかのように、インパネ各部を直線基調としたことで、全体としてのまとまり感とシャープさを感じることができます。

●プジョー308のパッケージング:ボディ全幅は45mmも広くなった

308フロントスタイル
308のフロントスタイル

新型308に使われたプラットフォームは、EMP2 V3という名で呼ばれるもの。

もともとはPSA時代に存在したCMP(Common Modular Platform)という汎用性の高いプラットフォームの発展型、EMPとは(Efficient Modular Platform) の意味で、CMPよりも効率的なプラットフォームを目指したことがわかります。

EMP2 V3透視図
EMP2 V3の透視図。オレンジ色の配線は高電圧部分

新型308のホイールベースは5ドアハッチバックが2680mm、ワゴンが2730mm。ワゴンは先代と同じホイールベースですが、5ドアハッチバックは60mmの延長を受けました。

全長は5ドアハッチバックが4420mm、ワゴンが4665mmで、先代と比べると5ドアハッチバックで145mm延長、ワゴンで65mmの延長となりました。全幅はともに1850mmで、これはじつに45mmもの拡幅となります。対して全高は5ドアハッチバックが+5mmの1475mm、ワゴンは変わらず1485mmとなっています。

エンジン&ミッションはフロントに搭載、PHVのモーターも同様にフロントに搭載されます。燃料タンクはリヤ、PHV用バッテリーもリヤなので、動力系統は前方配置、エネルギー系統は後方配置ということになります。

●プジョー308の走り:ハンドリングはスポーティで、ディーゼルターボはしっかりしたトルク感

308走りイメージ
ワインディングでも楽しい走りを披露してくれた308

試乗会に用意されたモデルは、5ドアハッチバックのガソリンモデルとディーゼルモデルでした。ワゴンのSWとPHVについては少し遅れての導入になるとのこと。

メインで試乗したのは1.5リットル4気筒ディーゼルエンジンを搭載するスポーティモデル、GTブルーHDi。1.5リットルのディーゼルターボは、すでに先代308などほかのモデルに搭載されています。

最高出力は130馬力、最大トルク300Nmというスペックは、1.5リットルディーゼルターボとしてはかなりの高性能と言えます。8速ATとのマッチングもよく、グイグイと力強い加速を示します。

1.5リットルディーゼルターボ
1.5リットルのディーゼルターボエンジンは力強いフィーリング
1.2リットルガソリンターボを積むアリュー
ディーゼルターボに比べると若干の力不足を感じるガソリンモデルのアリュー

1.2リットルの3気筒ガソリンターボ、Allure(アリュー)も試乗しましたが、1.5リットルディーゼルターボと比べると若干のトルク不足を感じずにはいられませんでした。

1.2リットルガソリンも130馬力/230Nmのスペックを持ちます。8速ATの変速比は同一ですが、1.2リットルガソリンターボのほうがファイナルギヤを軽くしていて、トルク増大をねらっていることもあり、高めの回転数でエンジンを使うことになることもガソリンのほうが弱いイメージとなるひとつの原因でしょう。

1.2リットルガソリンターボ
1.2リットルのガソリンターボは3気筒
308アリューインパネ
アリューのインパネまわり

足まわりはかなり引き締まった印象で、ビシッとしたまとまり感のあるものです。ステアリングを切ってからクルマが向きを変えるまでのタイムラグが短く、シャープなコーナリングができます。

ステアリングホイールの径が小さいので、ハンドリングが過敏になりそうですが、そのあたりのセッティングは上手に行っています。試乗時間が短く、高速道路を走るようなクルージングはできませんでしたが、乗り心地は少し硬めの印象でした。

308ディーゼルターボ給油口
ディーゼルターボはアドブルーで排ガス浄化を行うタイプ

●プジョー308のラインアップと価格:ボディは2タイプ パワーユニットは3タイプ

GTブルー HDi
メインの試乗車だったGTブルーHDi

冒頭部分でも記述しましたが、新しい308には5ドアハッチバックとワゴンが用意されます。パワートレインは1.2リットル3気筒ガソリン、1.5リットル4気筒ディーゼル、1.6リットル4気筒ガソリン+モーターのPHVの3種がラインアップされます。

このうち、5ドアハッチバックのガソリン&ディーゼルターボが先に導入。ワゴン全車と5ドアハッチバックPHVが若干のタイムラグをもって導入されます。

グレード展開は5ドアハッチバック、ワゴンともに同一。ガソリンモデルはベーシックグレードの「アリュー」のみ。ディーゼルモデルは「アリュー・ブルーHDi」と「GTブルーHDi」の2種。PHVは「GTハイブリッド」のみとなります。

ノーズエンブレム
クラシカルプジョーの画像を確認すると、ノーズ先端に車名エンブレムがあり、今回はそのルールに従っている
GTタイヤ
18インチタイやが装着されるGT

装備面を見るとアリューはLEDヘッドライト、GTはマトリックスLEDヘッドライト。リヤコンビランプがアリューは標準タイプ、GTが3Dタイプ。シート地がアリューがティップレザー&ファブリックなのに対し、GTはティップレザー&アルカンターラ。

オーディオ関連ではアリューが標準のプジョーiコネクトであるのに対し、GTでは音声操作が可能なボイスコントロールやコネクティッドナビゲーションが追加されたプジョーiコネクト・アドバンスとなることなどです。

タイヤはアリューが225/45R17、GTが225/40R18となります。

308価格表
308の価格表

GTは専用装備として5ドアハッチバック、ワゴンともにスポーティフロントグリル、フロント&サイドスカート、フロントフェンダーライオンエンブレムを装備。ワゴンのGTにはパノラミックサンルーフ、ハンズフリー電動テールゲート、ルーフレールが装備されます。

●プジョー308のまとめ:本命はまだ入ってないPHV。決め手はボディサイズを受け入れられるか

308イメージ
かなり力強い印象となった新型の308

おそらく本命のパワーユニットは今後導入されるPHVです。しかし、欧州ではディーゼルエンジンの存在がますます厳しくなるので、ディーゼルモデルに乗れるのも、もしかしたらこれが最後になるかもしれません。

最後のディーゼルターボに乗るのか? もはや時代遅れだとディーゼルターボには乗らずPHVを選ぶのか? いやいや、普段使いでは十分なガソリンモデルに乗るのか? パワーユニット選びは悩み多き部分だと思います。

ボディタイプで見ると、5ドアハッチバックとワゴンは似ている存在です。308の場合、ワゴンはホイールベースと全長を延長したパッケージングとしています。5ドアハッチバックではユーティリティスペースがちょっと足りないと感じるなら、ワゴンを選べばそこの部分を補填できるのですが、当然取り回しはちょっと辛くなります。

308のフルモデルチェンジでの最大のポイントはボディのサイズアップとも言えますが、このサイズアップを許容できるか否か?が、308を受け入れられるか否かのポイントとなるでしょう。

(文:諸星 陽一/写真:諸星 陽一、ステランティス)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる