公道を使った国内唯一のヒルクライムシリーズに実力派の若者が続々参戦!

■若者たちの下克上が始まる?

●非常事態宣言も解除! ひと月遅れの開催で盛り上がった『御岳高原ヒルクライム』

日本で唯一の公道を使用した「BRIGヒルクライムチャレンジシリーズ」の第6戦『御岳高原ヒルクライム』が、2021年10月2日(土)~3日(日)長野県と岐阜県の県境にある御嶽山周辺で行われました。

緊急事態宣言が延長されたことにより、開催地域への配慮をして当初の予定を延期していましたが、この宣言開けのタイミングで、予定よりも約ひと月遅れての開催となりました。

御嶽山
この2日間は好天に恵まれ、残念ながらまだ黄葉には早かったが、御嶽山はまだ冠雪もなく、途中で御嶽山がドライバーの視界に入る箇所もあって、爽快なヒルクライム日和となった

このシリーズは、林道などの公道を封鎖して、その区間のタイムアタックをして順位を競う、日本で唯一のヒルクライム競技です。設定されたコースを1台ずつタイムアタックし、その2本の走行タイムを合算した結果で競い合うタイムトライアルです。

今回のコースは、このシリーズではおなじみとなっている長野県木曽郡木曽町にある町道寒原倉越線(倉越パノラマライン)の約4kmのコースとなります。今回はコースのスタートおよびゴール地点を変更し、コースの前半がつづら折りの急こう配、後半は一部下りもある比較的高速のセクションとなりました。

このパノラマラインでは一部に2019年の台風21号被害による路肩の崩落などの復旧工事がまだ終了していない箇所もありますが、それでもこの周辺の設定コースの中では唯一競技ができる林道となっているようです。

BRIGヒルクライムチャレンジ第6戦パドック
「BRIGヒルクライムシリーズ」は日本で唯一、一般公道を占有して開催しているヒルクライム競技で、毎回全国各地から数十台ものバラエティに富んだマシンがやってくる

非常事態宣言によって、開催時期が変更となったわけですが、この第6戦の直前に宣言が解除され、秋の行楽シーズンとかぶったこともあり、観光客も多い御嶽山周辺であるため、各参加車両は占有道路上をピットとし、これまで使用していたイベントパドックも、地元路線バスの転回のためのスペースを確保。

さらに占有道路に誤って観光客が入り込まないように誘導する等の他、日程を2日に分けることで一日当たりの参加台数の制限を行ったうえで、参加車両の移動時間を生活時間帯内にするべくタイムスケジュールも調整し、参加者の早朝や夜間の移動をなくすという配慮を行ったうえでの開催となりました。

こういった公道イベントでの地元への理解の重要性を各参加者にも訴える形での開催でした。

BRIGヒルクライムチャレンジrd6 Dクラス
Dクラス優勝は篠原高広選手(#2 PROFIT-SPORTS タツキAE86/06:07.5/総合31位)

そのため、このヒルクライムシリーズでは、車両区分により10クラスが用意されています。排気量によってABCに車両を分け、それぞれにノービスとオープンのドライビングスキルに分けています。また旧車のヒストリッククラスに新規格の軽自動車の車両区分があり、このイベントでの最高峰クラスとなる車両区分なしのエクストリームクラスが用意されています。

BRIGヒルクライムチャレンジrd6 DLクラス
DLクラス優勝は志賀良彦選手(#6 BRIG エラン/05:58.0/総合20位)

今回もルーキー参戦が8名もいましたが、サーキットレースとは違う魅力を感じて、興味をもって参戦を開始するという参加者も増えているようです。参戦者の年齢層は非常に幅広く、10代からウン十代まで実に幅広いのが特徴です。

もちろん、このシリーズを主催するK’s Racing Teamにもラリー志望だったり、このヒルクライムなどのモータースポーツイベントに参戦したいという学生や社会に出たばかりの若者が集まってきており、今回もそんなメンバーが裏方も含め陰日向で関わっています。

ファビアR5
全日本ラリー選手権で現在ポイントリーダーの福永修選手&齋田美早子は、今回もシュコダ・ファビアR5を持ち込んだ

10月2日(土)は、ノービスおよびレジェンドの5クラス、そして10月3日(日)は、軽自動車のKクラスと、オープンおよびエクストリームの全5クラスの走行が行われました。ちなみに両日ともに快晴の好天に恵まれました。

●プロをも破る驚異のタイムを記録!

