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■タイヤを外したときだけでなく、普段から念入りチェックを忘れずに!
まだまだスタッドレスタイヤが必須の地域もあると思いますが、少なくとも東京は、そろそろ夏タイヤに戻そうかという時候になりました。
ついこの間、スタッドレスタイヤに替えたばかりと思っていたのですが、その作業の手間がそろそろ気になっているひとも多いのではないでしょうか。
さて、今回はそのタイヤ交換作業に伴って起きたハプニングのお話です。それも「いやあ、年の初めから参った、参った」という、おはずかしいクルマのタイヤのパンクのお話。
●普段のタイヤ確認が抱かせたタイヤパンク疑惑
少し前にまで話がさかのぼりますが、筆者が自前のクルマのタイヤをスタッドレスタイヤへの交換作業に着手したのは、忘れもしない今年2022年1月3日でした。
交換作業は、作業スペースのある実家でなければできず、本当は年末休み直後の2021年12月年内に行いたかったのですが、仕事が立て込んでいたために叶わず、10本の記事が仕上がったのは1月1日の夜でした。
実家に戻ったのは1月2日の夜で、タイヤ交換作業に入ったのは翌3日の朝。年が明けてからですから、スタッドレスタイヤへの履き替えは、普通のひとよりは遅めだと思います。
まずは少し離れた位置からクルマの周囲を1周し、あらためて異常がないかを確認したのですが、どうも右後輪が他3本に比べてわずかにつぶれ気味であることに気づきました。タイヤを手や足で押し込んだりしてみたのですが、わずかに空気圧が低く感じます。これが気のせいかも知れないにしても、見た目につぶれ量が大きいのは明らかです。
「ん…パンクか?」
ここで話はさらに前にさかのぼります。
筆者は平素、給油や消耗品の交換、タイヤ圧を確認した日などをその都度記録しています。給油から給油までどれくらい走ってどれほどの燃費だったか。これが異様なまでに上がり下がりすれば、いつ頃から何の異常がどこに発生したかを推測することができます。
ワイパーなどはごく普通の使い方でどれくらい持つか、持たないか。手入れをしながらあとどれくらい使えるか、前回のオイル交換はいつで、あれからどれくらい走っているから今が交換要か不要かなど、過去を追いながら判断ができるわけです。
で、タイヤの話。給油4~5回に1回、もしくは前回の確認からの走行距離に応じてだったりと、頻度はそのときどきで変わりますが、タイヤの空気圧チェックは普段から行っています。
これは筆者が自分のクルマを所有して以来、ずっと行っていることですが、距離の長短はあるにせよ、とにかくほぼ毎日動かしているのであれば、空気の抜けはほとんどありません。経験上、3ヵ月5000kmほったらかしにしていても、随時タイヤに刺激を与えてさえいれば自然に抜けることは少ないのです(だからといって日常のタイヤ確認を怠っていいという意味ではありません)。
これが3~4日に1回、買いものなどで往復8kmするのに使うくらい…、こういった使い方を続けているとなると話は別で、この乗り方でタイヤ圧が半分になっていたという事例を知っています。
実は気にしていることがありました。普段なら空気圧が変わらないタイヤが、2021年11月から右後輪だけ少し減っていることに気づいていたのです。筆者のクルマ(旧ジムニーシエラ)の規定タイヤ圧は、前輪が1.6km/cm2、後輪が1.8kg/cm2。
まずは車内に常備している簡単な空気圧ゲージ(バルブに押し当てると中から白い棒がピュッと飛び出るやつ)で測定。前回(8月)測定時の積算走行距離は50,474kmで、今回は52,505km。その間の走行距離2,031km。
これくらいの距離なら普段は減ることもなく1.8kg/cm2を示すはずが、1.7kg/cm2となっていました。ただし、この程度の減圧はままあることで、まあ気にかけながらも様子見ということにしました。次回の確認時に減っていなければ正常です。
ところがその「次回」となった12月30日、帰省に備えての給油時にタイヤ圧を見たら、疑惑の右後輪が1.5cm2/kgにまで落ち込んでいました。このときの積算距離は53,769km。前回測定が11月3日。
時間にして2ヵ月弱、走行距離1,264km程度での0.3kg/cm2の減量となると、さすがにだいぶ引っかかってきました。
0.1~0.2kg/cm2の落ち込みは過去に経験があるにしても、この程度の時間&距離で0.3kg/cm2も減っていたという経験はなかったからです。セルフスタンドはいつも空いている夜間に行っているので、この時点で何をどうすることもできず、補充して再度様子見。数日後のタイヤ交換時にあらためて本格確認を控えていたということもあります。
遅くとも12月31日に戻る予定だったのが仕事のせいでそのタイミングを逃し、1月2日夜、高速代を浮かすべく3時間半かけて国道で群馬県の実家に戻りました。
●案の定パンクだった
1月3日。
見た目に怪しさ漂う右後輪、ややつぶれ気味であること以外、溝の減り方の他、何も異常が見られないタイヤに「もしや…?」といよいよ疑いを抱きました。
疑いというよりも、何かが刺さっているなど、異常が起きているのはほぼ確実なので、車両状態でタイヤを確認するのはすっ飛ばし(寒い中、地面にひれ伏して車両状態でのタイヤ外周を見るのはつらかったというのもある←これもよくなかったと反省中)、ひとまずスズキ販社に電話です。
通例ならお正月3が日は休みのはずのクルマ販社ですが、さすがはスズキ、他社ディーラーと違い、新年3日から営業中!
