オフロードの王様「LEXUS LX」に国沢光宏が試乗。NXから変わったレクサスのクルマ作りを実感!

■レクサスが「トヨタの加飾バージョン」ではなくなった?

●ランクル300ベースの「LX」、これは買い!です

レクサスLX試乗
2021年11月に登場したNX。ここからレクサスは変わった?

LXはさておき、NXからレクサスのクルマ作りが明確に変化した。

それまでのレクサスといえば、LC500以外、トヨタ車を加飾しただけ。開発担当者に「乗り心地の上質さを追求すべくトヨタより良質なダンパーを採用出来ないのか?」と聞いたら、「コストの関係で使えません」と平気で答えるクルマ作りでした。豪華に見える部分にはお金掛けるけれど、「違いの解らない顧客」からすれば、価値を見いだせないハードについちゃトヨタレベルのまんま。

クルマに詳しい人は、乗った瞬間に輸入車との差が解る。だからこそ、メルセデス・ベンツやBMWから乗り換えるような人は少数派でした。私もレクサスに乗ると失望の連続といった感じ。前述のLC500のみ「これはお金掛かってますね!」と思ったら、やはり人気(笑)。皆さん慧眼だ。

そんなレクサスながら、先日フルモデルチェンジしたNXからクルマ作りの方向を大きく変えた。見えない部分にお金を掛け、クルマの本質を追究しようとしている。

●NXのボンネットキャッチャーが2ヵ所になるって、実は凄いんです

レクサスLX試乗
NX250のエンジンルーム。前側左右にひとつずつボンネットキャッチャーが見えます

NXで驚いたのは、ボンネットキャッチャーを輸入車の如く左右2箇所にしたこと。これだけでエンジンルームの剛性感が大幅に向上している。キャッチャーが2箇所になったことを知らないで(レクサス側からの説明無し)走り出すや、「トヨタ車と全然違う!」。エンジンの写真を撮ろうとボンネット開けてびっくりです! キャッチャー2箇所にするの、工場の生産ラインから変更しなければならず、皆さんが考えるよりコスト掛かります。

●LX専用サスペンションでご飯3杯いけます

レクサスLX試乗
レクサスLX600

長い前置きになった。LXです。ベースになったのはランクル300。NXと同じく詳しい説明無しで試乗となった。走り出すとランクル300とずいぶん違う! ランクル300も良いクルマながら、さらに洗練されており、フレーム構造のクルマにありがちな「ぶるぶる&ゆさゆさ」感が無い。乗用車ベースのモノコック構造かと思えるほど。サスペンションもよく動く! フワフワした感覚なのにダンピングがしっかり効いていて気持ち良い!

レクサスLX試乗
レクサスLX600

試乗後に展示されていたカットモデルを見て「あれれ?」。ハイドロニューマチック時代のシトロエンと同じようなアキュムレータ(丸形状の蓄圧タンク)が4つ付いてる! 足回りの開発担当者に聞いたら「同じだと考えていただいて良いと思います」。バネこそ付いているものの、車重の30%程度を受け止めるだけ。残りは油圧です。丸いアキュームレーターは乗り心地領域を担当する低圧系。中には作動油とガスが入ってる。

レクサスLX試乗
LX600のシャシー部分。前後輪の間にアキュムレータが見える
レクサスLX試乗
丸いパーツがアキュムレータ。コイルスプリングの代わりに乗り心地領域を担う

減衰力をコントロールするのもこのシステム。4つのサスペンションの動きを制御出来るため、リアにはロールを抑えるためのスタビライザーさえ不要。だからこそ、後述する極悪路では見たことの無いような激しいモーグル路を走っても余裕でストロークする。もちろん、ランクル300と全く違うサスペンションです! 性能と快適性を両立すべく、LXのためだけに作ったという。クルマ好きとしちゃこれだけで御飯が3杯食べられる。

ステアリングフィールもランクル300と違うので聞いてみたら、やっぱりハードからして別モノだった。ランクル300は油圧をエンジンとモーターで作っているハイブリッド型の油圧パワステ。LXと言えば輸入車などに採用されているラックに直接モーターを組み込んだダブルピニオンアシスト式である(普通はステアリングシャフトにモーターを組み込む)。これまた質感を追求するため採用したという。やはりNX以降のレクサスって面白い!

レクサスLX試乗
サイズを感じさせず軽快で素直な挙動を示す
レクサスLX試乗
エンジンは3.5LのV6ツインターボのみの展開

ということで、一般道でLXを走らせていると大きいボディだということを意識させない。もちろん、狭い街並みや狭い駐車場に入るや「デカいな!」と思うけれど、普通サイズの道路を走っている限り、軽快だし素直な挙動だしハンドル切った時も乗用車みたい。その気になったら毎日の足にも使えるほど(健康のため歩くことを推奨します)。乗り心地は後席のみ積極的にすすめるレベルじゃないが、運転席/助手席は快適だ。

●LX、悪路は勝手に走ってくれる?

レクサスLX試乗
極悪路もらくらくこなす走破性を備える
レクサスLX試乗
ドライバーに代わってアクセルコントロールを行うクローラーのスイッチ

十分良いクルマだと思っていたら、極悪路も用意されていた。しかも今まで試乗会じゃ見たことの無いレベル。モーグルの高低差大きく、ロックセクションの石が大きい。登り下りも天候次第で走れなくなるほどの斜度と路面の質。なのに、路面のタイプをセレクトすればたやすく走破出来る! アクセルコントロールが苦手な人なら「クロールコントロール」という、悪路用のクルーズコントロールを使うとクルマが勝手に走ってくれちゃう。

レクサスLX試乗
剛健さと豪華さを兼ね備えたインパネまわり

大笑いしたのがリアシートを大きくリクライニングさせ、足はオットマンに乗せた状態での極悪路体験。「寝ながら悪路を走ることをイメージしました」という。こんな姿勢でモーグルや急斜面の登り下りを体験したことありません。「全く意味無し!」と思えるけれど、こういった遊び心がクルマ作りの奥行きです。むしろ「ランドローバーに勝ったね!」と考えたほど。中東のお金持ちはこの性能だけで買うかもしれない。マジメな話です。

レクサスLX試乗
LX600のフロントシート
レクサスLX試乗
LX600のリアシート

納期はランクル300と同じく4年程度。ただ、ロシアに販売される分が無くなれば(ランクル300生産台数の20%程度という大きい市場らしい)、3年くらいになる? いずれにしろオーダーしなければ永久に買えない。欲しいなら早めに注文した方がいいと思います。納車されるまでの間、レクサスとしちゃ様々なイベントを考えているそうな。極悪路走行体験も含まれるようです。

(文:国沢 光宏/写真:井上 誠)