コロナ禍のカーシェアリング、73%が知っているけど利用検討は6%、使う人の約80%が6時間未満の利用

■カーシェアリング利用状況を調査

クルマを複数の人で共同所有して、一定時間利用するサービスがカーシェアリング。従来の個人所有とは違う新しいクルマの所有方法として近年普及してきた印象ですが、一方で、コロナ禍により利用者が減少傾向であることもいわれています。

また、せっかく利用しようと思っても、空きがなくて断念したとか、そもそも自宅周辺にステーションがないという声も聞かれます。

では、実際に一般ユーザーのカーシェアリング利用状況はどうなのでしょうか?

コロナ禍のカーシェアリング
カーシェアリングの最新利用状況などを調査

リサーチ・コンサルティング企業のJ.D.パワー ジャパン(以下、J.D.パワー)では、2021年6月に「コロナ禍でのカーライフやクルマの意向」に関するアンケート調査を実施。

インターネットにより20〜69歳の計2800名を対象に行った調査内には、カーシェアリングに関連する項目もあり、その結果、知っている人は73%と多いけれど、利用検討する人はまだ6%程度であることなどが分かりました。

●カーシェアリングには2タイプある

カーシェアリングサービスには、「企業から車を借りるカーシェア」と「一般の個人から借りるカーシェア」の2種類があります。

特に日本では、カーシェアリング事業者がクルマを貸し出す「企業提供型カーシェアリングサービス」が主流で、2010年ごろから市場が本格化しました。

現在、大手3社の「タイムズカー」「オリックスカーシェア」「カレコ」を筆頭に、「カリテコ」「アースカー」などがサービスを展開しています。また、近年ではホンダが「ホンダ エブリゴー」を展開など自動車メーカーの参入も見られます。

対して、最近サービスが徐々に増えてきたのが「個人間カーシェアリング」。駐車場や車庫に駐車したままの時間が多い自家用車を有効活用したいオーナーと、自動車を必要とするドライバーをつなぐサービスです。現在は「Anyca」「CaFoRe」「GO2GO」などがサービスを展開しています。

●73%がカーシェアの存在を認識

調査では、まず「カーシェアリングサービスについて知っているか」を質問。結果は…。

「名前を見聞きしたことがある」40%
「サービス内容を何となくは知っている」25%
「サービス内容を詳しく知っている」8%
「知らない」27%

となりました。全体の7割以上(73%)がカーシェアの存在を少なからず認識していることになります。

コロナ禍のカーシェアリング
カーシェアリングの認知度(出展:J.D.パワー調べ)

また、これを世代別の認知率(「名前を見聞きしたことがある」「何となくは知っている」「詳しく知っている」の合計)で見てみると、

若年層(20〜34歳)68%
ミドル層(35〜44歳)72%
プレシニア層(45〜59歳)75%
シニア層(60〜69歳 )77%

となります。世代が上がるにつれ、よりカーシェアになじみがあることが分かりますね。

さらに、同じ認知率を、現在クルマを保有している層と保有していない層でも比較。

「クルマ保有層」76%
「クルマ非保有層」63%

となり、マイカーを持つ人のほうが、カーシェアに馴染みがあることが分かりました。

●利用できる場所を知っている人は29%

次に、調査では「自宅の周辺で、カーシェアリングサービスが利用できる場所を知っているか」も質問。

ちなみに、調査を行ったJ.D.パワーによると、カーシェアリング主要3社のステーション数は、東京都が最も多く約6700ヵ所、次いで大阪が約2700ヵ所、神奈川県が約1900ヵ所。この他の都道府県のステーション数はいずれもは1000ヵ所未満で、うちステーション数が10ヵ所にも満たない県が30ヵ所以上という状況だそうです。

そして、調査によると

「知っている」が3割弱(29%)

という結果に。

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自宅周辺でカーシェアリング利用できる場所の認知度(出展:J.D.パワー調べ)

カーシェアリングサービスの存在自体を知っている割合に比べて、実際に住んでいる近くで利用できるステーションを知っている人はまだ少ないという実態が確認できたといいます。

また、居住する地域別に「知っている」の回答割合を見ると、回答平均は以下の通りです。

「東京、神奈川、大阪」41%、
「千葉、埼玉、愛知、兵庫、福岡」31%
「それ以外の地域」20%
「全国平均」29%

ステーション数が多い東京、神奈川、大阪、次いでステーション数の多い5県(千葉、埼玉、愛知、兵庫、福岡)、それ以外の地域と、ステーションの数に応じて「知っている」割合にも地域差があることが分かります。

●まだまだ浸透度は低い

調査では、「車の保有や利用の仕方について今後検討するもの」についても聞いています。結果は次の通りです。

「新車の購入」51%
「中古車の購入」32%
「レンタカーの利用」15%
「カーシェアリングサービスの利用」6%
「カーリース利用でのクルマの保有」5%
「サブスクリプションサービス利用でのクルマの保有」4%
「個人間カーシェアリングサービスの利用」2%

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カーシェアリングの利用意向(出展:J.D.パワー調べ)

