■都市部での急な降雪に対応し、耐摩耗性や燃費性能にも配慮
都市部を中心に、日本の街中に溶け込んでいるトヨタの「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」。車いすの乗降スロープが改良されるなど、すべての人に使いやすいタクシーとして開発されています。
横浜ゴムは「JPN TAXI」向けのオールシーズンタイヤ「TAXI TOURING A/S(タクシー・ツーリング・エーエス)」を全国で本格発売すると発表しました。
同タイヤは、2020年12月から国際自動車向けに発売されていて、2021年11月から全国販売されます。発売サイズは、185/65R15 88Hの1サイズで、価格はオープンプライス。
近年、都市部では大雪による事故が社会問題化するなど、急な降雪への対応はタクシーにとっても重要です。
「TAXI TOURING A/S」の開発・販売の背景には、ハイヤー・タクシーへの冬用タイヤの装着ルールが厳格化していることがあり、事業者にとってスタッドレスタイヤの購入、シーズンごとのタイヤ交換、使用しないタイヤの保管など、タイヤに関わる手間やコストの増加も課題になっています。
オールシーズンタイヤは、ドライやウェット路面はもちろん、突然の降雪による雪道まで1年を通じて使用できるため、こうした課題の解決に貢献することができます。なお、深雪や凍結した路面ではスタッドレスタイヤの装着が推奨されています。
横浜ゴムは、東京の国際自動車とともに約2年をかけて「TAXI TOURING A/S」を共同開発してきました。「TAXI TOURING A/S」は、オールシーズンタイヤとしての雪上性能、ウェット性能、ドライ性能を確保しながら、タクシー用タイヤに求められる耐摩耗性能の向上を追求。
トレッドパターンには、横浜ゴムの高度なグルーブ・サイプ技術が採用され、イン側はウェット性能、センター部は雪上性能、アウト側はドライ性能を発揮する専用の非対称パターンが開発されています。さらに、「5ピッチ・バリエーション」が優れた静粛性を発揮するそうです。
コンパウンドは、マイクロシリカの配合および末端変性ポリマー(コンパウンドの母体となるゴムの分子鎖末端部に、シリカ分散性を向上させる官能基を有する特殊ポリマー)と、複数のポリマーの最適配合により、雪上性能とウェット性能を高次元で両立させながら燃費性能にも配慮されています。
また、プロファイルを正方形化することで、接地面積の最大化も図られています。乗員数や荷物の量で荷重が変化しても均一な接地圧を保持し、偏摩耗を抑制。
サイドウォールには、サマータイヤよりも積雪路を走行できる証である「M+S(マッド&スノー)」規格のマークが打刻されています。加えて、国際基準で定められたシビアスノータイヤ条件にも適合し、欧州で冬用タイヤとして認証された証である「スノーフレークマーク」が打刻されています。
同商品は高速道路の冬用タイヤ規制時にも対応。なお、チェーン規制の場合は、どんなタイヤ(スタッドレスタイヤを含む)にもチェーン装着が必要です。
横浜ゴムでは、ウィンタータイヤでは世界的に需要が高まっているオールシーズンタイヤの開発にも注力していて、乗用車、バン・小型トラック用から大型トラック・バス用まで、幅広い商品を販売しています。「TAXI TOURING A/S」もこうした戦略に沿うタイヤになっています。
(塚田 勝弘)