新ブランド「ヒョンデ」のライバルは、トヨタや日産のクリーンエネルギー車【週刊クルマのミライ】

■現代自動車が「ヒョンデ」ブランドにあらため日本上陸

すでに話題となっているように、2022年2月8日に韓国系の大手自動車メーカー「現代自動車」が日本での乗用車販売を再開することを発表しました。

これまでも存在感を示していた観光バス事業のほうでは「ヒュンダイ」という読み方のブランド展開をしていましたが、乗用車販売のリスタートに合わせて「ヒョンデ」という新ブランドに生まれ変わると発表したことも、その本気度を示すとして注目を集めています。

日本に導入するのはBEV(電気自動車)の「アイオニック5」と、FCV(燃料電池車)の「ネッソ」というゼロエミッションビークルだけに絞り、さらにスマートフォンの専用アプリを使ったオンライン販売からメンテナンスまで一括管理するシステムを構築すると発表したことも注目のポイントです。

従来型のビジネスモデルではなく、新しいユーザー層を狙っているといえます。

●電気自動車「アイオニック5」を日産アリアと比べると

HYUNDAI_IONIQ5
ヒョンデのBEV「アイオニック5」の価格帯は479万円~589万円。クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は最大80万円が期待できる

しかしながら、ヒョンデはゼロエミッションビークルを付加価値商品として割高な価格で売ろうとはしていません。

むしろ、国産メーカーよりもリーズナブルな価格設定としています。輸入車ではありますが、完全にライバルは国産メーカーです。

BEVで比べてみましょう。

ヒョンデ・アイオニック5の価格帯は479万円~589万円となっています。さらに輸入車としては初めて給電機能を搭載したことでクリーンエネルギー自動車導入促進補助金は、国産モデルの最高額と同じ80万円が期待できます。

アイオニック5には後輪駆動と四輪駆動が用意され、バッテリーは総電力量58.0kWhと72.6kWhの2種類があります。そして、後輪駆動の72.6kWhモデルの一充電走行距離は618kmで、メーカー希望小売価格は549万円です。

こうしたスペックを同じようなSUVスタイルの日産アリアと比べてみると、お買い得感のある設定となっていることがわかります。

アリアの66.0kWhバッテリーを搭載するFWD(前輪駆動)グレード「B6」の一充電走行距離は470kmで、メーカー希望小売価格は539万円です。アリアも最大80万円の補助金が期待できるのは同じですから、アイオニック5はアリアから10万円高で、航続距離が3割増しといえるわけです。

単純にコストパフォーマンスで比べたときにアイオニック5は際立っているのです。

さらにいえば、アイオニック5のエントリーグレードは58.0kWhのバッテリーですが、一充電走行距離は498kmを誇り、メーカー希望小売価格は498万円です。

アリアより40万円以上安くて、アリアより航続距離が長いのです。

スペックだけでクルマを選ぶわけではありませんが、こうした要素を見比べてみると完全にライバルは国産車といえるのです。

●燃料電池車「ネッソ」は実質的にMIRAIよりお買い得

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燃料電池車「ネッソ」の価格は776万8300円。イメージ画像が右ハンドルになっているのも本気の証

同じ事はFCV(燃料電池車)の「ネッソ」にもいえます。

ヒョンデ・ネッソのメーカー希望小売価格は776万8300円。水素タンク一充填での航続距離は820km、前輪を駆動するモーターの最高出力は120kW、最大トルクは395Nmとなっています。

FCVのライバルとして思い浮かぶのはトヨタMIRAIですが、MIRAIのスペックは、エントリーグレードで一充填航続距離が850km、後輪を駆動するモーターのスペックは134kW・300Nmで、メーカー希望小売価格は710万円です。

この数字だけ見比べると、ネッソは性能のわりに割高に感じるかもしれませんが、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金を考慮すると話は変わるのです。

MIRAIの補助金が最大140万3000円なのに対して、ネッソは210万5000円が期待できます。

補助金を考慮すると、ネッソは圧倒的にコスパに優れたFCVになるのです。こうした補助金を実現している背景を考えれば、ヒョンデが日本市場の様々な環境を研究しつしていることをうかがわせます。

さらにいえば、日本仕様は右ハンドルで、ウインカーレバーも右側につく、完全な日本仕様に仕上げているというのも市場ニーズを考慮している証でしょう。

本気で日本市場を攻略しにきていることを感じさせる新生「ヒョンデ」。

納車は2022年後半からとなる模様ですが、ゼロエミッションビークルのムーブメントに乗って、どこまでシェアを広げていくか要注目です。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也

山本晋也 近影
日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。