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■構造とデザインを両立する新型フレーム
「デザインとハンドリングのヤマハ」。昔からヤマハ発動機(以下、ヤマハ)のオートバイを表現する際に、そんな言葉がよく使われます。
これは、ヤマハのモデルには秀逸なデザイン性を持ちつつも、ライダーが自在に操れる機能性も両立していることを意味しており、伝統的なヤマハ製オートバイの特徴と言われています。
そういったヤマハが長年培った設計理念が活かされているのが、同社のe-バイク(スポーツ電動アシスト自転車)、YPJシリーズ最新作の「クロスコアRC」と「ワバッシュRT」です。
クロスコアRCは、通勤・通学、普段の買い物など、シティユースをメインに人気が高いクロスバイクのスタイルを採用。
一方のワバッシュRTは、オンロードとオフロードでの快適性や走破性を実現する、グラベルバイクという新ジャンルのスタイルを取り入れているのが特徴です。
これら2モデルは、コンセプトこそ違えどスタイリッシュなフォルムを実現しつつも、しっかりとした走行性能も合わせ持つことは同様。特にフレームには、どちらもモーターサイクルメーカーであるヤマハのデザイン造形理念を継承した次世代デザインが採用されています。
見た目がすっきりとしてオシャレなだけでなく、しっかりと剛性や重量バランスが最適化されているのです。
ここでは、そんなクロスコアRCとワバッシュRTという、ヤマハの新型e-バイクに採用された秀逸なデザインについて紹介しましょう。
●ダウンチューブにバッテリーを内蔵
クロスコアRCとワバッシュRTには、いずれも「ハイドロフォームド・フレーム」と呼ばれる新型のフレームが採用されています。
大きな特徴は、ダウンチューブ内に500Whクラスの大容量バッテリーを挟みこむ形で搭載していること。
また、ダウンチューブ内部は閉断面を持つツインチューブ構造とし、電装部品のハーネスやワイヤー、ホースなどを閉断面の間にある凹みにレイアウト。これらにより、全体的にすっきりとして、洗練されたデザインとなっています。
従来型のYPJシリーズ、たとえばMTB(マウンテンバイク)モデルの「YPJ-XC」や、ロードバイクのスタイルを採用する「YPJ-EC」などでは、バッテリーがダウンチューブの上部に外付けされています。
それらに対し、新型2モデルはバッテリーが目立たず、極太のダウンチューブによりアグレッシブな雰囲気も醸し出します。
加えて、こうした新構造はジオメトリ(フレーム寸法)、フレーム剛性、重量バランスの最適化にも貢献。クロスコアRCとワバッシュRTが持つ、快適な乗り心地や、どんな道でも走りきれる高い走行性能の実現に反映されているのです。
さらに、バッテリー搭載位置の下にあるドライブユニットカバーも、機能形状をフォローした造形とすることで、全体の構造体として取り込んだデザインを採用。これにより、2モデルの流れるようなスタイリングの演出に貢献しています。
●機能を犠牲にしないデザイン
ヤマハの開発者によれば、こうしたデザインのコンセプトは、元々2020年7月に発売されたYPJシリーズのフラッグシップモデル、MTBタイプの「YPJ-MTプロ」の設計理念に基づいたものだといいます。
ハードなオフロードやダウンヒルなどに対応するこのモデルには、メインフレームの上下(トップチューブ/ダウンチューブ)が、それぞれ2本に分かれた構造の「ヤマハ・デュアルツインフレーム」を採用。バッテリーをダウンチューブに内蔵したヤマハ初のモデルです。
YPJ-MTプロでも、目的は、適正な剛性の確保や、車体の重量バランスの最適化による、操縦性や取り回し性の向上。
今回の新型2モデルでは、トップチューブとダウンチューブは2本に分かれておらず、それぞれ1本ずつで構成されている点が違いますが、基本的な理念は同じなのです。
さらに、ヤマハの開発者は、クロスコアRCやワバッシュRTに採用した新型フレームは、配線などを内部にレイアウトさせながらも、「限界まで絞り込んだ」デザインにすることで、「構造とデザインをうまく融合させる」ことに注力。
そして、この発想こそが、ヤマハが長年作り続けてきたオートバイの「造形理念を継承したもの」だといいます。
「機能を犠牲にせず、デザインする」。こうしたプロダクトデザインに関する豊かな造りが、クロスコアRCとワバッシュRTにも活かされているんですね。
●車体カラーにもコダワリあり
ちなみに、デザインと同様に、購入動機の大きなファクターとなる車体カラーにも、それぞれコダワリがあるといいます。
まず、ワバッシュRTでは、セレスタイトブルーの1色を設定。アウトドアでの遊びやレジャーなどを提案するこのモデルらしい、大自然によくマッチする色調ですね。
ヤマハの開発者によると、このカラーは、「無駄のない機能進化とヤマハ発動機らしいワクワク感を表現したもの」なのだとか。彩度が低めのブルーとブラックの塗り分けにより、それらを表現しています。
一方、クロスコアRCには、ピュアパールホワイト、フレイムオレンジ、ミスティグリーンの3色を用意。これらはいずれも自由なライドシーンを連想させる「遊び心ある世界観」を演出したものだといいます。
街での普段使いから郊外へのレジャーまで、さまざまな用途で使えることで今大人気のクロスバイクが持つ、「気ままで自由」なイメージにピッタリなカラーばかりですね。
なお、これら2モデルの価格(税込)は、クロスコアRCが31万7900円、ワバッシュRTが43万8900円。いずれも、2022年3月10日(木)に発売されます。
(文:平塚 直樹/写真:堤 晋一、ヤマハ発動機)