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■操作の遅れや踏み間違いの原因になる
近年、運転中のペダル踏み間違いなどの誤作動による事故が注目されています。よく高齢者の事故はニュースなどで大きく取り上げられることも多いのですが、あまり知られていないのが年齢とは関係ない「履き物」が原因の事故。
サンダルやハイヒールなどは、操作が遅れたり、踏み間違いの原因になる可能性があり、「運転に適さない履き物」とされていますが、それはなぜでしょうか?
これについて、ロードサービスを手掛けるJAFが、「履物の違いによる運転の危険性」と題した実験を実施。その結果を公表したので紹介しましょう。
●坂道や急制動など8つの場面を想定
今回の実験は、さまざまな履物を着用したモニタードライバーにテストコースを走行してもらい、運転操作にどのような影響があるのかを検証したものです。なぜその履物がクルマの運転に適さないのかを明らかにすることが目的です。
実験は、以下のモニターと履き物で行われました。
20代男性:つま先が尖った革靴、ビーチサンダル、スニーカー
40代男性:革靴、木製サンダル、スニーカー
30代女性:ミュール、厚底ブーツ、スニーカー
40代女性:サンダル、ハイヒール、スニーカー
また、実験が行われたテストコースには、細かい運転操作が想定される以下8つの交通場面を設置。
1,坂道&踏切
2,急制動
3,車庫入れ
4,クランク
5,波状路
6,急制動
7,駐車
8,コース移動時の巡航
4人のモニターにはひとつの履物に対してコースを1周走行してもらい、それぞれの履物について、アクセルの踏み方やブレーキを踏む力、足の動きを計測器やカメラで確認し、運転操作への影響を検証しています。
●サンダルは運転中に脱げやすい
実験の結果分かったのは、まず、ビーチサンダルや木製サンダルでは、ペダル踏みかえの際に脱げやすくなったり、引っかかったりする場面が見られたことです。
また、ビーチサンダルでは、底が柔らかいため、ブレーキペダルを踏んだときの感覚が分かりづらく、正確な操作ができない場面もありました。
厚底ブーツやハイヒールの場合は、かかとが高い分だけつま先だけの操作になりがちでした。そのため、微調整がしづらく、想定外に急加速・急発進した様子もありました。
さらに、つま先が尖った靴では、ブレーキペダルを踏む際につま先が曲がり、急制動などで強くブレーキをかけられない場面も見受けられています。
以上により、これらの履き物では、「とっさに操作しなければいけない時に対応できない可能性がある」ということが分かったのです。
一方、スニーカーではペダルを滑らかに操作でき、急ブレーキの際でも強い力で踏み込むことができたといいます。
実験を行ったJAFでは、今回の実験結果について、以下のようにコメントしています。
「シーズンやファッション、シチュエーションに合わせて選ばれる履き物。近所に行くだけだから…、履き替えるのが面倒だから…と、ついつい思ってしまいがちですが、適切な履き物での運転は自身の安全運転のためだけでなく周りの歩行者などへの安全にもつながります。運転に慣れてきた時にこそ、見直してほしい大切なポイントです」。
●交通違反で捕まることもある
ちなみに、サンダルやハイヒールを履いて運転すると、交通違反とみなされて捕まる場合があります。
といっても、道路交通法に「サンダルやハイヒールを履いて運転してはだめ」と書いてあるわけではありません。ただし、第70条の「安全運転の義務」に違反する可能性があります。
道路交通法第70条では、以下のように定めています。
「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキそのほかの装置を確実に操作し、かつ、道路、交通および当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」
つまり、たとえばサンダル履きで運転すると、サンダルが脱げ掛かったことによりブレーキを「確実に操作」できない危険があり、安全運転義務違反と判断される可能性があるということです。
道路交通法では、さらに、第71条で「車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない」とし、6号で「道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、そのほか交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」としています。
これは、各都道府県の公安委員会が定める細則のことで、実際に都道府県によってはサンダルなどを履いて運転することを禁じています。
たとえば、東京都の場合、東京都道路交通規則の第8条(2)にこんな規定があります。
「木製サンダル、げた等運転操作に支障を及ぼすおそれのあるはき物をはいて車両等(軽車両を除く。)を運転しないこと。」
また、たとえば静岡県警では、公式ウェブサイトなどで「脱げやすいサンダルやハイヒール等を履いて車両を運転した場合は運転操作を妨げる危険性があり、交通違反となります」と明記。
ほかにも、多くの都道府県の公安委員会で「運転に適さない履き物」での運転を禁止しています。
ちなみに、前述した道路交通法第70条の安全運転義務違反で捕まると、
・違反点数は2点
・反則金は普通車で9000円、2輪車は7000円、原付は6000円
となります。
また、各都道府県が定める細則に違反した場合は、違反点数はありませんが、
・反則金は普通車・2輪車共に6000円、原付は5000円
となります。
なお、今回JAFが実施した実験の模様は、JAFのYouTube公式チャンネル(以下のリンク)で見ることができますので、興味がある人は一度見てみて下さい。
(文:平塚直樹)
【関連リンク】
JAF YouTube公式チャンネル
「運転に適した靴、履いていますか?〜履物の違いによる運転の危険性【JAFユーザーテスト】」