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■リアル開催だからこそ痛感できたモノばかり
やっとこさ引いたかと思えば、またぶり返すコロナの波。それがじわじわと迫り来る中、2022年の東京オートサロン2022はなんとかリアルで行うことが出来たというのが、主催側としての正直な気持ちではないでしょうか。
今年の参加者人数は12万6869人だったそうです。コロナ禍直前の2020年が33万人余だったことを考えれば強烈な凹みようですが、これは消防法で定められた収容定員の50%で催行することがあらかじめ定められていたため。
さらに入場券のデジタル化や当日販売の取りやめによる人数管理、追跡アプリの登録を必須としたり再入場を禁止したりと、感染防止の策はあの手この手で講じられていて、会場ではソーシャルディスタンスの確保を促す札を掲げたスタッフがあちこちにいました。
●コロナ禍の不便あれどクルマ好きは詣でる「東京オートサロン」
感心したのは、そういう不便を強いる開催にも参加者が文句も言わず従っていたことです。
そもそも、決まり事に縛られるのが嫌いというヤンチャさんも多数いらっしゃったとは思うのですが、皆々がしっかりマスクを着用し、大音量のBGMも我慢して大声も控えながらブース運営していたのをみるに、東京オートサロンはクルマ好きに大事にされているなぁとしみじみしてしまいました。
そういえばトヨタの豊田社長も、知名度もなかったGazooブランドを最初に受け入れてくれたのは東京オートサロンの来場者だったとプレスカンファレンスで仰ってましたね。
これらの策を講じ参加者が協力したこともあって、今年の東京オートサロンはコロナ感染のクラスター的なものはなかったと聞いています。
さらに、見る側としては、ゆったり静かに会場を回れたという印象があります。なんならしゃがみ込んで足回りや腹底を覗き込んでも迷惑にならない、こんな環境で展示車をじっくり眺めることができたのは前世紀までだったような気がします。
●ボンネット開放の意気込み
その20世紀に晴海〜ビッグサイトで開催されていた頃までの東京オートサロンの空気感を色濃く残しているのが、現在の幕張メッセの西館と呼ばれる1〜3ホールではないでしょうか。
他館がドレスアップの色合いが濃い展示が多いのに対して、西館は踏んでナンボの走ってナンボというチューニング文化の継承を目の当たりにできる、そんな雰囲気です。
たとえば、他館ではドアやテールゲートを開けて内装をみせているクルマが多いのに対して、西館はボンネットが開いているクルマがやたらと多い。そんな光景を階上から眺めつつ、思わずニンマリしてしまいます。
そんな西館の展示をみるに、やっぱり初代86/BRZに対する業界の期待値の高さが感じられました。やたらと高値安定の中古車価格も、新型登場でちょっとでも落ち着いてくれれば若いユーザーにもチューニングベースとして楽しんでもらえそうです。
中古車サイトを覗くとMT車の物件数は1200台くらいと、ロードスターも抑えてスポーツモデルとしては最大勢力。なんだかんだでトヨタの息がかかると分母がみるみる大きくなるもんですね。
●新型フェアレディZの晴れ姿
と、その西館にブースを構えていた日産は、新しいフェアレディZの日本仕様を初お披露目しました。
同社の新型車発表が東京オートサロンの場で行われるのはR34スカイラインGT-R以来というから、ざっくり四半世紀ぶりということでしょうか。
日本においてチューニングを根付かせた立役者はと問われれば、やっぱりL型エンジンを搭載した初代Zが思い浮かぶ身としては、その晴れ姿を西館でみられたことに目を細めてしまいました。
果たして来年の東京オートサロン2023は思い思いにイジられた新型Zが何台並ぶことになるのやら、楽しみにしていようと思います。
(文:渡辺 敏史/写真:会田 肇:小林 和久・萩原 文博・アップガレージ・諸星 陽一・工藤 貴宏・角田 伸幸)