■官能的な不整脈
「能ある鷹は爪隠す」じゃないけど、本気を出せば凄いのに、普段はそれを隠しているのが最近の超高性能車のおもしろいところ。アウディRS Q3スポーツバックだってそうだ。
走行モードセレクターを「RSモード」にすれば、その瞬間に排気音が大きく鋭くなって猛獣に変身する。その時の野太い排気音はなかなかのもので、思わず表情が緩んでしまうほど。
そのうえ電子制御サスペンション装着車であれば足の動きも引き締まって、走りがシャープになる。
しかしながら、普段は音も静かで、乗り心地も快適。こうして彼女とデートしていたって、乗り心地の不満は何も出ない。そんな二面性に、日常使いのスポーツカーとして助けられている部分は多い。
それにしても、アウディの5気筒ターボエンジンは不思議だ。官能的なのだ。ちょっと不整脈っぽい音、回転が高まるときの脈打つ鼓動、レスポンスの鋭さと高回転のパンチ力。
運転好きを刺激するスポーツユニットとして文句の付け所がない。
構造的には、アウディR8やランボルギーニ・ウラカンが使っている排気量5.0LのV10エンジンに近いところがあるとかないとか。
そう言われればなんだか納得できる。真実はわからないけど。
●超高性能ワゴン
いっぽうで、助手席の彼女は快適で満足そうだ。Q3は新型になって、外装も内装もクオリティアップが著しい。特に内装は、「小さなアウディだからこのくらいかな」といった空気を感じたが、新型はそういう雰囲気を一切感じない。高級感が断然違う。
「赤のアクセントがカッコよくてオシャレだね。スエードみたいな生地(アルカンターラ)も上質だし」と彼女。インパネをはじめ室内にステッチなど差し色として赤がコーディネートされ、シートの一部やトリム、ステアリングはアルカンターラ張りになっている。
RS Q3スポーツバックに乗り始めて思うのは、この類のクルマはかつての超高性能ワゴンのポジションに相当するんじゃないかな、ってこと。室内もある程度広くて、荷物も十分積めて、そのうえとても快適。加えて、本気を出せばかなり速い。
これ1台ですべてをまかなおうとするクルマ好きには、最強の選択肢となる1台じゃないだろうか。
彼女とドライブしながら、そんなことを考えていた。(おしまい)
(文:工藤 貴宏/今回の“彼女”:久保田 杏奈/ヘア&メイク:塩野 みのり/写真:ダン・アオキ)
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