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■ちょっと違った観点からのクルマ選び
2022年も4月を迎え、新学期を迎えた学生、また就職して新社会人となった方もいらっしゃるかと思います。もっともコロナ禍も3年目に入り、大学に、会社に入ったはいいけれど、4月からいきなり在宅という、新生活の実感がいまひとつという方も増えているようです。
在宅通学(という言葉があるのか?)、在宅勤務であるなしにかかわらず、4月となれば生活環境も変わり、クルマが必要になるひとも出てくるでしょう。
東京のように公共交通機関が充実している都市部はともかく、地方に行けば最寄りの駅でも自宅から5km、電車に乗っても駅から駅まで20分という例はいくらでもあるのです。そのような方々にはどうしてもクルマは必需品になります。
今回はクルマ選びのお話。といっても、ちょっと違う観点でのお話になります。
●ブランド、装備、見映え…これら以外の観点も加えてみよう
皆さんは、クルマを選ぶ際には何を判断基準にして選びますか?
まずは予算を決めますね。そして予算に応じたカテゴリー、いわゆるクラス選び。先にカテゴリーやクラスを定め、次に予算という場合もあるでしょう。順序はどちらでもいいのですが、これらを大ざっぱに定めた上で、次は楽しいカタログ集め&眺めとなるわけです。
いま売られている新車にどのようなカテゴリーがあり、どれほどのクラスがあるかということは他でも説明があるでしょうから、ここでは論じません。
ただ、筆者はクルマを使っているひとの8割は自動車に興味のないひとたちだと思っています。クルマに興味はないけど、毎日の生活で必要だという観念の持ち主。その興味のなさたるや、「クルマなんかひとまず走りゃあそれでいい」「クルマは何でもいいけど、とりあえず家族が乗れるぶんだけのシートと人数分の荷物が積めるトランクがあれば充分」といったところでしょう。
筆者などもそのクチで、自動車が好きで自動車関連の道ばかり歩いていますが、その割に「クルマは最低限ラジオと、ひと一倍暑がりだから贅沢だけどクーラーがついてさえいればいいヤ」という人間。そしてその割に(!)、いざ選ぶとなるとああでもない、こうでもないと割り切り&往生際の悪い性格が災いして考え込むということになっています。
それはともかく、特に自動車に興味がないひとがクルマを選ぶなら、次の観点も加えてみてはいかがでしょうか。
1.不人気車から選ぶ
「不人気」に語弊があるなら、「人気薄」「知名度の低いクルマ」「関心を持たれないクルマ」といい換えてもいいでしょう。
たとえば、筆者が身分不相応に黒塗りのピカピカのレクサスLSや新型ランドクルーザーを買ったとしたら、なんだか夜中にいたずらされたり盗まれたりしそうで落ち着かなくなると思います。
レクサスやランドクルーザーは極端な例だし、そもそも自動車に無関心な人はこのようなクルマを求めはしないと思いますが、要はヘンにひと目を引くことのない、目立たないクルマを選ぶのだって悪くないのではないかということです。
自動車を知らない人でも車名からすぐイメージが湧くクルマよりは、「聞いたことがない、知らないなあ」といわれるクルマ…納車してから手放すまで、クルマは外から眺めているよりはシートに身を沈めてハンドルを握っている時間のほうが圧倒的に長いというのは筆者の持論ですが、見た目にとらわれず、車内を使いやすいように好みな姿に仕立て(クルマに興味がないにしても)て使うというのもいいと思います。
たまたまあなたがとてつもなく気に入っていたり、「欲しい!」と思っているクルマが不人気車だった場合、これほどうってつけな選択肢はありません。これは中古車を買う場合も同様です。
そしてこのようなクルマは人気車の陰に隠れていながら、乗ってみればなかなかの実力を持っているものです。「住めば都」なら「乗れば愛車」。世の中の定評とは無関係に、気に入ったクルマならあなたの日常のよきパートナーになってくれるに違いありません。
2.いまさらこんなの買ったの?なクルマ
「いまさら」の解釈はふたとおり。
「新型でもない、出てから何年も経っているクルマをいまさら?」と、「どうせモデルチェンジが近いんだから新型を買えばいいのに、じき旧型になるクルマをいまさら買うなんて?」のふたつ。