2日には、もうこのイベントでは恒例ともなっていますが、全日本ラリー選手権に参戦し今季3勝を挙げている福永修・齊田美早子ペアによるデモンストレーションランも行われました。今回のこのデモランには、全日本ラリーでの本番車であるシュコダ・ファビアR5で走りを披露してくれました。

もちろんタイム計測も行われ、そのタイムは1本目が2分41秒2、そして2本目が2分40秒0ということで、トータル5分21秒2というタイムでした。

BRIGヒルクライムチャレンジrd6 Xクラス
福永修選手のR5車両を上回るタイムでXクラス優勝したのは津田洋輔選手(#84 KRT☆BRIG☆インプレッサ/05:19.8/総合1位)

もちろん、ノービスCクラスやオープンCクラス、そしてエクストリームクラスにとってもこの福永選手のタイムは気になるところです。が、なんとこのタイムを破った選手が出現しました。

それが先述の若者のひとり、今シーズンからこのXクラスに参戦する津田洋輔選手(#84 KRT☆BRIG☆インプレッサ)でした。走行1本目で福永選手の出したタイムを上回る2分39秒4のタイムを出し、2本目も2分40秒4のタイムで、合計でも5分19秒8と、福永選手のタイムを上回って総合1位を獲得することとなりました。

BRIGヒルクライムチャレンジ第6戦津田選手
昨年NCクラスでタイトルを獲得し、今季はXクラスに参戦している津田選手

津田選手は昨年からこのシリーズを追いかけ、NCクラスでタイトルを獲得しています。今シーズン参戦にあたり、このシリーズを主催しているK’s Racing Teamに転がっていたというGDBのボディを借りる形で、昨年まで自分が使用していた車両に積んでいたEJ20エンジンを移植して参戦しています。

エンジン自体はコンロッドを後期型にしたり、オーバーサイズのHKS鍛造ピストンを入れたりはしているものの、それほどハードなことをしているわけでもないということです。

ただ、このシャシーについては、もともとラリーで使用していた車両ということもあって、補強関係がしっかりしていて、「昨年自分が乗っていたクルマとは大違い」と言います。今回の御岳戦では、『きちんとタイヤが使えていない』とK‘sの鈴木代表から指摘されていた点に留意し「リアに仕事をさせるよう意識したことで、コーナリングスピードを上げられた」ということで、このタイムにつながったようです。

BRIGヒルクライムチャレンジrd6 Xクラスチャンピオン
シーズンフルエントリーのエクストリームクラスでは、残り1戦を待たずして、この御岳戦クラス2位に入った小林昭雄選手(#88 KRT BRIG ハヤブサランサー)がタイトルを確定

今シーズンの「BRIGヒルクライムチャレンジシリーズ」も残り1戦となりました。最終戦となる「おうたき2240ヒルクライム」は長野県木曽郡王滝村にある「おんたけ 2240 スキー場駐車場」をメイン会場とし11月6日(土)に開催され、翌7日(日)は同会場でALL JAPAN HILL CLIMB FESTIVAL in 王滝というフェスティバルの開催となります。

この最終戦は原則ルーキーのエントリーは許されず、フェスティバルはシリーズ上位の選手が招待される形のイベントとなります。この最終戦も若者たちの活躍からも目が離せないですね。

青山 義明

この記事の著者

青山 義明 近影

青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
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