おいしそうな見た目にお間抜け顔、そしてビックリな6ローターが私の見かけたベスト3【東京オートサロン2022】

■美味しそうなオレンジケーキ、間抜け顔キャンパー、そして6枚せいろのロータリー

東京オートサロン2022をブース歩いているうちに見つけた3台をピックアップし、順位をつけるというミッション。

ありました、ありました。私の心に刺さった3台が! 順位づけは難しかったけど、それぞれ個性あふれる3台を紹介します。

●ベスト3:FAFビーチバン(フォレスト・オート・ファクトリー)

FAFビーチバン
どうです? ものすごく美味しそうに見えませんか

ひと目見て「美味しそう!」と感じたのがこのFAFビーチバン。内側の濃いクリーム色、下側の淡いクリーム色、上側のオレンジ色という組み合わせは、スフレをベースにマスカルポーネのムースを塗って、その上にオレンジゼリーをあしらったようにしか見えません。

甘すぎず、ちょっと酸っぱい風味を持った極上のケーキです。

そんな美味しそうなクルマの正体は、スバル360(それも超レアなバン仕様)をベースとして、ウッドを多用したドレスアップを施したモデル。

FAFビーチバンにウッドが多用されるのは、2019年に千葉県を襲った台風19号で多くの木々が倒されたことで、木の大切さを感じたからとのこと。緑多き地にガレージを構えるフォレスト・オート・ファクトリーらしいクルマ作りです。

●ベスト2:COMMERキャンパー(RANGERS)

COMMERキャンパー
こんな目が離れた感じのクルマ、日本にもありましたよね

人間、見たことないものを見ると感動するものです。旅をして楽しいのは、そうした見たことのないものが見られるからにほかありません。

そして旅をしていてもうひとつ楽しいのが、原風景に出会ったときです。東南アジアの田舎町などを旅していると「そうそう、日本も昔はこうだったよねー」と感じることがよくあります。

そんなふたつの要素が詰まったモデルが、英国車専門店のRANGERSが展示したCOMMER(コマー)のキャンパー。コマーは1979年までイギリスに存在した自動車メーカーで、大型のトラックやバスなどを得意としたいすゞのような会社でした。

このクルマが心に刺さったのは、コマーという、名前しか知らなかった会社のクルマであること。なんとも間抜けなキュートさをもった顔付きは、子どものころに見た丸目のヘッドライトを持つトラックを思わせる懐かしさを感じたからです。

●ベスト1:A-RF BILET 6ROTOR COSMO(ロータリーエキシビション)

A-RF BILET 6ROTOR COSMO
遠くからみても、エンジンルームが異常な感じが伝ってきます

カツ丼もおいてあるタイプの町場のそば屋だと、もりそばの大盛りがあるものですが、ちょっと名の通ったそば屋だと、もりそばは「せいろ」などと呼ばれて、多めに食べたい人は大盛りにせずに複数枚を注文するものです。

レシプロエンジンはボアアップによって大盛りにできますが、ロータリーエンジンの場合は1ローターの排気量はアップできず、ローターを増やしていくことになります。つまり、せいろを重ねるようなものです。

マツダが製造していた市販車に搭載されたロータリーエンジンは、2枚重ねが基本で、ユーノス・コスモにだけ3枚重ねがありました。

A-RF BILET 6ROTOR COSMO エンジン
いいですねー。このたたずまい、どんな音で回るのか? どんな乗り味なのか? ぜひとも味わってみたい6枚重ねです

このユーノス・コスモは2枚重ねのロータリーエンジンを搭載していたモデルに、6枚重ねのロータリーエンジンを搭載してしまった仕様です。

よくもまあ、こんなものを作ったもんだ…。

ですが、こういう自由さ、こういうバカらしさ、こういう変態らしさ、こそが東京オートサロンのスピリッツ。なので、この6ローター・コスモが私のベスト1です。

諸星 陽一

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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