「新年早々、いきなりすみませんが、コレコレこういうことで…」
「ならばクルマを持っといで」
と、予約のない飛び入りであるにもかかわらず面倒をみてもらえることになりました。販社に持ち込んで待つこと20分…。
「釘が刺さっていました!」
刺さっていた釘がこれです。
全長50mm弱。これがすっぽり埋まっていたようです。というよりも、釘の頭がないことから、中途半端に刺さった後も気づかず走っているうちに頭が削れていったのでしょう。
年末の時期になっていよいよ空気漏れが本格化していた段階であったにもかかわらず、帰り道の東京~群馬間約100kmの間、何事も起こることなく帰り着くことができたのには、次の行動が重なっています。
1.普段からタイヤ圧を確認し、様子見にとどめながらも11月から12月にかけてのわずかなタイヤ圧低下に気づいていた。
2.年明け1月2日夜、タイヤ圧低下が気になっていたのと、高速道路代を浮かすため、下道で帰った。
3.国道17号の、古くなってうねりができたアスファルト路面を走行中、車両後部右側が異様な揺れを示したが、このときに即、揺れが収まる程度にまで速度を落としたこと。
4.タイヤ交換作業前に、クルマの周囲をぐるり1周することで、前回のタイヤ圧確認から4日間で起きた右後輪の異様に気づいたこと。
1.で、普段から習慣的にタイヤ圧確認をしていなければ、連続的タイヤ圧低下には気づかなかったでしょう。
2.は、関越自動車道で帰るかどうか、東京・練馬の谷原交差点前に行き着くまで迷いに迷ったのですが、タイヤ圧の件があったのと、なぜかこのときは節約しようと判断したのが幸いしました。もし関越道に入り、80~100km/hで走ろうものなら、スタンディングウェーブ現象(タイヤの、接地して平らになった部分が空気圧低下によって元の形に戻らないまま回転して再度接地。これがタイヤ全周で起こることで全体が波打ち、最終的にバーストすること)を発生して横転などの大事故を起こしたかもしれません。日ごろのケチケチ精神も悪くないものです。
3.は、いつもこのエリアを通るときはそれなりに揺れるのですが、このときの揺れはいつもと違い、車両姿勢が不安定になるほどでした。後から思えばこれにはスタンディングウェーブ現象の兆候が現れていたのかもしれません。揺れを無視して速度維持していたら、バーストを起こした可能性も。
4.は、1周しなければ、タイヤ異常に気づかないままスタッドレスタイヤに交換してパンクした夏タイヤを保管していたことでしょう。
1から4まできちんと行ったからパンクに気づくことができたと、まるで手前みそのように書いています。しかし、ここまで読んで「だいたい、1.の段階でタイヤをじっくり確認するべきじゃなかったのか」と突っつかれる方もいらっしゃるかもしれません。
おっしゃるとおり。
やはりタイヤは異常に気づいた時点でじっくり眺めるのが確実です。その点、筆者もいま反省しているところなのであります。もっとも、車両状態で仔細に眺めたところで、埋もれた釘にはたして気づくことができたかどうか…。
最終的に販社ではトレッド面に空いた穴をいくらか押し広げ、広げた穴を補修材で埋めるという手法で修復。別のクルマのタイヤ交換を行う予定でもあったので自分の分は1週間後に後回しということにしました。
●統計上、タイヤのパンクは前輪よりも後輪に多い
筆者は、タイヤのパンクの目に遭うのはこれで3回め。1回目はたぶん2001年の夏頃で、U14ブルーバードの左前輪。今回と同じように目視で異常に気づき、販社に持っていったらパンクだったという流れでした。
2回目は2008年3月、ブルの次のティーダのときで、同じく左前輪。発進時、パワーステアリングであるにもかかわらず、ハンドルが異様に重かったのでクルマを降りて確認したら、完全につぶれていました。新車で納車して2週間でのパンクだったので参りました。
そして3回目が今回の右後輪。これから先々わかりませんが、いまのところ順調に所有したクルマ1台につき1回の割合でパンクと遭遇しています。
かなり前に何かの本で読んで知ったことですが、統計上、クルマのパンクは、前輪よりも後輪のほうに多く起きることがわかっています。
路面に落ちている釘なり石ころなりが、前輪を突き破ることもありますが、それよりは、前輪に蹴飛ばされた釘(石)が後ろに向かい、後輪を襲うことのほうが多いからと考えられています。釘(石)のサイズ、ホイールベース、車速、タイヤや路面の状態…これらが絡み合って後輪を直撃、パンクに至るのでしょう。
その割に筆者の場合は、時間的間隔がかなりあるとはいえ、3回のパンクのうち2回が前輪ですが、本人が気づかないうちに何かうまい方法で前輪パンクさせたのでしょう。
この、前輪がかきあげたものが後輪をも含む、クルマの床下メカに与える影響は少なくないようで、その対策の一例を挙げると、ブレーキ配管は前に向けてむき出しになっているのではなく、前輪が蹴飛ばした砂利などが配管を襲ってブレーキフルードが漏れることのないよう、なるべく何かのユニットの陰に隠すようにしてパイピングされています。
この手法はヨーロッパ車では古くから用いられていたようですが、日産自動車の場合は1960年代のラリー参戦で、ハイスピードでの走行中は、前輪が巻き上げた砂利をブレーキパイプをかじることがわかったことから、以後、ヨーロッパ車流儀のパイピングが常識になったといいます。このあたり、ラリー参戦から得られた経験が市販車に活きた一例というわけです。
というわけで、話が少し逸れましたが、普段からタイヤの空気圧および溝の状態など、普段から習慣的に行うことを怠りなくというお話でした。
スタッドレスタイヤから夏タイヤに履き替える時期になりました。履き替え作業を機に、ひとつ自分のクルマのタイヤをじっくり眺めてみてください。もしかしたら何かが刺さっていて、タイヤが「痛いよー」と泣いているかもしれません。
(文・写真:山口 尚志)