内燃機の終活にぜひ!史上最強の後輪駆動、電動化と無縁5.2L V10のランボルギーニ・ウラカン「STO」現る!【Lamborghini HURACAN STO試乗 by 渡辺 敏史】

■全開が前提!ランボルギーニ・ウラカンSTO

●電動化? 知らん! V10はブン回してナンボ!!

世界の自動車業界を駆け巡るパワートレイン電動化の波。それはスーパーカーカテゴリーでもいよいよ例外ではなくなってきました。

今年はマクラーレンがアルトゥーラ、フェラーリが296GTBを発表。共に新開発の120度バンクを持つ3L V6ツインターボにモーターを組み合わせたハイブリッドユニットを搭載…と、さながら電動化元年の様相です。

裏腹に、大排気量の自然吸気マルチシリンダーエンジンが追いやられる中、ランボルギーニもアヴェンタドールの販売終了に伴い、ご本尊のミッドシップ12気筒がいよいよ電動化への舵を切ったと言われています。

ランボルギーニ・ウラカンSTO
ランボルギーニ・ウラカンSTO、富士スピードウェイに現る!

とあらば、もう一方のスポーツカーラインであるウラカンの動向も気になるところ。そんなタイミングで上陸したのが、史上最強のウラカン「STO」です。

その意は、スーパートロフェオ・オモロガータ。ランボルギーニのカスタマーレーシング部門であるスクアドラ・コルセが参戦サポートする、ウラカンのワンメイクレースがスーパートロフェオ。オモロガータはイタリア語でホモロゲーションという意味です。すなわち、スーパートロフェオやGT3車両開発で得られたノウハウを投入した、公道走行ホモロゲ取得済みのロードゴーイングレーサー、それがウラカンSTOのコンセプトということになります。

最大の特徴は、レースフィールドの知見を最大限に反映したエアロダイナミクスでしょう。フロント周りはバンパー、フェンダー、ボンネットを一体成型としたカーボン製のカウル、コファンゴ(イタリア語でボンネット+フェンダーを表す造語)で象られ、レーシングマシンと同機能のエアダクト類が配されています。ちなみにこのカウルは前ヒンジでガバッと開く方式で、どことなく往年のミウラを思わせるディテールです。

また、リアフェンダーも剥離のスムーズさを狙って形状が最適化されているほか、リアバンパーとディフューザーもレーシングモデルと同様の風の抜けを狙ったデザインとなっています。

スワンネックタイプのステーに支えられるリアウイングは、内側のフラップの仰角を三段階で切り替えられ、最もゲインの高い状態では280km/h時に480kgのダウンフォースが得られるとしています。また、シャークフィンタイプのバーチカルウイングは旋回時の安定性を高めるとのこと。

これらもレースフィールドからのフィードバック…と、二輪的な表現をすれば、さながらレーサーレプリカのような徹底再現ぶりといえるでしょう。

ランボルギーニ Huracán STO
ランボルギーニ Huracán STOの5.2L V10直噴ユニット

このリアセクションに収まるのが5.2L V10直噴ユニットです。スペック的にはウラカンEVOに準ずるところにあり、640psの最高出力は8000rpm、565Nmの最大トルクは6500rpmで発揮。そしてレッドゾーンは8500rpmからと、今時分では滅多に見かけなくなったブン回してナンボの特性となっています。

ウラカンには4WDもありますが、STOの駆動方式はRWDで、そこに4WDモデルでも採用される同相1度、逆相0.5度のリアステアを組み合わせるという独自の組み合わせです。

ステアリングの6時位置に付く赤いドライブモードセレクター「アニマ」によって選択できるのは、あらゆる場面でパフォーマンスを最適に引き出す「STO」、ウェットコンディション用にマージンが取られた「ピオジア」、クローズドコース用にギリギリまで攻め込んだ設定となる「トロフェオ」の3つです。ちなみにアニマは魂、ピオジアは雨、トロフェオは優勝杯のそれぞれイタリア語。出自の主張が強いのが、今日のランボの特徴です。

●下手ッピが乗っても安定した走りが可能

ランボルギーニ Huracán STO
ランボルギーニ Huracán STOの安定した走りに驚いた!

