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■本当に実在した幻の初号機
2022年で創立120周年を迎えるイギリス伝統のバイクメーカー・トライアンフモータサイクルズ(以下、トライアンフ)が、1901年に製造したバイクのプロトタイプを発見!
実はこのモデル、存在自体は長い間ウワサになっていたのですが、実物はトライアンフですら所有しておらず、「幻のバイク」といわれていたものです。
それが、最近、ビンテージトライアンフの第一人者であるディック・シェパードさんという人が発見し、本当に実在することが明らかになりました。
120年ぶりに世に出たお宝ビンテージバイクを紹介しましょう。
●ベルギー・ミネルバ製エンジンを搭載
今回、その存在が明かになったトライアンフの1901年製プロトタイプは、同社が1902年に市販車第一号を世に出す前に作られた試作バイクです。
バイクといってもベースは自転車で、かつてベルギーにあったミネルバという自動車メーカーが製造したエンジンを、トライアンフが製作した車体に搭載したものです。
要は、日本でもかつて販売され、特に1950年代から1960年代頃に一世を風靡した「モペット」と呼ばれるペダル付きバイクと同じですね。
現在の原付バイク、原動機付自転車の元祖ともいえるモペットは、ペダルを漕ぐとエンジンがかかり、自転車よりも楽に移動できるのが魅力。今の電動アシスト自転車みたいな感じで(法規上は原付免許が必要)、手軽に乗れる日常の足として、当時大きな人気を得ていました。
●販促のために作られたバイク
この1901年製プロトタイプは実際に発売はされなかったようですが、1900年代の広告などには載っていて、前述の通り長い間その存在はウワサになっていました。トライアンフによると、製作した理由は「当時のトライアンフ製モーターサイクルへの一般の人々の関心と需要を高めるため」といいますから、今でいう販促用バイクだったのでしょう。
このバイクが発見された経緯は、前述の発見者シェパードさんによると「最近亡くなったコレクターの友人から、古いトライアンフ車の査定を依頼」されたところ、そのバイクを見て非常に興奮したのがきっかけだとか。
理由は、「最初期に生産されたトライアンフバイクにはない、ユニークなディテールを備えている」ため。そこで、ひょっとするとこのバイクは、それまで幻とされていた1901年製プロトタイプではないかと思ったようです。
そこで、エンジンを製造したミネルバの記録を調べ、1901年の初代トライアンフ搭載エンジン番号を洗い出したところ、このバイクのエンジン番号と一致。間違いなく伝説のバイクであることが証明されたといいます。
●生産100万台記念バイクと同時展示
このバイクは、トライアンフの本拠地、イギリス・ヒンクレーにある本社内ファクトリー・ビジター・エクスペリエンスで、現地時間の2021年12月14日に開催するイベントで、一般にお披露目されるとか。
なお、イベントでは、トライアンフが生産した100万台目のバイクも同時展示されるそうです。
2021年12月1日にトライアンフが発表したこのバイクは、アドベンチャーモデルの「タイガー900ラリープロ」をベースに、ワンオフのカスタムペイントが施されたスペシャルバージョン。
1901年の初号機と最新モデルを同時に披露するこのイベントで、トライアンフは120年の長い歴史をファンに体感してもらう意向のようです。
(文:平塚 直樹)