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■「都会的かつ堂々としたプロポーション」を目指し登場したカローラクロス
1966年の誕生以来、グローバル累計販売台数5000万台を超えたトヨタのカローラに、シリーズ初のSUVとして発売された「カローラ クロス」。すでにヒット作の予感がする同車について、ここではデザインの特徴をじっくり検証してみたいと思います。
●日本市場専用の「顔」
2020年7月にタイで発表された同車のデザインコンセプトは、「アーバン・アクティブ」。「都会的かつ堂々としたプロポーション」を目指したとされますが、新興国市場でも広く受け入れられるべく、極めてオーソドックスなシルエットが印象的です。
フロントから見てみると、全面メッシュのグリルで被われた海外仕様と異なり、カローラのエンブレムを添えたアッパーグリルを日本市場用に新設しています。
後付けか?と思いきや、フェンダーからのラインに沿うよう造形されていて「取って付けた感」を極力カット。少なくとも、顔中メッシュの海外仕様よりは落ち着きがあります。
これで「キーンルック」的な顔となったワケですが、特徴である大きなアンダーグリルでは、周囲を縁取る金属調の「枠」が実に目立つところ。チョットやり過ぎ?とも思えますが、多くのユーザーに「豪華だなぁ」と思わせるこうした手法に、トヨタの巧妙さが感じられます。
●やっぱり目立つ特徴は必要?
サイドビューですが、リアに向けて緩やかに下るルーフは滑らかでスッキリしています。ガラス上部に施されたメッキモールは、これもまた質感を確保する手段のようで、車名が刻まれたリアエンドも含め、やはり多くのユーザーの満足度を上げそうです。
で、問題の前後フェンダーです。前後ランプから伸びるラインを矢印のような曲線で「止めた」独特の表現について、皆さんはどんな感想をお持ちでしょうか?
効果としては、大きなフェンダーラインを急激に止めることで、フェンダーの抑揚そのものを強烈に誇張しています。真横から見ると、前後のフェンダーラインは高さが若干違っているのですが、止めてしまえばとくに整合性をとる必要もありません。
とにかく特徴が欲しかった、と思わせる造形ですが、これは他の部分にも見て取れます。実はドア面をよく見ると、微妙なラインがカーブを描いるのです。なぜそこに線を引く必要があったのかは不明ですが、これは最近のトヨタにはよく見られる表現です。
最後にリアビューですが、サイドに回り込んだ横長のランプのシンプルさが意外なほど「普通さ」を感じさせます。たとえば「ハリアー」のように、横一文字のランプを高い位置に置くような流行の手法にしなかったのは、もしかしたらカローラファミリーとしての安心感を意図したのかもしれません。
ただ、ここでもバンパー両端に微妙な「く」の字のラインが引かれているのに気付きます。とくにサイド面との境界として必須とは思えません。少なくとも、スタイリング自体に関係のないラインは、あえて引かなくてもいいのではないでしょうか?
●ニーズに応えたデザイン
新興国で発表したモデルを日本市場で発売するのは日産の「キックス」と同じですが、カローラクロスはフロントなどエクステリアに明快な差別化を行い、さらに日本国内で生産するという念の入れようで、ヒットモデルに育て上げる策をしっかり講じています。
一方、エクステリアデザインについては、極めてオーソドックスなSUVボディに、分かりやすい特徴を「盛った」スタイリングに思えます。それが美しいか否かはともかく、少なくとも多くのユーザーへのアピールになるのは間違いありません。
そういう意味で、トヨタは「RAV4」と「C-HR」の間を埋めるSUVを設けることに、デザインの面でも見事に成功していると言えそうです。
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