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■「Type R」のキャラにすぐに気づいたようです
「普通のクルマじゃつまらないですものねぇ」
彼女が何気なく発したそんな言葉そのものが彼女の生き方を反映している、といってもいいんじゃないかと思います。
彼女は普通車の免許をAT限定ではなくマニュアルで取得しました。それだけじゃなく、大型二種まで持っています。ちょっとした……いやかなりの運転好きです。
そんな彼女にとっても、ホンダ「シビック Type R」は“普通じゃないクルマ”と受け止められたようです。シビックといえばちょっとスポーティな“普通のクルマ”ですが、「Type R」となった瞬間にキャラは大きく変わります。
●FF最速!?
開発の狙いは量産FF車最速、「Type R」はその称号なのです。
その尺度となるのは、ドイツにある全長約20kmと超ロングサーキットのニュルブルクリンク。
スポーツカーの聖地と言われるいっぽう、森に囲まれた過酷なコースレイアウトから「グリーンヘル(緑の地獄)」ともいわれる峠道のようなサーキットで、量産FF車としてトップのラップライムを叩き出すことを宿命づけられたクルマなのです。
●悲劇のヒロイン的クルマ
本当はシビックType Rの圧勝……のはずだったのですが、メガーヌR.S.がリヤシートや自慢の四輪操舵システムまで外して通常モデルに対して130㎏も軽量化した“大人げない仕様”を投入してきたことで、ニュルブルクリンクで強引にトップタイムをマーク(949万円とベース車の倍の価格ながらそれをしっかり販売したのは偉い!)。
そこでType Rは反撃のために、後期モデルでブレーキや冷却性能をブラッシュアップしてメガーヌR.S.にリベンジを果たす予定だったのですが……、世界がコロナ禍となってしまったことでタイムアタックはできずじまい。
さらに、後期モデルは生産自体もコロナによるロックダウン影響を受けたことで、発売前に枠が埋まった限定車「Limited Edition」はもちろん、限定でもない普通の仕様まであっという間に完売してしまったのでした。
ある意味、悲劇のヒロインのようなモデルなのです。
「普通のクルマじゃつまらない」
彼女はクルマにロマンを求めるタイプでしょう。だからこそ彼女は、このシビックType Rがドラマのようなストーリーを背負っていることに薄々気が付いているのかもしれません。
(文:工藤 貴宏/今回の“彼女”:あいみ/ヘア&メイク:有本 昌代/写真:ダン・アオキ)