トヨタがスバルと共同開発の電気自動車「bZ4X」を発表!トヨタのゼロエミッションへの姿勢が見えてきた!!

■ゼロを超えた価値を意味するbZシリーズの先頭バッターはスバルと共同開発

●トヨタのアプローチは実用的で持続可能なこと

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10年・24万kmの走行を経ても、バッテリー性能は90%を維持することを目指している

トヨタが、スバルと共同開発を進めてきた新型BEV(電気自動車)である「bZ4X」の詳細を発表しました。

発売時期は2022年年央、世界各地でいっせいにローンチするということです。現時点では価格については言及されていませんが、ボディサイズやバッテリー総電力量、モーター出力といった主要なスペックが明らかとなりました。

そうした具体的な内容を見ていく前に、トヨタのBEVに対するスタンスを整理しておきましょう。これまでトヨタはBEVには距離を置いているように見えました。エンジン(ICE)にこだわっていく意思も見せていましたし、燃料電池車(FCV)こそミライがあると主張していると感じられる面もありました。

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バッテリー総電力量は71.4kWh。一充電航続距離はFWDで500km前後、AWDは460km前後

そもそも、BEVなどのゼロエミッション車が求められる背景は何でしょうか。目的はカーボンニュートラルの実現(実質的なCO2排出量をゼロにすること)です。そのために、トヨタは「プラクティカル(実用的)&サステナブル(持続可能)」をキーワードにしています。夢のようなテクノロジーを実現しても、それが普及しないのでは意味がないというわけです。

BEVにおいてユーザーが我慢を強いられるようではサステナブルなモビリティとはいえません。また、バッテリーの劣化により走行距離がすぐに短くなるようでは実用的でもありません。

そうした課題をクリアできる目途がついたから、トヨタはBEV専用のbZシリーズを立ち上げたのでしょう。

●beyond Zeroという思いを込めた名前

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デザインテーマは「Hi-Tech and Emotion」。先進性と美しさの融合を狙った造形だ

「bZ」というシリーズ名称には「beyond Zero(ゼロを超えていく)」というメッセージが込められています。ゼロエミッションであれば良し、というのではなく、BEVのネガを消しつつ、BEVらしい走りを実現することを目指して、BEV専用プラットフォームをスバルと共同開発したのです。

より具体的にいえば、安心して安全に乗れるBEVが開発目標だったといいます。

最大の安心要素は航続距離で、とくに暖房によって電費が悪化するという冬場の実用的な航続距離を確保すると共に、バッテリーの劣化を抑えることで長く乗り続けられることを目指しています。実際に使ってみないとわかりませんが、トヨタによれば10年・24万kmを走ってもバッテリーの性能は90%が維持されているといいます。まさに安心して使うことができるBEVといえるでしょう。

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ボディサイズは全長4690mm・全幅1860mm・全高1650mm。車両重量はFWDで1920kg、AWDは2005kgとアナウンスされる

床下に搭載されるリチウムイオン電池の総電力量は、71.4kWhと発表されました。

駆動モーターは、オーソドックスな交流フロントモーターのみとなるFWD(前輪駆動)と、前後にモーターを配した4WDを用意しますが、FWDの一充電航続距離は500km前後、4WDでは460km前後になるということです。

ユニークなのはシステム最高出力で、FWDで150kW、4WDでは160kWとなっています。モーターが二つあれば倍の力を発揮できるように思うかもしれませんが、バッテリーの能力によってピーク出力は決まってきます。このあたり、エンジン車であっても駆動方式によって出力がさほど変わらないのと同様です。

●太陽光発電により走ることも可能

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スバルと共同開発したBEV専用プラットフォームは走行性能を重視したもの

なお、4WD制御についてはスバルのSUVでおなじみ「X-MODE」が搭載され、SUVらしい走破性を実現しているというのも注目でしょう。

いまどきの新型車ですから、ミリ波レーダーと単眼カメラをフュージョンした「トヨタセーフティセンス」など先進運転支援システムを搭載するのは当然ですが、安全面で気になるのはバッテリーです。

リチウムイオン電池は衝撃によって発火することは知られていますが、bZ4Xのバッテリーはクロス骨格を採用することで、衝突時に電池パックが影響を受けないよう守られています。また冷却用のクーラントは電気を通さないようにすることで、万が一の破損時にも漏電せず、発火を防ぐことが考慮されています。

さらに電池コンディションを常に監視することで異常発熱の兆候を検知するという機能を実装している点も注目でしょう。こうした機能は、バッテリーの安全性を確保するだけでなく、ロングライフ化にも貢献すると考えられます。

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ソーラーパネル装着車をオプション設定。条件次第だが、一年間で1800km走行に相当する発電が可能だという

トヨタらしい安全へのこだわりは、これまでのBEVと一線を画すといえ、BEVの新しい安全基準となりそうです。

災害対策やレジャー対応として、給電機能を持たせているのも特徴でしょう。このあたりは、トヨタのハイブリッドカーにおける豊富な経験が活かされています。

とはいえ、BEVの外部給電というのはバッテリーに溜めた電力を放出するだけで、単に大きなモバイルバッテリーでしかないという見方もあるでしょう。しかし、トヨタbZ4Xは違います。ルーフにソーラーパネルを装着するグレードを設定、太陽光で発電した電気は駆動用バッテリーに充電することができるというのです。

その能力は驚くべきもので、一年間で1800km走行ぶんに迫るといいます。

使い方や条件にもよりますが、平均的なユーザーであれば年間走行距離の1割~2割に相当する発電能力を持ったBEVなのです。

●トヨタ初を連発、ユニークなコクピット

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中国市場向けにステアバイワイヤを前提としたワンモーショングリップのステアリングを採用予定だが、日本仕様はひとまずオーソドックスな丸形ハンドルとなる

bZ4Xのバッテリーそのものを家庭用の電気ストレージとして活用するV2H(ビークル・トゥ・ホーム)にも対応することが考慮された設計となっているのも見逃せません。太陽光発電システムを自宅の屋根に設置しているユーザーであれば、電力コストにおいてもメリットが享受できるというわけです。

そして、bZ4Xがチャレンジングなモデルあることはコクピットが象徴しています。

トヨタ初となるダイヤル式シフトや、手の持ち換えを不要としたグリップタイプのステアリング(ステアバイワイヤ前提)の採用。さらにステアリングの上から覗き込むようなトップマウントメーターもトヨタ初の装備となっています。

操作系では、ワイパーやエアコンを音声でコントロールできるというのは、いかにもBEVらしい未来的な装備といえます。スマートフォンを利用したデジタルキーも用意されているということです。

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全長は小型車サイズに収まるが、エンジンがないことで、ひとクラス上の広さを持つキャビンを実現

まさしく、トヨタが満を持して生み出したといえるbZ4X。まずはミドルサイズのSUVからスタートしましたが、bZシリーズはフルラインナップ展開する予定ということです。

10年後でもバッテリー性能を90%確保するという、劣化を抑えた設計が市場に評価されれば、トヨタは一大BEVメーカーとして世界に認識されていくことになるかもしれません。

山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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