■見分けもつきにくいGR86
4月23日(土)~24日(日)に富士スピードウェイで行われたD1GP開幕戦。ベスト4に進出したのは2チームだけでした。
そう、TEAM TOYO TIRES DRIFTの2台とD-MAX RACING TEAMの2台が勝ち上がったからです。それぞれの2台は非常に仕様が近く、見た目も似ています。
それでは、それぞれのペアの生い立ちと異なるところを紹介しましょう。
まず、TEAM TOYO TIRES DRIFTの2台。トヨタのGR86で、まさにこのラウンドで投入された新車です。
2台とも藤野選手のファクトリーであるウィステリアで、平行して作られました。川畑選手も、以前からよく知っているチームメイトの藤野選手を信用していて、ほぼおまかせで作ったということです。
その結果、ステアリングなど細かい部分を除いて、できあがったときの仕様はまったく同じ。その後、テストで川畑選手は足まわりのジオメトリーをいろいろ試して「どうしたらどうなるのか」というデータどりをしたそうですが、結局、元に戻したということで同じ状態になっているようです。
運転のスタイルは違うのかどうかをたずねたところ、藤野選手は「けっこう違うと思う」。川畑選手は「クラッチ操作に違いを感じる。藤野センパイのほうがクラッチを踏む回数は多い」とのことですが、クルマのセッティングに関しては「通る道筋が違っても、けっきょく近いところにたどり着く」という感触だそうです。
ちなみに川畑選手のほうがややオーバーステアぎみにセットをするそうで、それも関係しているのか、川畑選手はフロントのバネが12kgf/mm、藤野選手は11kgf/mmという違いがあります。リヤのバネは同一です。
ふたりのドリフトで「速いところ遅いところの違いはあまりない」ということで、一緒に走るのはやりやすいらしく、準決勝ではキレイな接近ドリフトを披露しました。
●足まわりはけっこう違うS15シルビアの2台
D-MAX RACING TEAMの2台はS15型シルビアです。
こちらは同時に作られたのではなく、末永選手が乗るマシンが先で、横井選手が乗るマシンがあとに作られたもの。横井選手がチャンピオンを獲ったマシンを末永選手が乗り、横井選手は2020年に同じパッケージで作った新しいマシンということになります。
末永選手は今季でD-MAX3年目ですが、当初はやや苦戦していたものの、次第に成績が向上し、このラウンドでも準決勝に勝ち上がってきました。
末永選手は当初、苦戦した理由を「運転のスタイルはぜんぜん違いました。世代の違いというか、自分はDOSS(機械審査システム)になる前の運転という感じでした。それで横井選手のクルマはニュートラルな部分が少ないというか、きっちり向きを変えてアクセルを踏まないとまともに走れない。半端な操作をすると受け付けてくれなかった」と話します。
末永選手は本番車に装着されているパーツを練習用のマイカーにつけてテストを行い、その特性を理解するようになって結果が出てきたということです。ちなみに2人の運転スタイルは現在でも違いがあって、末永選手の話では「ほとんどリヤタイヤだけで走る横井選手に対して、自分はフロントをけっこう使うという感じですね」とのことです。
メカニックに話を聞いたところ「クルマの基本的なところはほとんど同じですけど、足まわりはけっこう違いますね」といいます。アームの長さやアライメントはけっこう違いがあって、「フロントのセッティングは、むしろ逆の方向にしています」といいます。
といっても、やはり仕様が近い同じクルマ2台で戦っている強みはやはりあって、「走ったときのインフォメーションを交換して情報を共有しているので、問題が起きたときの解決も早いんじゃないかと思います」とのこと。
末永選手も「自分の運転が悪いのか、クルマとコースの相性なのかの判断もつきやすいし、その問題をどうやって消すかという相談もできるので心強いです」といいます。
2台体制での参戦は、もちろん資金が潤沢にないとできませんが、やはり明確にメリットもあるようです。ただ、TEAM TOYO TIRES DRIFTの2台は、もうちょっと外から見分けがつくようなカラーリングにして欲しいですね!
なお、第1戦の単走優勝はTEAM TOYO TIRES DRIFTの藤野秀之選手。ラウンド優勝は同じくTEAM TOYO TIRES DRIFTの川畑真人選手で、D-MAX RACING TEAMの横井選手はラウンド2位、末永選手が同4位でした。
D1GP次戦は6月11日(土)~12日(日)。滋賀県の奥伊吹モーターパークで開催です。
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(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス、まめ蔵)
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