富士スピードウェイでの試乗では、ボクのようなヘタレのために最もダウンフォースが得られるウイングのセットで送り出してもらいましたが、それでも相手は640psのミッドシップ・リアドライブのクルマです。気を抜けばどこに飛んでいくかわからない…と思いつつ、じわじわと探るようにアクセルを踏んでいったのですが、その安定感にまず驚かされました。

速いクルマでは恐怖でしかない高速の300Rのみならず、接地面が不穏に変化するダンロップシケイン後の連続コーナーでも、車体はペトッと張り付くように安定しています。ボディコントロールの介入を統合的にフィードフォワードで制御するLDVIの手助けはもちろんのこと、ここでも明らかに効果を発揮しているのはエアロダイナミクスです。

これだけずしんと安定しているのに、操舵応答はビビッドで旋回そのものはすらっすらの軽さ。

ランボルギーニ Huracán STO
ランボルギーニ Huracán STOのタイヤはBSポテンザスポーツ

ここで奏功しているのは、ボディパネルの約75%をカーボン化するなどして得られたウラカンシリーズ最軽量の体躯と、リアステアがゆえの回頭性の良さによるコンビネーションでしょう。ちなみに装着タイヤはブリヂストンのポテンザスポーツ。欧州販売銘柄で、極端なサーキット志向ではなく、ウェット性能などにも配慮された、S007に近いキャラクターに仕上がっているそうです。ボクの記憶が確かならば、ランボルギーニ認証となるブリヂストンはディアブロ時代のエクスペディア以来ではないかと思います。富士の連続走行でもブロック飛びや著しい熱ダレなどの症状はなく、安定したパフォーマンスをみせてくれました。

最後のセッションでは伸び伸びと走ることも出来ましたが、その時にホームストレートでマークした最高速は、メーター読みで289km/h。ブレーキングポイントの手前でマージンを取って減速開始しての数字ですから、プロが最終コーナーからきっちり組み立てていけば300km/hの大台に乗せちゃうんでしょうね。

ランボルギーニ Huracán STO
サーキット生まれサーキット育ち、ランボルギーニ Huracán STO

この際に感心させられたのは、240km/hくらいから向こうの速度の乗り方に空気の壁が感じられないこと。普通だったら明らかに伸びが鈍る領域を通り過ぎても、するするーっと速度が上がっていく。ダウンフォースだけでなく、空気の抜けがいいことが伝わってきます。

にしても、何より記憶に鮮明に刻まれたのは、やっぱりV10ユニットの得もいえぬメカノイズやエキゾーストサウンドです。そろそろ内燃機の終活を考えておこうかという富裕層の皆様におかれましては、検討するしかないと太鼓判を捺せる1台でございます。

(文:渡辺 敏史

◼️SPECIFICATIONS
車名:Lamborghini Huracán STO(ランボルギーニ ウラカンSTO)
全長×全幅×全高:4547×1945×1220mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1339kg
エンジン:V10 90度 IDS + MPIデュアルインジェクション
排気量:5204cc
最高出力:470kW/8000rpm
最大トルク:565Nm/6500rpm
駆動方式:RWD 後輪駆動 機械式セルフロッキング・ディファレンシャル
トランスミッション:7速LDF デュアルクラッチ・トランスミッション
サスペンション:アルミニウム製ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:油圧式デュアルサーキット・ブレーキシステム 6P(F)/4P(R)アルミキャリパー
タイヤ F/R:ブリヂストン・ポテンザ 245/30R20/305/30R20
0→100km/h加速:3.0秒
0→200km/h加速:9.0秒
最高速:310km/h
車両価格(税込):37,500,000円(予定)