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■これがヤマハLMWの一番機!
LMW(リーニング・マルチ・ホイール)は「傾いて旋回する三輪以上の乗り物」を意味するヤマハの登録商標。ここで紹介する前2輪×後1輪の3輪モビリティ、トリシティ125は、そのさきがけとなったプロダクトです。
ヤマハが3輪モビリティの開発に着手したのは、半世紀ほど前の1970年代のこと。
当時、東京・青山にあったオフィスでは、デザイナーたちがひそかにさまざまな3輪モデルを考案・試作していました。そして1976年には、早くも3輪LMWに関する特許出願が行われています。
その後、ヤマハは2007年の東京モーターショーで4輪モーターサイクルのコンセプトモデル「Tesseract(テッセラクト)」を発表。そしてフロント2輪の3輪LMW発売へと、着実に歩を進めてゆくことになるのです。
●トリシティの誕生
トリシティが世界で初めて市場に姿を現したのは、2014年4月のタイ王国。
そして同年9月には、トリシティ125の名で日本国内販売が始まりました。2015年にはABS仕様が追加され、2017年にはトリシティ155の国内販売がはじまりました。
その後も845ccエンジンを搭載した大型スポーツタイプのLMW、NIKEN(ナイケン)が2018年に、300ccクラスのトリシティ300ABSが2020年に発売されるなど、ヤマハのLMWファミリーは順調な広がりをみせています。
●ヤマハLMWの核心、パラレログラムリンク
トリシティ125をはじめ、ヤマハのLMWがフロントまわりに採用しているのが、パラレログラムリンクと呼ばれるリンク機構。その名のとおり、正面からみると、リンケージが平行四辺形を形作って動いているのがわかります。
このパラレログラムリンクと左右独立の片持ちテレスコピックサスペンションを組み合わせた独自の「LMW機構」により、トリシティ125は、深いバンク角とステアリング切れ角、路面変化に強いすぐれた操縦安定性を手に入れたのです。
ちなみにLMWの開発者は、この複雑で革新的なリンク機構のアイディアを、割り箸と輪ゴムで作った小さな模型を使って練り上げていったそう。
まだ見ぬ未来の乗り物を、お昼のお弁当に添えられているような、ごくふつうの割り箸で生み出してしまったなんて、なんだか日本のモノ作りの真髄をみるようなエピソードですよね。
トリシティ125のライディングの楽しさは、バイクによく似てはいても、実はまったく新しい感覚といっていいものです。
一度もバイクに乗ったことがない人に、バイクのフィーリングを丸ごと伝えることができないように、残念ながら私の筆だけでは、LMWの感覚をすべて伝えきることはできそうにありません。
でも、このインプレを通して、皆さんをトリシティ125の魅力の入り口にまではお連れしたいと思います。記事を読み終えたら、ぜひ実際に触れ、実際に走って、この新しいLMWを体感してみてくださいね。
【ヤマハ トリシティ125 主要諸元】
全長×全幅×全高:1980mm×750mm×1210mm
シート高:765mm
エンジン種類:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
総排気量:124cc
最高出力/最大トルク:9kW/1.2kgm
燃料タンク容量:7.2L
タイヤ(前・後):90/80-14・130/70-13
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ(ABS)
メーカー希望小売価格:42万3500円(税込)
(写真・イラストレーション:高橋 克也/文:村上 菜つみ)
【関連リンク】
ヤマハ トリシティ125 Official Site
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricity/
村上菜つみさんがヤマハ・トリシティ125で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2022年1月号(12月6日発売)に掲載されています。