初志貫徹! MAZDA CO-PILOTの原点は2014年にあった【週刊クルマのミライ】

■ドライバーの意識喪失に対応するコンセプトは7年前からブレていない

●安全安心なクルマ社会の実現はマツダの願い

MAZDA CO-PILOT
高速道路でドライバーに異常が発生すると車両の自動運転技術によって車線変更を行い、路肩に停止する

マツダが「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」という新しいテクノロジーを発表しました。

CO-PILOTというのは副操縦士のことです。つまり、なんらかの運転支援システムに関する技術であると想像できます。はたして、どのようなユーザーにメリットがある技術となっているのでしょうか。

シンプルに結論をいえば、ドライバーを常に監視しておいて、万が一居眠りや疾病によって意識を失ってしまったときに安全にクルマを停めるという先進安全技術となります。

こうしたドライバー異常時対応システム自体は、一部の市販車には搭載されていますが、それらは高速道路での利用を前提としています。

しかし、マツダの調査によると急な体調不良による交通事故は、その95.8%が60km/hで起きているといいます。脳梗塞や心臓麻痺などによるクルマの暴走は、その多くが一般道で起きているというわけです。

疾病によるドライバーの意識喪失を原因とする交通事故を減らそうと思ったら、どこを走っていようと、またドライバーが機能をオンにしなくとも、いつでもどこでも安全にクルマを停める安全装備が必要になります。

そうして、交通事故のない安心安全なクルマ社会を願うマツダが生み出したのが「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」というわけです。

●MAZDA CO-PILOTはCX-60/CX-80に搭載予定

MAZDA CO-PILOT
ワインディングロードを楽しんでいる最中に体調不良に襲われたとしても安全な場所に停車するのがMAZDA CO-PILOT2.0の実力だ

現時点では技術コンセプトであり、プロトタイプはMAZDA3ベースで作られていますが、市販車の初搭載は2022年にデビューする予定のマツダCX-60、CX-80という6気筒エンジンを積むラージクラスのSUVに搭載されることも同時に発表されました。

素の段階では、高速道路では路肩に退避、一般道では車線上で緊急停止するMAZDA CO-PILOT 1.0と呼ばれる機能が実装予定となっています。

その後、2025年にはドライバー異変の予兆を検知でき、退避能力についても高めたMAZDA CO-PILOT2.0がローンチされる予定です。

いずれにしても、それほど遠い未来の話ではなく、間もなく市販される技術といえるでしょう。

それにしても、MAZDA CO-PILOT2.0のプロトタイプの動きを見ていると、ドライバー異常対応システムが緊急停止しているというよりは、高度な自動運転技術が実現していることが見て取れます。

マツダが公開している動画はワインディングを走行中にドライバーが意識喪失したというストーリーで、複雑に曲がりくねったワインディングロードをスムースに走り切った上で、駐車スペースにクルマを停めて、ヘルプネットによって救助を支援するという流れになっています。

その走りっぷりは、完全に自動運転レベル3と呼べるものです。

●運転を楽しむことをマツダは最優先する

MAZDA CO-PILOT
公開されたプロトタイプはMAZDA CO-PILOT2.0相当の機能を持つためセンサー類を多数積んでいる。2022年にローンチ予定の1.0は追加センサーなしで実現する予定だ

しかし、MAZDA CO-PILOT CONCEPTは自動運転技術ではありません。マツダにとって運転の主役はあくまでもドライバーであり、運転支援システムはCO-PILOT(副操縦士)としてドライバーをサポートする機能のとどまっています。

自動運転が可能な技術レベルにあっても、高度運転支援にとどめるのはマツダのこだわりです。

それはマツダの自動運転テクノロジーをウォッチしてきた人にとっては驚くことではないでしょう。

たとえば、本サイトでも2014年のCEATEC JAPANにマツダが展示した自動運転テクノロジー『i-ACTIVSENSE INTEGRATED』についてレポートしていますが、その中で次のようにマツダの自動運転の未来について記しています。

高精度GPSを利用した自動走行により、ドライバー不在でも走ることが可能なテストカーですが、けっして無人走行を目指しているわけではありません。

“Be a driver.”をコーポレートメッセージに掲げるマツダらしく、その目的は、運転する歓びを高めることにあるのです。マツダの誇るトップテストドライバーの走りを再現できる能力が与えられていて、同乗しているだけでもスポーツドライビングが楽しめるともいいます。

将来的には、実際にドライバーが操作している裏側で、そうしたトップドライバーの自動走行モードを常に”走らせておいて”、ドライバーの操作がミスにつながりそうな状況になると、自然にフォローするようなサポート制御を考えているといいます。

また、ドライバーが体調不良などで運転できない状況に陥った際には、安全な場所にクルマを停止させるといった機能も考慮した自動走行機能を目指しているということです。

MAZDA CO-PILOT CONCEPTでは、機械が仮想運転をすることでドライバーの体調が急変した際に、シームレスに運転を引き継げるようになっていますし、安全に停車させるために自動運転テクノロジーを利用するというのも2014年に示した通りの未来となっています。

まさに初志貫徹で先進運転支援テクノロジーを進化させてきたといえます。

マツダは人が運転して元気になることを目指しています。MAZDA CO-PILOTは頼るものではなく、あくまで運転支援であることを間違って理解するとマツダが描く未来を見誤ってしまうでしょう。

今回の発表ではドライバーが正常なときの運転支援についての言及はありませんでした。しかし2014年の記事を見ればわかるように、CO-PILOT機能がスポーツドライビングをアシストする機能についてもマツダは考えているはずです。

もしかすると、CO-PILOTがドライバーを鍛えてくれる、そんな未来がやって来るのかもしれません。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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