前2輪・後1輪の3輪バイク・ヤマハ「LMW」のさきがけ【ヤマハ トリシティ125・概要編】

■これがヤマハLMWの一番機!

トリシティ125
トリシティ125は全長1980mm、全幅750mm、車両重量164kg。水冷4ストローク4バルブSOHC単気筒124ccエンジンを搭載したマシンです

LMW(リーニング・マルチ・ホイール)は「傾いて旋回する三輪以上の乗り物」を意味するヤマハの登録商標。ここで紹介する前2輪×後1輪の3輪モビリティ、トリシティ125は、そのさきがけとなったプロダクトです。

ヤマハが3輪モビリティの開発に着手したのは、半世紀ほど前の1970年代のこと。

当時、東京・青山にあったオフィスでは、デザイナーたちがひそかにさまざまな3輪モデルを考案・試作していました。そして1976年には、早くも3輪LMWに関する特許出願が行われています。

トリシティ125
原付スクーター パッソルをベースにフロントを2輪化した3輪モビリティの試作機。このイラストでは省かれていますが、当時の写真には、試作段階からすでに前カゴがついているものもあり、実用的なコミューターとして構想されていたことがうかがい知れます

その後、ヤマハは2007年の東京モーターショーで4輪モーターサイクルのコンセプトモデル「Tesseract(テッセラクト)」を発表。そしてフロント2輪の3輪LMW発売へと、着実に歩を進めてゆくことになるのです。

●トリシティの誕生

トリシティ125
ライダーが支えていなければ2輪同様に倒れてしまう独特の3輪モビリティ。コーナリング感覚は2輪そのもの、でも異様なまでの安定性! それがトリシティ125の走りです

トリシティが世界で初めて市場に姿を現したのは、2014年4月のタイ王国。

そして同年9月には、トリシティ125の名で日本国内販売が始まりました。2015年にはABS仕様が追加され、2017年にはトリシティ155の国内販売がはじまりました。

その後も845ccエンジンを搭載した大型スポーツタイプのLMW、NIKEN(ナイケン)が2018年に、300ccクラスのトリシティ300ABSが2020年に発売されるなど、ヤマハのLMWファミリーは順調な広がりをみせています。

●ヤマハLMWの核心、パラレログラムリンク

トリシティ125
LMWを象徴するパラレログラムリンク。左右両輪をつなぐ平行四辺形のリンケージが、ふつうの2輪車とほとんど変わらないナチュラルな操縦感覚を実現します

トリシティ125をはじめ、ヤマハのLMWがフロントまわりに採用しているのが、パラレログラムリンクと呼ばれるリンク機構。その名のとおり、正面からみると、リンケージが平行四辺形を形作って動いているのがわかります。

このパラレログラムリンクと左右独立の片持ちテレスコピックサスペンションを組み合わせた独自の「LMW機構」により、トリシティ125は、深いバンク角とステアリング切れ角、路面変化に強いすぐれた操縦安定性を手に入れたのです。

トリシティ125
フロント2輪がもたらす優れた旋回性能や直進安定性、制動能力、広い視野…。トリシティ125には、2輪車を凌駕する高性能が詰め込まれています

ちなみにLMWの開発者は、この複雑で革新的なリンク機構のアイディアを、割り箸と輪ゴムで作った小さな模型を使って練り上げていったそう。

まだ見ぬ未来の乗り物を、お昼のお弁当に添えられているような、ごくふつうの割り箸で生み出してしまったなんて、なんだか日本のモノ作りの真髄をみるようなエピソードですよね。

トリシティ125
まったく新しい乗り物、LMWの先陣を切って市場に現れたトリシティ125。そのユニークな走りは1970年代から続いた長い開発の歴史の結晶です

トリシティ125のライディングの楽しさは、バイクによく似てはいても、実はまったく新しい感覚といっていいものです。

一度もバイクに乗ったことがない人に、バイクのフィーリングを丸ごと伝えることができないように、残念ながら私の筆だけでは、LMWの感覚をすべて伝えきることはできそうにありません。

でも、このインプレを通して、皆さんをトリシティ125の魅力の入り口にまではお連れしたいと思います。記事を読み終えたら、ぜひ実際に触れ、実際に走って、この新しいLMWを体感してみてくださいね。

【ヤマハ トリシティ125 主要諸元】
全長×全幅×全高:1980mm×750mm×1210mm
シート高:765mm
エンジン種類:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
総排気量:124cc
最高出力/最大トルク:9kW/1.2kgm
燃料タンク容量:7.2L
タイヤ(前・後):90/80-14・130/70-13
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ(ABS)
メーカー希望小売価格:42万3500円(税込)

(写真・イラストレーション:高橋 克也/文:村上 菜つみ

【関連リンク】

ヤマハ トリシティ125 Official Site
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity/

村上菜つみさんがヤマハ・トリシティ125で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2022年1月号(12月6日発売)に掲載されています。

モトチャンプ2022年2月号

この記事の著者

村上菜つみ

村上菜つみ 近影
福岡出身・東京在住のモデル&モータージャーナリスト。ツーリング雑誌での編集経験を経て独立し、二輪・四輪問わず幅広い分野で執筆中。「月刊モトチャンプ」連載中の「ぶらり二輪散歩」で使用したバイクのインプレッションを毎月6日(モトチャンプ発売日)に公開する他、乗り物関連の展示を紹介する「村上菜つみのミュージアム探訪」をシリーズ連載しています。愛車はホンダ・モビリオスパイク&ホンダ・VTRです。