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■カーボンニュートラルとモータースポーツの両立を可能とするアプローチのひとつ
●マシンは実績あるNOPROのメンテナンス
マツダがスーパー耐久に参戦することを発表しました。マシン名は「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」というもので、パワートレインは従来のディーゼル(SKYACTIV-D)のまま、燃料に100%バイオ由来の次世代バイオディーゼルを使うことで、環境問題とモータースポーツという一見すると相反する要素を両立させるのが狙いです。
ボンネットに大きく「NOPRO」のロゴが入っていることからもわかるように、マシンメイクなどのサポートにおいては2015年からデミオ・ディーゼルでスーパー耐久を戦っている野上プロジェクトが全面協力しているといいます。
初参戦となるスーパー耐久レースin岡山では、NOPROでの参戦実績も豊富な井尻 薫 選手をAドライバーに据えるなど、本気で勝ちにいっている体制と感じられます。
ただし、マツダが次世代バイオディーゼル燃料を使って参戦するのは、デミオ・ディーゼルのエントリーしているST-5クラスではなく、自動車メーカーが実験車両を走らせるためのST-Qクラスです。
このクラスでは、モリゾウこと豊田章男 氏がドライバーを務めるORC ROOKIE Racingのカローラスポーツ(水素エンジン車)が有力マシンで、そのライバル誕生といったところでしょうか。
●次世代バイオディーゼル燃料とは?
さて、マツダが利用する次世代バイオディーゼル燃料は、ユーグレナ社から供給される「サステオ(SUSTEO)」です。
ユーグレア社は、横浜市の製造実証プラントによりバイオディーゼル燃料を自社生産しています。その主な原料は、事業所や家庭で使用されたのちに回収された使用済み食用油と、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)等の微細藻類となっています。
このバイオディーゼル燃料は一般での使用も前提としているため、今回のレーシングマシンにおいてもエンジン自体は特別な改造を施していないといいます。つまりディーゼルエンジン車オーナーであれば、将来的なカーボンニュートラルでの運用が可能になるということを、このプロジェクトは証明しようとしています。
市販に近い状態のディーゼルエンジンということで、排気管からCO2は排出しますが、食用油の原料である植物も、微細藻類ユーグレナも、基本的には光合成によって成長しています。つまり、燃料を使用した際のCO2の排出量が実質的にはプラスマイナスゼロとなるカーボンニュートラルとしてカウントできるということです。
バイオディーゼル燃料を使ったチャレンジは、今回のスポット参戦で終わるわけではなく、2022年シーズンのフル参戦を前提としています。
電動化時代に直列6気筒エンジン(ガソリン/ディーゼル)を新設計するなどエンジンにこだわるマツダ。それ自体はニッチ戦略という印象もありますが、カーボンニュートラルへのアプローチとしてバイオディーゼル燃料が有効であると証明できれば、マツダの商品戦略が一気にメインストリームに躍り出るかもしれません。
次世代の主役となるためにはNOx対策などのレベルアップも必要となるでしょうが、そうした部分においてもモータースポーツを活用して、どんどん進化させていくことを期待したいものです。