軽乗用車の半数以上はスライドドアの時代。ホンダや日産・三菱はどう動く?【週刊クルマのミライ】

■ダイハツ・ムーヴキャンバスの独占市場にスズキがワゴンRスマイルで切り込む。軽乗用車のスライドドア比率はますます高まる

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ワゴンRの派生モデルとして誕生した「スマイル」。メーカー希望小売価格は1,296,900~1,716,000円

スズキから久しぶりに、まったく新しい軽乗用車の登場です。

2021年9月10日に発売となる「ワゴンRスマイル」は、スズキによると『高いデザイン性とスライドドアの使い勝手を融合させた、新しい軽ワゴン』をコンセプトとしたニューモデルです。

ワゴンRの名前はついているので、派生モデルのように思えてしまいますが、フロントマスクはまったく違いますし、Aピラーはパラレルタイプとなっていてむしろスーパーハイトワゴンのスペーシアに近い印象です。

コンセプトにもあるように、最大の特徴はリヤがパワースライドドアになっていることです。これによって、ワゴンRシリーズとしては初のスライドドア車となりました。

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月販目標は5000台。最大のライバルであるムーヴキャンバスに対しては、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)の設定があることが大きな優位性となる

ワゴンRスマイルの全高は1695mmとスーパーハイトワゴン・カテゴリーには届きませんが、ワゴンRの1650mmよりは高くなっています。これにより室内高の余裕も増しているというのがワゴンRスマイルの特徴です。

スライドドアの開口幅は600mmと十分に広く、リヤステップ高は345mmとかなり低めになっているため乗降性についても、かなり期待できそうです。このあたり、最大のライバルというか、ハイトワゴン+スライドドアというパッケージの先達であるダイハツ・ムーヴキャンバスを研究しつくしたという印象を受けます。

さらにライバルへの優位性として、ワゴンRスマイルの上級グレードにはマイルドハイブリッドのパワートレインが備わり、オプションで全車速追従型クルーズコントロールを用意しています。

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ワゴンRスマイルの発表会で示された資料によると軽乗用車での後席スライドドア比率は52.3%を超えている

ムーヴキャンバスが登場したのは2016年9月でした。キャンバスの登場によりムーヴの販売台数が伸びたというのは、誰もが認めるところで、スズキがムーヴキャンバスのライバルとして、ワゴンRスマイルを登場させるまで5年を要したのは遅すぎる感もあります。

しかし、スズキはタイミングを見計らっていたようです。ワゴンRスマイルの発表会において市場背景を説明したスライドによると、軽乗用車におけるスライドドア車の比率は2016年度の段階ではまだ半数に満たなかったといいます。それが2020年度には52.3%と半数を超えています。いまや軽乗用車においてスライドドアは多数派になっているのです。

ムーヴキャンバスのデビューしたときの話を思い出せば、そのターゲットはミニバン世代・スライドドア世代という説明がありました。子供の頃からスライドドア車が当たり前のものとして育ってきた世代にとっては、パーソナルユースで使う軽乗用車であっても後席スライドドアであることが自然な選択になるというのです。

まさに、そうしたスライドドア世代が多数派の時代がやって来たといえます。

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写真は発表会で鈴木俊宏社長がスライドドアを開けてみたところ

思えば、かつてはスーパーハイトワゴンも後席はヒンジドアでしたが、いつの間にか車両価格が高くなってしまうスライドドアが主流になりました。今回、スズキがワゴンRスマイルを出してきたということで、ハイトワゴン・カテゴリーにおいてもスライドドアがスタンダードになる時代が着々と近づいていることを感じます。

はたして、日産デイズ、三菱eKワゴン、ホンダ・N-WGNといったハイトワゴンのモデルは、この流れに追従するのでしょうか。各社にはそれぞれフィロソフィーや言い分があるとは思いますが、市場が後席スライドドアを求めるのであれば、それに抗うことはできないはずです。

ワゴンRスマイルの登場は、軽乗用車ハイトワゴン・カテゴリーにおいてもスライドドアが当たり前となり、スライドドア世代の趣向が重視される未来を予感させるものといえそうです。

(自動車コラムニスト・山本 晋也