■パンク修理剤を使うと本格修理が不可能になることも
JAFのロードサービス出動理由でもっとも多いのがバッテリー上がりですが、その次に多いのがタイヤのパンクや空気不足。2021年のゴールデンウィークの出動件数は、じつに9000件弱(四輪、二輪合計)で約20%にもなります。
自分でスペアタイヤに交換するのも面倒だし大変、そもそもどうやっていいかわからない…という人も多く、今やパンクでもロードサービスを呼ぶことが多いそうです。
とはいえ、ロードサービスを待っているのは時間の無駄、自分でどうにかしたいと思っている人も多いことでしょう。
以前はパンクしたらトランクからジャッキと工具、そしてスペアタイヤを出してタイヤ交換をするというのがパンク時の対処方法でしたが、今はスペアタイヤを積んでいるクルマも少なくなっています。
そうしたクルマはパンク修理剤とエアコンプレッサーが積まれていることが多く、パンクの際にはパンク修理剤を使えばいいと思っている人も多いようです。
●パンク修理剤の使用は応急処置が原則
多くの人が勘違いしているのは、パンク修理剤を使ってパンク修理をすれば、タイヤショップがガソリンスタンドでパンク修理したのと同じように、次にパンクするまでやタイヤの山がなくなるまで使えると思っている人が多いことです。
パンク修理剤はあくまで応急処置に使えるもので、タイヤショップがガソリンスタンドで行うパンク修理のように恒久的に効果を発揮するものではありません。また、場合によっては使ったことで予想外の大出費となる可能性もあります。
パンク修理剤は粘性のある液体でタイヤ内部に充填することで内部に広がって、パンクの原因となった穴に入り込んで空気が漏れるのを防止します。しかし、比較的早めに(場合によっては数kmの走行で)その効果を失います。
パンク修理剤を注入したタイヤをゴムパッチやスティックで物理的に修理する際は、タイヤをホイールから外してホイール内部とタイヤ内部を洗浄してから行うのですが、穴の部分にパンク修理剤の成分が残留していると修理のための加硫剤(ゴム糊と考えていいです)が働かずに修理ができないことがあります。
このため、パンク修理剤を注入したタイヤは廃棄、新品に交換ということになり、出費がかさみます。
パンク修理剤は騒音防止のために内部にスポンジが貼り付けてあるタイヤや、タイヤ空気圧センサーが付いているタイヤには使えません。
スポンジ貼り付けタイプのタイヤに使うとパンク修理剤をスポンジが吸い込んでしまい効果が発揮できません。タイヤ空気圧センサーを装着している場合は、空気圧センサーが故障します。純正のタイヤ空気圧モニターは、ABSセンサーから車輪速を計算する換算値なので故障しないものが多いのですが、タイヤ内部の空気圧を直接計測しているタイプの場合はセンサーが故障します。
後付けの場合はセンサーとモニターがセット販売でセンサーのみの販売が行われていないことも多く、全部を買い換えて運が悪いと4輪セットし直しとなり出費がかさんでしまいます。
多くのパンクは急激に空気が抜けることはありません。空気をポンプで足しながら走って、タイヤショップやガソリンスタンドに駆け込むことが賢明です。そのためにも、エアポンプとタイヤ空気圧ゲージは携帯しましょう。
急激に空気が抜けるときはパンク修理剤でチャレンジ。それでも対応できない場合はロードサービスを呼びましょう。
サイドウォールに異物が刺さっている、タイヤが裂けている、タイヤがホイールから外れかかっているといった状況や、車重が2トン以上あるクルマはパンク修理剤が使えませんので、ロードサービスを呼ぶことになります。
また、高速道路や自動車専用道路でのパンク対応は危険なので避けましょう。非常駐車帯にクルマを止めて、救助を求めます。
その際、止めたクルマは左にハンドルを切っておきます。万が一追突された際に走行帯にクルマが飛び出しづらくするためです。乗員はクルマの中には残らず、ガードレール外側のできるだけ道路から離れた場所に避難しましょう。
(文・写真:諸星 陽一)