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■トップレーシングドライバー・高橋国光さんのテクニックに、超危険な最高速ドライバーを託した創刊当時のOPTION谷田部最高速テスト
●国さんドライブにより、国内初300km/hオーバー、307.69km/hを記録した真紅の光永パンテーラ
2022年3月16日昼過ぎ…、みんなに愛された偉大なるレーシングドライバー・高橋国光さんが闘病の末、空へと旅立ちました。1940年1月29日生まれ、享年82歳。
1958年に2輪レーサーとしてデビュー、1964年に4輪レースへ移行。以降のご活躍は皆さまもご存じの通り。追々、レーシングドライバーとしての国さん(以降も“国さん”と呼ばせてください)伝説は、専門家の方、近しい方に語っていただくとして…。
ここでは、私からは、国さんの違う一面を紹介したいのです。
●最高速テスト決行! ドライバーは誰に? そうだ、国さんに頼もう!
…という流れかどうかは「?」ですが、1981年に創刊したチューニングカー雑誌「OPTION(オプション)」で、当時流行りつつあったチューニングカーによる最高速テストを行うことになりました。
ステージは日本自動車研究所・高速周回路、通称=谷田部。一周5.5km、400Rを1.5kmのストレート2本でつなぐ、最大傾斜角45度のオーバルコースの設定速度は180km/h(ステアリングを直進状態で走れる)。それ以上は『コーナリング』しないと走行できないコースです。当然、危険が伴うテストになります。
そんな最高速テストをやろうとしたOPTION誌の当時スタッフは、そのテストドライバーを国さんに依頼しました。
180km/hオーバーでのバンク内コーナリングをこなせ、得体のしれない(?)チューニングカーで、しかも設定速度の猶予はとうに過ぎたスピードで走る当時のタイヤでは、何があってもおかしくありません。どんな状況になっても冷静かつ正確に対応のできるドライバーとして名が挙がったのが、国さんでした。
●1981年11月17日、最高速伝説が生まれた日。その功労者が国さん!
1981年11月17日、谷田部の天気は晴れ。チューニングカー全17台が集結し、OPTION最高速テストが行われました。
その中の1台、真紅のパンテーラのステアリングを託され、コースインする国さん。
結果は、国内初の300km/hオーバーとなる「307.69km/h」という大記録を達成しました。
それまでの記録は…このテストの4年前、1977年にフェラーリBBの出した277.99km/hがレコードだったそうなので、あっさりと29km/hも記録更新!ということ。
が、国さんのインプレッションでは「ストレート後半では多少、浮き気味だった」とのこと。怖すぎます…。
そして、この真紅のパンテーラこそ、OPTION最高速伝説として語り継がれている「光永パンテーラ」(仕様など詳しくはコチラの記事を参照ください!)です。
●常に冷静、周りを気遣い、なによりもレースファンを楽しませてくれたのが国さん!
OPTION誌での最高速テストドライバーとしても活躍いただいた国さんは、常にファンの方にレースを楽しんでもらうことを一番に考えていたそうです。
2020年、国さんが「スポーツ功労者」として文部科学省に顕彰された際、元オートスポーツ誌“名物”編集長・熊谷睦さんに寄稿いただいた記事の中に、そのエピソードのひとつがあります。
1977年F1日本GP、ティレル007でターニー・レーシングから参戦する国さんは、レース1ヵ月前の富士グラチャンレース時にデモンストレーションとしてファンの前で走行。しかし、この日はドッシャ降りの雨…。
ツーリングカーですら走行を躊躇する状況の中、国さんは1600mのストレート部はハイドロプレーニング状態でリアタイヤを空転させ、同様にノーグリップのフロントタイヤをどうにかカウンターステアを駆使して走り続けたそうです。
そして、ピットインしたところで一言。
「だって、ファンの皆さんはF1マシンが走るのを観に来てくれたのですよね」と…。
このような話は、もっとたくさんあるでしょうね。だって国さんだから!
光永パンテーラで国内最速を記録した際も、きっと国さんは、読者の皆さんへワクワクを!…と思っていただいていたのでは、と思います。
誰に聞いても国さんを悪く言う人に私は出会ったことがありません。誰もが国さんとのエピソードを面白楽しく話す方ばかりです。
国さんの訃報を知らされたとき、いちファンとして本当にビックリしてしまい、闘病されていることは承知してはいましたが、誤報であって欲しいと願いつつも…。
国さん、本当にお疲れ様でした。そして、レースファン、OPTION読者のことを楽しませてくれてありがとうございました。
心より哀悼の意を表します。
※高橋国光さんの「高」は「はしごだか」が正式です。
(元OPTION編集部・永光 やすの)
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