企業提供型のカーシェアリングサービスの利用を「検討する」と回答したのは全体の6%で、個人間カーシェアリングサービスの利用はさらに低い2%という結果に。

カーシェアは、全体の15%となったレンタカーの利用よりもまだまだ浸透していないことが伺えます。

ちなみに、カーシェアの利用検討意向を地域別に見ると、

「東京」13%
「神奈川」10%
「大阪」9%
「そのほかの地域」平均3%

という結果に。自宅周辺のステーションを「知っている」と回答した傾向と同様に、利用検討においても地域差があることが分かります。

●カーシェアは近所の買い物にも利用

今回調査を行ったJ.D.パワーでは、カーシェアリングの利用方法や利用者の特徴などについて別の調査も実施しています(2021年3月発表の「J.D. パワー 2021年カーシェアリングサービス満足度調査℠」)。半年以内に日本国内でカーシェアリングサービスを利用した人を対象にしたこの調査によると、次のことが分かっているそうです。

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カーシェアリングの利用理由(出展:J.D.パワー調べ)

まず、カーシェアリングサービスの利用理由トップ3。

「自宅近くにステーションがあったから」
「24時間いつでも借りたり返したりできるから」
「すぐに出発・返却できるから」

また、利用目的では「旅行」が最多だったものの、

「近隣での日常的な買い物」
「郊外や遠方での買い物」
「家族などの送迎」

といった、ちょっとした日常使いを利用目的に挙げる人も多いことが特徴だといいます。

ちなみに、利用時間は「1時間以上3時間未満」(46%)が最も多く、6時間未満の利用が約8割を占めていたそうです。

同社の「レンタカーサービス顧客満足度調査℠(2021年3月発表)」では、レンタカーの利用時間で6時間未満の割合はわずか12%。カーシェアリングの方が短時間で利用する人が多いことが分かります。

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カーシェアリングはレンタカーより短時間で利用する人も多い

なお、同社によると、カーシェアは短時間での日常使いが気軽にできるのが魅力の一つである一方、実際には利用者の6割以上が

「空車がみつからず、利用をあきらめた」
「利用したいステーションに空車がなく、違うステーションで探さなければいけなかった」

というようなストレスを経験しているそうです。

また、今後の期待としても「ステーションの増加・エリアの拡充」を挙げる傾向も高いことが分かっているといいいます。

●個人間カーシェアリングの認知度は?

話を今回の調査に戻すと、アンケートでは「個人間カーシェアリングサービス」についても「知っているか」を聞いています。

「名前を見聞きしたことがある」28%
「サービス内容を何となくは知っている」14%
「サービス内容を詳しく知っている」4%
「知らない」54%

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個人間カーシェアリングの認知度(出展:J.D.パワー調べ)

上記の結果を見る限り、企業が提供するカーシェアリングサービスを知らないと回答した割合(27%)と比べても、サービスがまだ一般に浸透していないことがうかがえます。

また、今後の個人間カーシェアの利用検討については、「検討すると思う」がわずか2%という結果だったそうです。

J.D.パワーでは、この結果について以下のように分析しています。

「個人間のカーシェアリングサービスは、企業ではあまり提供していないような珍しい車種や高級車、輸入車なども多く、日常の移動手段としてのカーシェアリングサービスとは異なり、クルマ好きの層を中心に人気が出てきているようです。

しかし、盗難や詐欺といった悪質なトラブルも発生しており、フォロー体制が気になるところです。

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個人間カーシェアリングはまだ認知度が低い

たしかに、最近、ニュースなどで個人間カーシェアリングサービスを介し、所有者のクルマを勝手に売却するといった詐欺事件なども報道されています。

同社も今後の普及には「サービスやシステムの整備や不安の解消も重要なカギ」と言及しています。

●ステーション数は減少傾向

今回の調査によると、カーシェアリングは、まだまだ一般的とはいえない状況のようです。

ちなみに、カーシェアの情報比較サイト「カーシェアリング比較360°」が独自に集計したデータによると、今まで右肩上がりだった市場は、コロナ禍の影響がでた2020年は2019年比で微増。ステーション数が前年比2.1%増加、車両台数が0.2%増加と、前年度の伸長率を大幅に下回ったといいます。

また、2021年第二四半期における主要6社(タイムズカー、カレコ、オリックスカーシェア、カリテコ、ホンダエブリゴー、earthcar)の合計ステーション数は1万7813ヵ所、車両台数は3万6025台。

2021年3月末に比べ、車両台数は3.3%増加したものの、ステーション数は1.0%減少しているそうです。

コロナ禍のカーシェアリング
特に都市部ではクルマを所有する人の減少もあり、カーシェアリングは注目されている

同サイトでは、「コロナ渦の影響もあって今期もステーション数は減少傾向となっているが、車両台数はタイムズカーの大幅増加も影響して増加傾向に転じている」と分析。

また、個人間カーシェアについても、Anyca(エニカ)が「個人間カーシェア専用保険」を開発するなど、安心安全の取り組みを行っていることも最近のトピックスだといいます。

いずれにしろ、カーシェアリングは、まだまだ新しいビジネスだけに、システムやニーズなどもこれから大きく変わっていくことでしょう。

特に、都市部では駐車場の問題などでマイカーを所有しない人も増えているといわれるだけに、新しいクルマの所有方法として今後どうなっていくのか気になるところです。

(文:平塚 直樹 *写真はイメージです)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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