しかし登場してから年月が経っている、いわばモデル末期のクルマを選ぶ立派な理由があるのです。モデル末期のクルマは、自動車メーカーが改良に改良を重ねた後の造り慣れたクルマであることです。
新型車は3~4年、あるいは5~6年かけて開発され、その間、綿密な設計や実験、それも「そんなこと起きやしないヨ」といいたくなるようなことまで想定して、安全性を確認してから生産・発売にこぎつけます。が、それでもしょせんは人間が造るものですから見落としやミス、ノーマークでいる部分が発売後に不具合として発生し、リコールやサービスキャンペーンなどによる回収&改修がどうしても起きてしまいます。
ことに最近はクルマの不具合発生にメーカーもユーザーも敏感になっていて、以前だったらリコール告知されなかったような項目もリコール扱いされる時代になっています。ちょっと観察すると、発表直後の新型車でもリコール発表という例が多いことに気づくでしょう。
モデルライフ中盤でも末期でもリコールがないわけではないのですが、3~6年以上に渡って売られているクルマはそれだけ造り慣れているぶん、一般的には不具合発生率は低いということがいえます。つまり、製品として熟成されているのです。
いっぽう、商品としてみた場合、当然、装備類は最新モデルのクルマに比べれば数段劣っている部分もあり、ことに最近だいぶ広まった自動ブレーキやオートクルーズの機能や作動領域に差がないとはいえません。しかし多少機能差があっても、これらが皆無のクルマよりははるかにましでしょう。先進デバイスの機能の遅れがあまり気にならないという方は狙い目です。
筆者は自分でお金を稼ぐようになってから買ったクルマは中古のパルサーのほか、新車のU14ブルーバード(2000年)、ティーダ(2008年マイナーチェンジ車)、ジムニーシエラ(旧型・2018年)ですが、いずれも出たばかりの新車ではなかったせいか、買った直後に、生産開始間もないがゆえと思われるリコールには出くわしませんでした(それでもこれらのクルマにリコールがあるにはあった。)。
もうひとつ、末期モデルの場合、値引きが期待できるのもメリットでしょう。旧型になるのも時間の問題となる在庫車は、販社としては多少赤字になってでも売ってしまうことで数を稼ぎたいからです。
筆者は2000年3月当時、U14ブルーバードを車両本体価格から40万引きで買ったものです。セダン低迷で人気薄だったブルーバードこそ筆者がほしかった(クルマはセダンが基本だといまだに思っている)というのが幸いしました。
時代が違いますから、いまどき40万引きというのはないでしょうが、モデル末期、またはモデルチェンジや生産終了のアナウンスはないまでも、「おお、この形でまだ売っていたのか」というクルマをターゲットにするのもひとつです。
そして古くなったら、またその時点のモデル末期のクルマに乗り換える…。最新型車主義のクルマ好きからすると周回遅れにはなりますが、そのようなクルマ選びをするのだって間違いではありません。
いまの時期なら、4月後半~5月、6月あたりに新型化するクルマがターゲットになるでしょう。中には従来型を生産終了し、在庫車販売のみになっているクルマもあると思います。ボディカラーや装備に譲歩することのできる内容であれば、いい買いものになる可能性があります。
いまクルマの購入を検討中で、とくにマニアックな興味のない方、そして末期モデルでもいいかという方は早めに販売店に向かいましょう。
と、一風変わったクルマ選び法について書いてみました。
自動車は住宅に次ぐ高い買いもの。他人が何といおうと、ひと目や外見を気にしてクルマを買うなんて本末転倒です。自分が稼いだお金で買うなら自分の好きなモデルを買えばいいのです。ましてやクルマはこだわりを持ったら最後、あれこれ悩んで欲が出て、結局は思った以上にお金をかけてしまったということになりがちです。
自動車に興味がないのは実は幸せなことなのです。
この記事をお読みの方の中に、クルマは必要だけど特に興味があるわけではないという方がいたなら、ぜひそのままでいてほしいと思います。
(文:山口 尚志 写真:トヨタ自動車/日産自動車/本田技研工業/三菱自動車/ダイハツ工業)