■インテリアからデザインされた斬新な内外装
ドイツ・ミュンヘンで2021年9月7日に開幕した「IAA MOBILITY 2021」では、アウディがEVのコンセプトカー「Audi grandsphere concept」を披露します。そのテクノロジーとデザインは数年後のアウディ・モデルに搭載されるとしていて、自動運転の「レベル4」モードが採用されています。
「Audi grandsphere concept」のコンセプトは、クルマを「体験型デバイス」に昇華させることだそう。たとえば、景色のいい道を走行するルートガイダンス、レストランやホテルに関するサービスなどが一例で、自動運転機能により乗員の現在地情報を取得して、乗員のいる場所まで迎えに行ったり、駐車や充電を無人で行ったりすることができるようになると想定されています。
さらに、自宅などで楽しんでいる音楽や動画配信サービスと、車載ストリーミングサービスをリンクさせるなど、カスタマイズされたインフォテインメントのオプションも利用できます。
さらに、コンサートや文化イベント、スポーツイベントなどの専用オプションを提供することも将来的に視野に入れているそうです。つまり、単にA地点からB地点に移動するだけでなく、クルマの従来の目的を超えた乗車体験を生み出すことを目指して開発されています。
未来感あふれるデザインも同コンセプトカーの特徴。アウディでは、乗員がくつろぐキャビンを「sphere(スフィア=球)」と呼び、デザインの中心的要素としてインテリアを据えています。
この新世代コンセプトカーでは、ハイライトとなる要素は、駆動システムやハンドリングではなく、発想の起点はインテリアになっています。開発の初期段階で、焦点はインテリアとデザインに向けられることが確認されました。その後、車両の技術的なスペックに基づきクルマを総合的な芸術作品へと変えるパッケージングやエクステリア、プロポーションを決定したそうです。
ドアはピラーレスの観音開きが採用され、経路識別機能により乗員を事前に認識し、ドアを開き、パーソナライズされたディスプレイとアンビエントライトによって乗員を迎えます。さらに、ドライバーと乗員の位置を自動的に検出し、空調コントロールの設定やシート位置などの快適機能を各乗員に合わせて調整。同時に、インフォテインメントシステムは、乗客が最近使用したサービスにアクセスし、シームレスにそのサービスを再開します。
2座のフロントセパレートシートを最後尾までスライドさせると、インテリアの広々感がより強調されます。なお、「Audi grandsphere」は、「2+2」シートで、2名用の後席には、側面を回るアームレストが一体化されています。
特等席になるフロントシートは、ファーストクラスの快適性とスペースを念頭にデザインされています。シートバックを40度傾けると、乗員はリラックスした姿勢でインフォテインメントシステムを楽しむことができます。さらに、シートバックを60度傾けると、完全な休憩ポジションになり、ヘッドレストは、前方に15度傾けることができます。手動による走行モードでは、シートを起こしてクルマを自由自在に操ることが可能になるそうです。
ボディサイズは、全長5.35m、全幅2m、全高1.39m、ホイールベース3.19mという堂々たる大きさ。このロングホイールベースは、現行アウディA8のロングホイールベースバージョンを上回ります。しかも、風洞実験室からそのまま出てきたようなラインを描くタイトな4ドアGTのようなスタンスで、無駄な装飾は省かれています。
また、伝統的なGTカーの特徴である長いフロントフードも印象的。ボンネットに端を発する第2の水平ラインは、サイドウィンドウ下側を通過し、キャビン全周を貫いています。第2のラインによって、水平基調のショルダー部と、ロッカーパネルに挟まれた凸状の鉛直部分に分割されています。
ホイールアーチには、典型的なアウディデザインであるソフトで印象的な形状を採用。さらに。巨大なCピラー後方のスレンダーなリヤセクションは、伝統的な流線形をモチーフにしています。ルーフラインは、Audi Sportbackを連想させる力強いアーチを描き出しています。
足元の23インチホイールは、1990年代のアイコンモデル「Audi Avus」からヒントを得たそう。この6ダブルスポークデザインは、軽量構造と安定性の象徴で、機能重視のモータースポーツ用ホイールやブランドデザインに見て取れるバウハウスの伝統からインスピレーションを得ているようです。
EVである「Audi grandsphere concept」は、800Vの充電テクノロジーが搭載され、急速充電ステーションを使えば最大270kWの出力で、たとえば、300km以上の走行に必要な充電量は、わずか10分で完了します。
さらに、容量120kWhバッテリーの充電レベルが5%まで低下した際でも、25分未満でバッテリー充電レベルを80%まで回復させることが可能。また航続距離は、選択した駆動方式と最高出力により異なるものの、750kmを超えるため、長距離走行にも対応します。モーターは発進直後から大トルクを発揮し、0-100km/h加速は、わずか4.0秒強でクリアします。
(塚田 勝弘)